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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
二章 進出、人類領域
29/55

二人のお茶(?)会

今回、一気に説明をぶち込みました。長いし複雑でしょうが、どうかお付き合い下さいm(_ _)m

「で?なんでいるんだグラン」


「転移して来た♪」


場所は先程とは変わり無限廻廊の入り口付近。

本物(・・)の魔王エビル・グランツェと俺はテーブル(近くにあった岩を雑に削った物)を挟み、隔絶の森産の果実を使ったジュースを飲みながら座っていた。


「いや、そう言う事じゃなくてだな……」


「アハハハッ!細かい事は気にしないの!それよりほら、このジュース美味しいよ!」


「それ俺のだから!」


グランに先程のような敵意は無いようなのでこうして話しているわけだが……改めてこいつが最強の魔王と呼ばれていると言う事を分からさせられる。


こいつは本当の化け物だ。


こうして目の前にいるだけでグランの恐るべき力がひしひしと伝わって来る。


「アハハハッ!そんな警戒しないでって。僕はもう満足しているんだから!」


「ならもう帰れよ……俺はトウテツ討伐してからのあんたの分身体との戦闘で疲れてんだ……」


「まぁまぁ、いいじゃないか。そうだ!僕の分身体に勝ったご褒美に何か知りたい事あったら教えてあげるよ!こう見えて僕長生きしてるからさ!」


「なに?本当か?」


グランの提案に俺は思わずテーブルを乗り出してしまう。


「アハハハッ!食い付いたね。まぁ僕も知りたい事あるしここは取り引きしないかい?」


「なんだよ、ご褒美に教えてくれるんじゃなかったのか?」


「安心してきちんと約束は守るよ。だからこうしよう!ご褒美の情報は勿論タダ。それに加えて僕の質問に1つ答えてくれれば君の質問に3つ答えてあげるよ。どうかな?悪くない話でしょ?」


「ふむ……」


この提案に乗ればグランに俺の能力がバレる恐れがある……だが仮に俺の能力がバレて無いとしても俺とグランが戦えば間違い無く俺が瞬殺されてしまうだろう……それなら一つの情報でこちらの質問に3つ答えて貰える方が良いな……よし。


グランの提案に俺は頭の中で損得を計算して結論を出す。


「分かった。それでいい」


俺の答えにグランはニコッと笑って頷いた。こうして見ると目の前の化け物が最強の魔王だとは思えない。だがこれも奴の恐ろしさの一つだろう。

無害そうな見た目で大瀑布の如き強さを持つ。なんとも恐ろしい奴だ。


「じゃあ先ずはご褒美の情報一つだよ。ガドウ、好きな事聞いていいよ」


グランの言葉に俺はどうしても知りたかった事を質問した。そう即ち……


「魔王ヴェへムートについての全てだ」


「へぇ……どうやら君はヴェへムート君とは浅からぬ因縁があるようだね」


「それは質問と取って良いのか?」


グランがふざけた態度でそう言って来るのを、ギロリと睨み付け無言で「それ以上聞くな」と訴えた。


「おっとごめんよ。だからそんな睨み付け無いでくれ。ちゃんと質問に答えるからさ♪」


「そうしてくれ……」


俺はフッと息を吐き、手元にあった果実水を一気に煽り、グランの言葉を待つ。


「んー、そうだなぁ……ヴェへムート君は一言で言うと小物だね。何時も何かを企んでいるようで正直嫌い。

確か彼は魔界……あ、魔界って人間が言う魔族領の呼称ね。魔界の東部の中心地辺りに城を構えているよ」


なるほど、ヴェヘムートの奴は魔界東部の中心地にいるのか……俺の住んでた「魔の平原」がヴェヘムートの領地の最南端だから……ふむ、大体の場所は分かった。

俺は脳内にギルドの資料室で確認した魔族領の大雑把な地図を浮かべ、ヴェヘムートの城がある辺りに検討を付けた。


「続きを言うよ?」


「ん?ああ悪い……」


思考の海に沈みかけていた俺にグランの声が掛かる。それによって沈みかけていた思考から復帰した俺は慌てて続きを促す。


「アハハハッ!いいよ別に♪

じゃあ続きね。えーと……ああ、ヴェヘムート君の城を教えたところか!それで魔界東部の中心地に城を構えているヴェヘムート君だけど、彼の部下はそんなに強いのはいなかったはず。今の君なら一対複数でも問題無く倒せるレベルだよ。正確な数は分から無いけど魔人となってる者は100人もいなかったと思うよ。他にも何か色々といるらしいけど流石の僕もそこら辺は知らないなー。ごめんね♪」


ふむ、と言う事は問題はヴェヘムート自身だな……どの程度の実力なのかは検討が付かないけど、もう一度進化すれば届くか?


