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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
二章 進出、人類領域
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防衛都市アクウェリウム

「魔神が行く異世界大蹂躙」のネタが出ません。所謂スランプですね(泣)なので今暫くこちらの方を進めて行きます。更新頻度は著しく落ちますが、作者の力不足をどうか許して下さい。

広大な森を俺は「全域移動」と「全把握」をフル活動させて木々の間を進む。進行先にいた魔物達を次々と仕留めてはマジックポーチに放り込み進む事数週間、遂に俺の視界の先に明かりが見えて来た。


「出た、か……」


明かりの先は遥か彼方へと続く広大な草原だった。


「ここが人間の領土……」


俺はこの場所の壮大な風景に暫く心奪われていた。

俺の住んでいた魔の平原もかなりの規模であったが、ここまで壮大では無かった。


「おっと、このまま見惚れてるわけにはいかないな」


俺は首を振って意識をしっかりさせて、改めてこの壮大な草原を眺め、「五感上昇」を発動させた。そして「竜化」を行い、自らの体を巨大な「混沌竜(カオスドラゴン)」へと変える。


「さて、行くか」


混沌竜(カオスドラゴン)となった俺を闇魔法で隠蔽し、そのまま大空へと飛び上がる。

今の世界の情勢は一部の過激派の魔王と人間が争っている状態だ。なるべく魔人と言う事を悟らせたく無い。この隠蔽はその為のものである。


目にも留まらぬ速度で空を駆け抜ける俺の視線はただ一点を見据えている。それはまだ豆粒くらいにしか見えないが確実に近付いている物。


防衛都市「アクウェリウム」


魔王達の領域と人間達の領域を分断する「隔絶の森」の最も近くに位置するこの街はいつ魔王軍が攻めて来ても対応出来るように常に戦闘態勢が整っている。その為当然他の街よりも戦闘能力が高い。

「隔絶の森」「死滅海」「無限廻廊」「終焉火山」。魔王領と人間領を分断するこの四つの場所にはそれぞれアクウェリウムと同等の戦闘能力を持つ街が聳え立っている。

魔王軍が人間達の領域に攻め込むには危険度特SSSランクの場所を越え、かつ人類最強の戦闘力を持つ街を落とさなければならない。

魔族は総じて人間族、獣人族、妖精族より高い戦闘能力を持っている。そんな弱種族だらけの人類が強種族である魔族相手に戦い続けられるのはこの特SSSランクの場所と防衛都市があるからだと言える。


そんな事を考えながら飛ぶ事数日。何時の間にか街は目と鼻の先にまで来ていた。思ったよりも隔絶の森と防衛都市アクウェリウムの距離は近かったようだ。

俺は竜化を解いて人の姿になると、さりげなく隠蔽を解いて街に向かって歩き出す。


***


「身分証を」


「すまない、どうやら紛失してしまったようだ。新たに発行したいんだが、可能か?」


街の入り口で身分証の提示を求められたが生憎今まで野生で生きて来た俺はそんな物持っていない。


「ならば仮証明書を発行出来るがこれには5千Gが必要だぞ」


「分かった」


俺はマジックポーチから取り出した5千Gを門兵の男に渡して、男に仮証明を発行して貰った。

この世界の通貨は魔族も人類も皆共通でゴールドとなっており、基本的にGと表記される。Gには100G貨、500G貨、1000G貨、10000G貨があり、この上に10万紙と100万紙、1000万紙となっている。これはかつて人類と魔族が争っていなかった時代にかつての人類の王達と魔族の王達によって決められた事らしい。


「確かに受け取った。これが仮証明書だ。身分証を作ったら仮証明書は捨てて貰っても構わないからな」


「了解だ」


門兵の男から仮証明を受け取った俺は遂に人間の街アクウェリウムに足を踏み入れた。

街に入った瞬間目に入ったのは道行く人々の賑やかな声であり、ぱっと見ただけでも人間、獣人、エルフ、ドワーフと言った多種多様な種族がいる。


「ここが人間の街……」


今の俺の姿は混沌竜(カオスドラゴン)に進化した事により暗黒竜(ネオ・ダークネスドラゴン)の頃よりも少し成長し、16〜17歳くらいの少年となっている。髪の色も竜化した時の姿と同じ鈍い銀色となっており、それに伴い瞳の色も黄金色になっている。

