ガドウVSエステル
絶賛インフルエンザ中ですが、頑張りました!頭が割れそうなくらい痛いですが、読者の皆様の為と思えば何のこれしき!
ドーム型の結界の中心で俺の竜神刀とエステルが何処からとも無く取り出したレイピアが激突した。その激突の余波が大気を大きく振動させ、轟音を響かせる。
「きゃっ!」
「ぬわぁ!」
「うわぁ!」
「きゃあ!」
その轟音にリリアや見学していた冒険者達が思わず悲鳴を上げた。だがその様子をのんびりと観察する余裕は無い。
(ほぅ、元特Sランク冒険者ってのは嘘じゃ無いようだな。動きに全くの無駄が無い)
目の前にいる美しい女性は、その見た目とは裏腹に鋭い一撃を放ってくる。
エステルから放たれるレイピアの突きは俺の体を意図も容易く貫く威力を秘めている。その突きを竜神刀で右に左にと弾き、隙を見付けては攻撃に移る。
エステルが使っているのは魔法剣と呼ばれる物だ。
魔法剣とはその名の通り武器に魔法を付与して、一撃の威力を極限まで極めた物である。付与する魔法は魔力により大にも小にもなる。それをエルフ族の中でも群を抜く魔力を持つエステルが使っているのだ。その細い剣先に宿る威力は想像に難くない。
「まったく、やっかいな物を……」
「その全てを的確に弾いている君がそれを言うのか。ほら、まだまだ行くよ!」
エステルは俺の呟きに苦笑しながら返す。その時もエステルの突きは止まらない。寧ろ鋭さが増したように感じる。
俺は繰り出される突きを紙一重で躱し、そのまま竜神刀を振り抜く。
「っ⁉︎危なかった……」
エステルはそれを咄嗟に引き戻したレイピアの柄で弾き、僅かに軌道を逸らした。その結果俺の竜神刀はエステルの額を軽く切り裂く程度で終わってしまった。その傷は直ぐに修復されたが、その際僅かにエステルの魔力が減った気がした。
「なるほどな、これがこの『転魔結界』とやらの能力か」
「そうだよ。だけどまさか一撃でここまで魔力を持ってかれるとはね……本当に君は何者だい?」
「それを見極めるんだろ?まだまだ俺は全力じゃないぞ?」
咄嗟に距離を取りながらそう問うエステルに、俺は不適に笑いながら答える。
「さて、と……今度はこっちから行くぞ!」
そう言って俺は竜神刀を居合の構えにして一瞬で距離を詰めると同時に目に見え無いだろう速度で振り抜く。
「ぐぅ!凄く重い一撃だね……!」
エステルな俺の一撃を何とか受け止めるが、やはり完全には受け止め切れず、苦悶の表情を作る。しかしそれでも武器を落とさなかったのは流石元特Sランク冒険者と言えよう。
俺の一撃を防いだエステルは多少距離を取る程度では意味が無いと判断したのか、先程より遥かに大きく距離を取った。
「やっぱり剣技だけじゃとてもじゃないけど君には勝てないね。悪いけど本気を出させて貰うよ!」
そう言った直後、エステルの周りに膨大な魔力が集まった。
(おいおいあれはシャレにならねーぞ……)
その魔力は放たれれば間違いなくこの結界内全てに届き、かつ、俺を戦闘不能に出来るだけの威力を秘めている。
対処方としては影移動を使って一瞬でエステルの背後に周り、そのままエステルを両断するだけでいいのだが、流石にそれでは味気が無さ過ぎる。そもそもこの女相手に変に力を見せようならば、後々めんどうな事になる事必須だ。ならばどうするか、答えは一つ。
「なら、正面からそれを打ち破ってやるだけだ」
俺は竜神刀に魔力を全力で乗せ、居合の構えを取る。
先程もやったが、この居合の構えと言うのは竜神刀のような特殊な形状の剣にとても相性が良い。これに気付いた俺は必死で練習を重ねて何とかここまで形を作り上げた。まだ何年も同じような練習を繰り返して来た者達から比べると、俺の技術はただちょっと珍しいくらいで拙いだろうが、それでもここまで形に出来たのは、やはり隔絶の森に生息する一歩間違えたら即死に至るような強力な魔物達を相手に命賭けで戦って来たが故だろう。
「またその変わった構えかい?君はそれでこれをどう躱す?《アトミックウォー》」
エステルが魔法の名前を発すると、次の瞬間には巨大な炎の塊がエステルの手元に現れた。その巨大な炎の塊が放つ膨大な熱気が頬を撫で、そのあまりの熱気は混沌竜たる俺を持ってしても思わず顔を顰めてしまう。
エステルより放たれた魔法が俺目掛けて飛んで来る。それは地面に着弾すると同時に辺りを焦土へと変えながら俺に迫って来るだろう。
「誰が避けると言った?」
ならばその前に斬るだけだ
俺は居合の構えから、魔力を込めた竜神刀を雷の如く解き放つ。
俺の竜神刀がエステルの放ったアトミックウォーに接触すると、アトミックウォーはまるで紙切れの如く真っ二つに両断された。
「なっ⁉︎」
両断されたアトミックウォーは俺の左右を通過して行き、やがて結界に当たり轟音を立てて消滅して行った。どうやら今の轟音で見学していた者達の殆どは気絶してしまったようだ。リリアは逞しく直立したまま気絶していた。
「おいおい、ギルドマスター様が外野に危害を加えていいのか?」
俺は不適な笑みでエステルに語り掛ける。この笑みは相手にプレッシャーを掛けるのに非常に役立つ。魔物相手の戦法だが、エルフ族にも多少の効果はあるだろう。事実エステルは自分でも気付かないうちに一歩俺から下がっている。
「まったく……私の渾身の魔法を一刀両断とは恐れ入ったよ……正直ここまでとは思っていなかった。にしてもあの程度の音で気絶するなんてまだまだ内の連中も未熟者だな」
エステルは冷や汗を流しながら、内心の恐怖を誤魔化そうと逢えて軽い口調で話す、が。俺からしたら完全にバレバレだ。先ず目が僅かに泳いでしまっている。その時点で誤魔化すのは失敗だ。寧ろエステルもその点だけ見れば未熟者なんじゃないか?