「あ、因みにヴェヘムート君自身も大して強くないよ。精々僕の分身体三体分くらいかな。多分今のガドウでも頑張れば勝てると思うよ」


グランが俺の心を見透かしたように言葉を紡ぐ。


「なんだと?その程度の強さで魔王が務まるのか?」


いや、勿論グランの分身体三体分とか街一つ簡単滅ぼせるレベルなのだが、それで魔王が務まるのかと言うと微妙だ。

かつて父さんが言っていた。「魔王とは最強の称号。決して簡単になれるものでは無い」と。

そんな最強の存在をその程度の実力のヴェヘムートに務まるとは思えない。


「うん。彼はその分頭が良いからね。頭が良いと言う事は戦略が上手いと言う事。だから魔王として君臨していられるんだ。……でも何か彼には違和感があるんだよね」


「違和感?」


「うん。だって普通魔王クラスになるには何十年、何百年と掛けて何度も進化を重ねる必要があるんだけど、彼にはその積み重ねが感じられ無いんだ。

そうだなぁ……例えるなら魔人となったと同時に魔王へとなった感じ?」


「ふむ……」


グランの例えが正しいとすると確かに妙だ。普通魔人となる事で高い知能を持つ。その知能で色々と学び知識を高め、更に進化を重ねる事で強さも手に入れる。まさに俺がその典型的な存在だ。でもグランの例えで考えるとヴェヘムートは魔人となり高い知能を得ただけ(・・)で魔王となったと言う事だ。普通に考えて有り得ない。


何処でそこまでの知識を手に入れた?何処でそこまでの強さを手に入れた?


もしそれが正しいならばこう言った疑問が出て来る。


「魔王ヴェヘムート……貴様は一体何者なんだ……」


「僕は基本的に他の魔王について調べたりしないから詳しい事はよく分から無いけど、もしいつかヴェヘムート君と戦うんなら注意した方が良いよ。彼は僕でも分から無い何かを持っているからね。まぁガドウならその辺は僕よりずっと慎重そうだから大丈夫だと思うけどね♪」


グランはそう言って自分の手元の果実水に口を付ける。


「とまぁ僕が知ってる魔王ヴェヘムートの情報はこの位かな。あ、後彼の性別は男だよ。

にしてもこのジュース本当に美味しい!ガドウ、お代わりちょうだい!」



「はいはい……」


俺は苦笑しながらマジックポーチから新たな果実を取り出して、それぞれのコップの中に向けて絞った。

半透明な液体がトクトクとコップに注がれて行き、辺りに甘い香りが広がる。


「わぁ、美味しそう!ねぇねぇガドウ、それなんて言う果実なの?」


「おいおい、それは質問か?なら教える代わりに3つの質問させて貰うぞ?」


「ちょ、それはズルいよ!ならその果実の事は聞かないよ!」


少しからかってやると、グランは見た目相応な調子で面白い反応をしてくれる。だから俺もついからかってしまう。

……まぁ本気でキレたら手が付けられないしこの程度にしておくか。


「冗談だ。ほらあんたも聞きたい事があるんだろ?こっちもまだ聞きたい事あるし、きちんと答えるぞ」


「むぅ……ガドウって意外と意地悪なんだね。まぁいいや、じゃあ質問するよ」


グランが膨れっ面を作ってこちらを責めるような視線で見て来るのに苦笑しつつ、グランの質問を待つ。

……まぁ大体の見当は付くけどな。


「実は僕の作り出した分身体の得た情報は僕本人に伝わるんだ。

さっきの戦いで僕の分身体が《ザ・ギャラクシー》を使った時にガドウはそれを無効化させたでしょ?あれってどんな能力を使ったの?」


やっぱりな。予想通りの質問だ。


「あれは『守護之天使(アルマロス)』って言うスキルだ。能力はありとあらゆる魔法を無効化させる事。このスキルは獲得したばっかりだからまだ詳しく分かっていないから教えられる事はこの程度だな。これ以上は俺も知らん」