銀髪が珍しいのか道行く人々はすれ違う際にチラリと俺の事を見て来るが、特に不快に感じるような視線は無い。すれ違う人々と偶に目が合うと男も女も関係無しにボーッとした表情になるが、だからと言って俺に害が有るわけでは無いので無視している。


「ん?ここが冒険者ギルドか?」


暫く歩くととても頑丈そうな作りの建物が目の前に現れた。その建物の上の方に冒険者ギルドと書かれた看板があった事から、ここが冒険者ギルドで間違い無いだろう。字の読み書きはまだ少ししか習っていなかったが、隔絶の森に篭っていた時に完璧に覚えておいたので読み間違えると言う事は無いだろう。


中に入るとそこにいた人々に一斉に注目されたが、その全てを無視して奥にいるここの従業員らしき女性に向かって歩いて行った。


「冒険者ギルドの登録ってここでいいのか?」


「はい!冒険者ギルドへよう、こ、そ……」


従業員らしき女性は元気良く返事をしてくれたが、何故か俺の顔を見たとたんピシリと固まってしまった。


「おい、どうした?登録はここで合ってるのか?間違ってるのか?」


「は、はい!すみません、ここで合っています!えっと、新規の方ですね?なら最初にこちらの記入をお願いします」


正気に戻った女性は顔を赤くさせながらも慌てて何やら書類らしき物を出して来た。そこには大まかに名前、種族、年齢、スキルと言う欄があった。


「これは全てきちんと記入しないといけないのか?」


「いえ、秘匿したい事は書かれなくても結構です。ですがそれはこちらから指名依頼等を出す時に考慮しますので出来るだけ記入して頂ければこちらとしても助かります」


今だに顔を赤くさせてチラッチラッとこちらを見てくるが、ある程度は落ち着いたのか少なくとも言葉だけは正常に戻っている。


「なるほど………っと、これでいいのか?」


俺は出された書類に名前だけ書いて提出した。


「はい、確認します……ガドウさんですね?種族、年齢、スキルは空欄になっておりますがよろしいので?これでは殆ど指名依頼は出せませんが……」


「ああ構わない。種族は見た目で判断してくれ。他は……まあ訳有りって奴だ。あまり深く踏み込んで来ないでくれ。それに指名依頼云々もどうでもいい」


俺は種族は魔人だし、年齢も6歳と見た目にあって無い。スキルに関しては多過ぎて書くのがだるいだけだがな。


「分かりました」


女性は訝しそうにするも、冒険者の中には少なからずそう言う者もいるのか、すぐさま俺の記入した書類を何かの道具に取り込んだ。この冒険者と言う仕事にはこう言う奴も偶にはいるんだろうな。俺が一人で納得していると、女性は何やら道具から出て来たカードのような物を渡して来た。


「これは?」


「そちらはギルドカードと言う物です。それには今ガドウさんのお名前だけが記入されております。そちらにガドウさんの血を垂らして頂ければそれはガドウさん専用の物となります。こちらが採血ようの針です」


そう言って女性は一本の何の変哲も無い針を渡して来た。俺はそれで指先を刺し、僅かに出た血をギルドカードに垂らした。すると不思議な事に垂らした血はギルドカードに吸い込まれるようにして消えて行った。


「はい、完了です。こちらはもうガドウさん専用の物となりました。これは本人しか使えないので他の街に入る際の身分証としても使えます。それでは新たに登録されたガドウさんには冒険者ギルドの説明をさせて頂かせて貰います」