「ならば時間が惜しいな。そろそろ終わらすとしようか」
「そうだね……正直もう勝てる気がしないけど、もう一個とっておきの魔法をお披露目しようかな」
「ならそのとっておきとやらも正面から捩じ伏せてやるよ」
俺は竜神刀を構え、エステルは魔法の詠唱を行う。先程のアトミックウォーを無詠唱で放ったのを考えると、詠唱を必要とする今度の魔法はアトミックウォーより圧倒的に強力な物だろう。自然と竜神刀を握る手にも緊張が走る。
そして遂にエステルの詠唱が終わる。
「待たせたね……これが私のとっておきの魔法だよ《スターダスト・ノヴァ》!」
瞬間、視界が白一色に染められた。思わず目を閉じてしまう。それがこの魔法の本領だと言う事を知らずに……
「くっ!しまった!」
目を閉じてしまった一瞬の内に何かが俺の眼前まで迫って来ていた。
「ふふっ、流石の君もこれには対処出来無いだろ?」
エステルの勝ち誇った声が俺の耳に届いたが、今の俺はそれどころでは無い。眼前に迫って来た何かを咄嗟に回避するが、完全には躱し切れず、僅かに体に掠めさせてしまった。
「ぐっ⁉︎」
それだけで俺の魔力をガクッと削られる。
エステルもこれで決まりだと確信したのだろう。その表情は安堵僅かに安堵が見える。その様子が僅かに視界が戻った眼に映った。それと同時にスターダスト・ノヴァと言う魔法の本質に漸く気付いた。
スターダスト・ノヴァ、それは強力な閃光で相手の視界を塞ぎ、そこに巨大な岩のような物を高速で叩き付ける魔法だ。非常にシンプルだが、だからこそ手強い魔法である。
「これしきで俺を倒せるかと思っているのか!舐めるなよ‼︎」
俺は竜神刀に魔力を乗せ、その上に更に嵐魔法を纏わせ、全力で振り抜く。
俺の生きて来た時間の三分の一は敗北=死を意味する世界だ。その感覚がまだ抜け切っていない俺からしたら、この闘いも敗北=死と同義だ。
「はぁ!」
俺の振り抜いた竜神刀から放たれた衝撃は、降って来た岩のような物全てを切り裂き、そのまま止まること無くエステルに向かって突き進む。
「ははっ……これでも駄目とはね……私の負けだよ……」
エステルは大魔法を放った反動でろくに動く事が出来ず、俺の放った攻撃をまともに受け、そのダメージを全て魔力へと還元され、意識を失う。
「はぁ、はぁ……ちょっと疲れたな……」
俺は肩で息をしながら、意識を失ったエステルを抱え、結界から出ようとするが、直ぐに内側からは出られ無い事に気付き、嘆息する。
「ああ、こっちからは出れ無いだっけな。誰か意識ある奴は……いないか……仕方無い破るか」
俺は弱肉強食を発動させ、転魔結界を喰らい、強引に転魔結界から出る。
『転魔結界の捕食を確認しました。転魔結界の能力を取り込みます………完了しました。捕食によりスキル【魔力転移】を獲得しました』
えぇー……これからも能力取り込めるのかよ……素直に驚いたわ。
俺は何処か釈然としないままに、エステルとリリアをここに来る時に見掛けた医務室らしき場所に運んだ。他の奴等?知ら無いな。冒険者ならもっと頑張りなさい。
ーーーーーーーーーー
Name: ガドウ
Rece: 混沌竜カオスドラゴン (魔人)
unique: 「混沌魔法」
Special: 「弱肉強食」「竜化」「海竜化」「神魔眼」「超思考」
Skill: 「闇魔法」「竜覇気」「豪腕」「影移動」「嵐魔法」「魔力転移」・・・New!
Divin: 「ガリオンの寵愛」「竜神の加護」「麒麟の加護」
Gift: 「王種の種」「王種の証」「進化の苗木」「神種の種」
ーーーーーーーーーー
Passive: 「全把握」「全域移動」「超感覚」「能力加速」
前書きで言いましたが、インフルエンザ中に書いたので、もしかしたら何処か変なところがあるかも知れません。なのでもし、ここが変だなーとか思ったらご指摘いただけるとありがたいです。