「……なんだって?」


俺の答えにグランは少し驚いた表情を作り、その直後に真剣な表情になった。


「だから天使スキル『守護之天使(アルマロス)』って言うスキルだ」


その真剣な面持ちに思わず一瞬怯んでしまったが、グランから感じるのは殺気では無く、はぐらかすのは許さないと言う本気の気配だったため、俺もそれに応えるべく凛とした様相で再び同じ答えを答えた。


「天使スキル……まさかもうそこまで踏み込んでいるとはね……」


真剣な様子で呟くグランに訝し気な視線を送ると、それに気付いたグランは意味深な笑みを浮かべ、次の瞬間には堰を切ったように笑い出した。


「クッ、ククっ、アハハハハッ、アーハッハッハッハッハ!!凄い!凄いよガドウ!その若さでもう天使(エンジェル)スキルを獲得するなんて!僕でさえ獲得には数百年を要したのに!やっぱり君は最高だね!」


「お、おう?」


グランはそう言いながら笑い続け、結局きちんと話せる程度まで落ち着くのに数分を要した。



「さて、そろそろいいか?」


「あ、うん。ごめんね。僕とした事が、君の余りの成長の速さについ、楽しくなっちゃって」


グランは目に涙を浮かべながらよろよろと椅子に座り直した。その様子に俺はようやく話を続けられると溜め息を吐き、二杯目の果実水に僅かに口を付けて唇を潤し、次の質問へと移る事にした。


「じゃあ約束通り3つ程質問に答えて貰おうか」


「どうぞどうぞ〜♪」


グランは果実水を美味しそうに飲みながら、満面の笑みで俺の質問を待っている。この調子じゃまた直ぐにお代わりを要求して来るだろうな。


「じゃあ先ず1つ目だ。グラン、どうやらあんたは天使(エンジェル)スキルについて詳しく知っているようだが、この天使スキルとは一体なんなんだ?」


「まぁそうだよね。ガドウってまだ生まれてから数年くらいしか経ってなさそうだからそれらについて知らなくて当たり前だよね。

んー……一から説明すると凄く複雑で面倒だからざっくりと掻い摘んで説明するね」


グランは俺の質問に予想通りだよと言わんばかりの表情で果実水を啜りながら答える。


「天使スキルって言うのはその名の通り天使の名を冠したスキルの事を指すんだけど、それらは総じて強力な能力でね、ガドウの「守護之天使(アルマロス)」の様に魔法を無効化すると言う単純にして強力な物だったり、僕の持つ「書キ記ス大天使(メタトロン)」のような特殊な能力を持つ物だったり色々あるんだ。あ、僕の「書キ記ス大天使(メタトロン)」の能力は秘密だよ♪」


グランはそう言ってウィンクを飛ばして来る。

だがしかしグランは「書キ記ス大天使(メタトロン)」と言う天使スキルを持っているのか……これを明かしたと言う事は俺を信用しているのからはたまた能力を知られても負ける気はしないと言う自信からなのか……恐らく後者だろうな。


「ふむふむ……」


天使(エンジェル)スキルには対となる悪魔(デビル)スキルと言うのがあって、天使スキルに対抗する唯一の手段が悪魔スキルなんだ。またその逆も然りだよ。

ま、悪魔スキルの獲得は天使スキルの獲得とは全く違うからその二つを同時に持っている者は早々いないだろうね。僕でも悪魔スキルと天使スキルはそんなに持って無いし。だから生まれて数年程度のガドウが既に天使スキルを発現させてるのには驚いたよ」