「ああ、頼む」


「了解致しました。では説明させて頂きます。

先ずギルドとは一般の方から貴族、果ては王族までもの方々から様々な依頼を受け、それを冒険者の皆様へと紹介させて頂き、その際の仲介料で成り立つ組織です。依頼を冒険者の皆様へと紹介した段階で既に仲介料は差し引いてありますので、冒険者の皆様は提示されている依頼料をそのまま受け取れますのでご安心して下さい。また、ギルドは何処の国にあってもその国は属しません。分かり易く言うと冒険者ギルドは【冒険者ギルド】と言う国だと思って下さい。その為戦争とかが起こった場合も緊急依頼と言う形で招集はかかりますが、参加するか否かは自由です。参加しなかったからって特にペナルティはありません。まあギルドや国からの信頼は落ちるかもしれませんがね。

ここまではよろしいですか?」


ここまでを纏めると冒険者ギルドは何処にあっても国には属さない独自の機関と言うわけか。仮に戦争とかが起こったとしても参加する義務は無い、と。だが戦争か……何故態々同じ人間同士で争うのかね。まあそれは俺達魔族も同じだし何か言えるわけではないがな。


「大丈夫だ。続きを頼む」


とにかくここまでは理解した。俺は軽く笑みを浮かべて続きを促す。


「っ!……わ、分かりました。では続きをご説明させて頂きましゅう///」


女性は再び顔を赤くして慌てて喋り……噛んだ。


「///……コホンッ、失礼しました。では続いては冒険者についてとギルドのルールを説明致します。

冒険者とは我々ギルドが仲介した依頼を受けて金銭を稼ぐ職業の方々の事を指します。冒険者はランクと言う物があり、それぞれF、E、D、C、B、A、特A、S、特S、SS、特SS、SSS、特SSSと分けられております。今のガドウさんは登録仕立てなのでFランクになっている筈です。

現在の最高ランクは【破壊王(デストロイ)】の二つ名を持つアラン様の特SSランクとなっています。ランクを上げるにはこちらが出す昇格試験を受けて合格する必要があります。これは最初の一度だけは特に条件も無しに受けられますが、一度失敗すると再度受けるにはそのランクの依頼をある程度達成しなければなりません。ですがこれが適用されるのはAランクまでです。特Aランクからは特別な条件を満たす必要があります。これらは全てギルドマスターが決める事ですので、仮に特A以上のランクを目指すならば、ギルドマスターの目に留まるように頑張って下さい。


次に冒険者ギルドのルールの説明です。

冒険者ギルドは基本的に冒険者同士の争いには関与致しません。仮にそれにより負傷してしまっても全ては自己責任でお願い致します。また、冒険者ギルドを通さないで依頼を受ける事も可能ですが、その場合はそこで生じたトラブルには一切関与致しませんのでご注意下さい。……以上が大まかにですがギルドの説明となっています。質問等は有りますでしょうか?」


つまりランクを上げたくば、試験を受けろと言う事か。特Aランク以上はどうすれば良いのかは分からんがそれはその時で良いだろう。んで、冒険者はとにかく何事も自己責任と言うわけだな。ま、個人同士の小さな諍いでも一々ギルドが関与するのも面倒だしまあ妥当なルールだな。


「そうだな……特に無いな。丁寧な説明をありがとよ」


「い、いえこれも仕事ですから///」


女性は顔を赤くしながらそう答えた。褒められて照れているのか?


「で、ではこのまま昇格試験を受けますか?」


「ああそうさせてもらおう」


「分かりました。ではこちらに……あ、私はリリアと言います。よろしくお願いします」


「ん?ああ、あんたの名前か。

ギルドカードを作る際に名前は記入したが俺も一応名乗るか。改めまして俺の名前はガドウだよろしくな」


俺は女性もといリリアの自己紹介に自分も改めて自己紹介してそのままリリアに促されるがままにギルドの奥へと進む。その際リリアが小さくガッツポーズを作っていたが、まあ気にするような事では無いだろ。俺はそう自己完結させて、静かにリリアの後をついて行った。

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