そう言ってケラケラ笑うグランとは対照的に、俺は内心ビクビクしていた。


(天使スキルの質問で悪魔スキルの事に触れられたのは僥倖だったが、まさか天使スキルと悪魔スキルがそんな珍しい能力だったとはな……。

俺、悪魔スキル2つ持っているんだがどうなんだ?やっぱり相当珍しいのか?……とにかくバレてる天使スキルは仕方ないとして、悪魔スキルの存在は秘匿しておくかな……)


馬鹿みたいに格上の相手に態々自分の手札を余計に教える必要なんて無いしな。


「ふむ、ならそれより上のスキルだったらどうなるんだ?例えば伝説(レジェンド)スキルとか」


「じゃあそれが2個目の質問として取るって良いかな?」


「む……仕方ないな」


あわよくばと思ったがやっぱりグラン程の相手にそう簡単には行かないか。まぁ良い。天使スキルの話で悪魔スキルの事に触れられたし、これ以上望むのは欲張りだ。


「りょーかい♪

そうだなぁ……天使スキルや悪魔スキルより上のスキルとなると伝説(レジェンド)スキルや神級(ゴッズ)スキルだけど……それは神や神獣クラスじゃないと先ず使え無いと思うよ。一応僕も一つだけ神級スキルを持っているけど、僕でも一発放てばそれだけでほぼ全ての魔力を使う事になっちゃうから、余程の事が無いと使う機会が無いね」


やっぱりこいつも使えるのか……それも俺の伝説スキル「神化」より高位だと思われる神級スキルか……。


「伝説スキルや神級スキルは使えればそれだけで世界に戦争を仕掛けられるレベルの物だから、把握している中で僕以外でそのレベルのスキルを使えるのは同じ古株の魔王で元勇者のリュウヤ・ケンザキ君だけだね。彼は確か何かの伝説スキルを持っていたと思うよ」


俺も持ってます……なんて言え無いよな。そんな事したら間違い無く殺されるか部下にされるかとかされそうだ。


「まぁ僕も伝説スキルや神級スキルについてはそれ程詳しく知っているわけじゃないからこの程度の説明しか出来ないけど許してね」


「ああ、十分だ。じゃあ最後の質問だが……」


「あ、そう言えば伝説スキル以上の物には神々による封印が掛けられている物があるって話を聞いたな」


俺が最後の質問に移ろうとすると、それを遮るようにしてグランが思い出した!と言わんばかりに語った。


「封印だと?勿論それについては伝説スキルと神級スキルとやらの説明の付け足しだろうな?」


封印とかについては何か知ってるか?と言う質問をしようと考えていたのだが、グランが勝手に言い出してくれたので折角だからそれに便乗させて貰う。

否定は認めないぞ?と言わんばかりに視線を向けると、グランはあちゃーと言った様相で、頭に掌を乗せながら、渋々と答えてくれた。


「あー……余計に情報与えちゃったよ……まぁいっか♪

封印って言うのはさっきも言った通り神々によって能力に制限を受けている状態の事を表すんだ。

掛けられている封印はたった一人の神による物だったり、複数だったりと物によって違うけど、それらは総じて自身が成長すれば自ずと解かれて行くんだ。

僕も初めて神級スキルを獲得した時、能力を5〜6柱の神々によって封印されていたしね」


「ほぅ、それでその封印を解く方法ってのはあったりするのか?」


俺の精一杯の演技のつもりだったが、グランの視線は一瞬剣呑な物になったのは見逃さなかった。


(バレたか……?出来れば知られたくは無いんだが……)


「ガドウは伝説スキルに興味あるの?」


ほっ……どうやらバレてる訳ではなさそうだ。まぁグランの言葉通りに考えると伝説スキルは途轍もなく獲得が難しいようだし、それを生まれて数年のまだまだ子供の俺が発現させているとは考えられ無いだろう。


「ああ、まあな。俺は強くなりたい。その為の知識ならどんな物でも頂く所存だ」


「アハハハッ!素直だね!まぁ相当難しいけどガドウならいつかは発現させられるかもしれないね!その時の為に封印を解く方法を教えておいてあげる」


俺は内心の動揺を悟られていなかった事に安堵し、グランの次の言葉に耳を傾ける。


「封印には色々な種類があって、解除するには特殊な条件を満たす必要があるんだ」


「ふんふん、それで?」


「え?それだけだよ」


………はい?


「だからそれだけだよ。封印は色々な種類があって、それを施した神にしかその条件は分からないんだ。大抵の場合は最初に封印を解除した方法を何度も取って行けばどんどん解除されて行く筈だよ。まぁ神によっては解除の方法が別々に複数用意されていて、それを満たしていかないと解除出来ないと言う意地の悪い神もいるけどね♪」


それに則ると、俺の場合は強敵と命を賭けて戦う事か強敵を喰らう事となるが……。

それならもしかしたらグランの分身体と戦った事で僅かでも解かれているかもしれないな。後で確認して見るとするか。


「まぁイマイチ納得出来ないが、一応は理解した。じゃあ最後の質問な」


「はいはーい♪」


グランは変わらずのテンションで俺の言葉を待っている。と言うか何処からかお菓子のような物を取り出して食ってやがる。手元のコップに入ってた果実水ももう空だ。まったく、本当に自由な奴だ。


「最後の質問だ。グラン、あんた覚醒って知ってるか?俺の質問は覚醒とは何かと言う事なんだが……」


「覚醒?……んー、ごめんそれについては僕でも知らないな。一万年以上生きて来たけど、そんなの聞いた事すら無いよ」


「そうか……」


俺は最後の質問にと覚醒について聞いてみたが、どうやらグランは本当に知らないらしい。一万年以上の時を生きて、神々の事情にすら精通しているグランでさえ知らないと言う事は、恐らくこの世界に覚醒について知っている人物はいないだろう。仕方ない、これは俺が独自で何十年何百年とかけて調べるしか無いな。


「あ、でも……」


俺が落胆し、自分で調べる事を決意していると、唐突にグランが何かを思い出したように顔を上げた。


「ガドウの言う覚醒と言うのについては僕も知らない。だけど、遥か昔……それこそ僕がまだ魔王になっていないような頃に、原初の魔王の一人で、神へとなった人がいたんだ。その人は神になると同時に行方不明となったらしいんだけど、その時他の原初の魔王達に「我は、我が力を得るべき資格を持つ者が生まれるまで永き眠りに着く」と言って消えたらしいんだ。その後彼を見た者は誰もいないらしいよ。もしかしたらその力って言うのがガドウの言う覚醒なのかもしれないね。

まぁこれは一万年以上昔の話だし、僕も人伝に聞いただけだから信憑性は低いけど、そう言う話もあったって覚えておいても損は無いと思うよ♪」


グランにしても俺がそんな力を持つ存在では無いだろうと思っているのか、話す姿に真剣味が無いが、それは俺としても同意見だし思う事は無い。

だが一応そう言う話もあったと言う事だけは覚えておこう。


「これで約束は終わりだね。それじゃあ僕はそろそろ帰るね。もうそろそろ僕が勝手に城を抜け出している事に気付いた部下が探しに来る頃だろうし」


グランがそう言って立ち上がったまさにその直後。


「見付けましたよグラン様!また勝手に城を抜け出して!もう、心配したんですよ!」


「まぁまぁ、グラン様はこう言うお方じゃと言う事は分かっておるじゃろ?だからそう怒らんでやりなさい」


「まぁ確かに……でも一言声を掛けてさえ頂ければ私も怒りませんよ」


「カカカッ!そもそも俺たちがグラン様を拘束しておくなんて元から無理な話だろうが!だからせめていなくなったのに気付いたら直ぐに迎えに行くって気持ちだけ持っときゃいいんだよ!」


「同感同感〜♪シシルは少し真面目過ぎるんだよ〜。ウチみたいに楽〜に生きてる方が百倍賢いって♪」


いきなり強力な魔力の動きを感じ、そちらに視線をやると、そこには四人の男女がこちらを見下ろす位置で佇んでいた。


「あ、シシルにアルフレッド。それにフウガにアリアンネも。みんな揃ってどうしたの?」


俺がいきなり現れた男女四人に向けて咄嗟に竜神刀を構えると、同時にグランが間抜けな声で現れた男女四人の名を上げた。


「ん?なんだあんたの知り合いか」


グランの様子に彼等と知り合いなのだろうと判断し、竜神刀を下ろそうとすると、そこで漸く四人は俺に気付き、一瞬警戒心を顕にするも、グランに対して馴れ馴れしく話し掛けるのを見て、警戒から怒りへと気配を変えた。


「貴様……グラン様に向かってなんだその口の聞き方は!」


「ホッホッホッ……流石に見逃せませんぞ?」


「カカカッ!弱そうな奴だな!テメエみたいなひ弱そうなガキが俺らの主に軽々しく話し掛けんじゃねぇよ!」


「アンタが誰かは知らないけど、ウチらの主に対してその態度は許せないよ〜」



「あん?主だぁ?」


四人の怒りを感じた俺は下ろしかけていた武器を再び構え直し、何時でも対応出来るようにと臨戦態勢を整える。正に一触即発。


「まぁまぁ、喧嘩しないでよ五人共」


グランが何時もの調子で静止を掛けるが、俺以外の頭に血が上った四人にはその声が聞こえず、遂にフウガと呼ばれた男が行動に移った。


「死ねオラァ!」


残像が残る程の速度で俺へと突進して来るフウガ。だが俺は奴が動き出したと同時に超思考を発動させていた為、フウガの動きはしっかりと捉えていた。


「おいおい、お前らの主とやらの静止が聞こえ……おっと」


俺は竜神刀でフウガを弾き飛ばしながらそう言うが、言い終わる前にシシルと呼ばれた女が何か変な能力を放って来た。

俺はそれをグランの分身体と戦った時のように弾いて跳ね返す。


「きゃあ!」


跳ね返した変な能力はグランの時とは違い再び跳ね返される事無く、放ったシシル本人にぶつかり、炸裂音を立てる。


(ふむ、今のは混沌魔法に似てるな。だが弾き返せる分、本物の混沌魔法とは違うのか?)


「おいグラン、こいつら止めてくれよ」


「うん、分かってるんだけどさ……四人共話聞いてくれないんだよね。彼等は僕に心酔しているから僕の事になるとこのように静止が聞かないんだよ。悪いけど、ガドウ、ちょっと彼等の頭冷やしてあげてくれる?」


俺は再び突進して来たフウガをいなしながらグランへと助けを求めるが、グランははぁーっと溜め息を吐きながらそんな事を告げて来る。


「ああ!?あんた……ああもう言い辛い!お前でいいや!お前の部下だろ!お前が止めろや!」


「グラン様をお前呼ばわりとは、殺されても文句は言えんぞ!」


「ガキが生意気なんだよ!グラン様に土下座して許しを請いな!」


「ワシも今のお前発言で頭に来てしまったわい。老体を虐める悪い小僧には死んで貰おうかの」


「ウチも今のにはカチン来ちゃったね。この怒りアンタ晴らさせて貰うよボウヤ!」


「なんでグランの声は聞こえ無いのに俺の声は聞こえるんだよ!?」


「ごめんガドウ。彼等は僕の部下の中でも幹部に次ぐ実力者だけど、一人一人が素のガドウと同レベル程度の強さだと思うから頑張って対応して♪」


テヘペロ♪として来るグランに無償に腹が立つが、取り敢えず今はこの四人に話を聞いて貰う事が先決だ。



「はぁ……グラン、これは貸し一だからな……」


俺は大きく溜め息を吐き、竜神刀を強く握り直して目の前で怒ってますよオーラを纏っている四人に向けて向き直る。


「取り敢えず話聞いてくれないかね?」


「だまれ!貴様のような無礼者と話す事等無い!」


「グラン様、直ぐにこの無礼者を殺します故、暫しお待ちを……」


「ぶっ殺す!」


「全てはグラン様の為に」


……話が通じない。と言うかグランの為とかほざくならグランの言葉ちゃんと聞けよ……。


「はぁ……手足の一本や二本は覚悟してくれよ?」


俺対グランの部下四人の戦闘の火蓋が落ちた。


「どうでも良いけど、ガドウって僕のペットとの戦闘からずっと連戦してるよね。大変だね〜」


そう思うなら手伝えよ!!



何かこの章、戦闘が多いですが、恐らくこれがこの章最後のまともな戦闘となると思います。

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