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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
第一章 強さを求め
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未知との遭遇

「海竜化」を行った俺の姿は、普段の竜化でなる赤黒い鱗に巨大な飛膜を持つ暗黒竜(ネオ・ダークネスドラゴン)では無く、濃い藍色の鱗に、強靭な尻尾を持つ蛇のような姿だった。


「これが海竜なのか?」


俺は海竜化を行った姿に首を傾げ、寝転んだままであった体を起こして動こうとした。だが何故か思い通りに立つ事が出来ず困惑していた。


「む?動けないぞ……」


そして今の自分には足が無い事に気付いた。


「足が無いな……どうやれば動けるんだ?」


そして試行錯誤を繰り返す事、約1時間。


「おお、こうやって動くのか!奇妙な感じだな」


俺は漸く魔力を自らの体を浮かすように放出する事で空を飛ぶ事が出来ることに気付いた。まったく、なんて面倒な移動方法だ。


俺はそのまま体を浮かしながら湖の方へ向かう。


「確か「水圧無効」と「水中移動」が海竜化(これ)に統合されたんだったな」


俺は思い切って湖の中へ飛び込んだ。先程は魔力枯渇が起こっていたので気付く余裕は無かったが、湖の水は思ったよりも冷たくて気持ちが良かった。


「なるほど……海竜化は水中でも息が出来るようになるのか……そしてこの水中を移動する際のスムーズ差は水中移動が統合されたからか」


俺は冷静に海竜化の能力を検証し、湖の中を縦横無尽に泳ぎまくる。それで気付いたのだが、海竜の姿はとても水中を移動し易い。水中移動の補正も相成って、海竜化を行った俺は水中での移動速度がとても速い。その際行き過ぎて水深100メートル辺りまで行ってしまったのだが、そこは海竜化に統合された「水圧無効」によりまったく水圧を感じなかった。


「ふぅ……海竜化、これは便利だ」


そこで俺は魔力把握を切っていたのを思い出し、急いで魔力把握を発動させる。……水中ではしゃぎ過ぎて背後からヘルシャークやデビルイーターにがぶりと言うのは勘弁願いたいからな。


「ふむ、半径100メートルの範囲に敵は無しか……念のためもうちょい範囲を広げておこうか……」


魔力把握の範囲を現在最大の200メートルに広げた。そしたらここから下に約120メートル、右に180メートル程行った場所に一つの反応があった。


「反応あり。行ってみるか……」


俺は反応のあった場所目指して水中を進んで行く。

泳ぐ事数十分。俺の視界に何やら洞窟のような場所が見えて来た。


「おいおい……この湖には地底湖まであるのかよ……」


俺は呟き地底湖の入り口まで進み……咄嗟に回避行動を取った。


「っ!?何だってんだよ……」


俺は攻撃が飛んで来た方向に睨み付けるようにして視線を送る。今の攻撃は当たれば死にはしないものの大きなダメージを負った事だろう。だが、その視線の先にある地底湖から現れ出て来たものを視界に収めた瞬間、全力で水上目指して泳ぎ出す。


「おいおいおいおい!特SSSランクの魔物がいるのは「無限廻廊」と「終焉火山」にだけじゃなかったのかよ!?」


ーーーーーーーーーー

”水王竜”リヴァイアサン・・・海竜型。その巨大な体からは想像も出来ない程の速度で動き獲物を捕らえる。周囲の水を意のままに操り攻撃する姿はまさに水王の名に相応しい姿。その戦闘力は魔王にも匹敵する程で、全ての海竜型の魔物の頂点に位置する。特SSSランク(?)。

ーーーーーーーーーー


姿を視認した時に咄嗟に完全解析を行った結果奴の正体に気付いた。水王竜リヴァイアサン。奴は「無限廻廊」や「終焉火山」に生息すると言われている魔王に匹敵する強さを持つ特SSSランクの魔物と同格だ。どう考えも勝ち目が無い。

何故父さんはこいつの存在を教えてくれなかったのだろうか。いや、もしかしたら父さんですらこいつの存在を知らなかったのかもしれない。


「とにかく逃げないと……!」


『待て、幼き竜の子よ』


だが奴は全力で逃亡する俺をあざ笑うかのように目の前に現れた。


その巨大な体からは想像出来無い程の速度で動く事が出来る。


俺の頭に先程完全解析で見た情報の一つが頭に過った。だがそれにしても速すぎる。俺とリヴァイアサンとの距離はまだ50メートル以上離れていた筈だ。


『落ち着くが良い。我に主を殺すつもりは無い。ただ少し話がしたいだけだ』


「話、だと?」


目の前にいるリヴァイアサンからはキリンとはまた違った威圧感を感じる。だが少し落ち着いてみると、リヴァイアサンからは殺意のようなものは感じない。寧ろ父さんから感じた慈愛のようなものを感じる。


『ああ、我はずっとあの地底湖にて過ごしている。その為こうして同胞も話すのは何百年振りなのだ』


「俺は海竜種じゃないぞ。これは特殊スキル「海竜化」でこの姿になっているだけだ」


リヴァイアサンの言葉に俺はそう返した。特に竜種によっては仲悪いと言う事は無いので、安全だと判断したからだ。寧ろこいつの前で嘘を吐く事の方がよっぽどリスクが高い。

だから俺は素直にこいつと話をする事にした。その方が生きて帰れる可能性が圧倒的に高いからだ。


『ほう、それは興味深いな。つまり主は海竜では無いと言う事か?』


「ああ、本来の俺は漆黒竜(ダークネスドラゴン)から進化した暗黒竜(ネオ・ダークネスドラゴン)だ」


『その若さで既に進化を経験しておるのか。中々の逸材では無いか』


「そりゃどうも。だがどう考えてもあんたに勝てる気はしないがな」


『クハハハハ!それはそうだ。幾ら若くして進化を経験しているとは言え、まだ数年しか生きておらん若僧に負ける程我も老いぼれておらんわ!」


リヴァイアサンはとても愉快そうに笑う。本当にただ会話を楽しんでいるだけのようだ。


「ところであんたはさっき話をしたいだけと言ったが、それなら何故最初に攻撃してきたんだ?自慢じゃないが、あれをくらっていれば少なくともこうしてまともに話す事なんて出来無いような状態になっていたと思うが……」


『それについては本当にすまなかった。最初は何時も通りヘルシャークやデビルイーターが近付いて来たのだと思ってな』


リヴァイアサンは本当にすまなそうに頭を下げた。自分より圧倒的弱者に頭を下げれるその姿勢はとても好感的に思えた。


「いや、構わないさ。こうして俺も無事だったわけだしな」


『そうか。そう言って貰えるとこちらも助かる。それにしても「海竜化」か。主は特殊(スペシャル)モンスターなのか?」


「それとは少し違うな。俺にはガドウと言う名がある。だから言うなら名持ちの特殊(スペシャル)モンスター……名持ちの特殊(ネームドスペシャル)モンスターかな?」


『なんと!?中々の逸材とは思ったが、ここまでとはな……』


「まあそんな大層な肩書きがあっても、強くなければそんな物無意味だ。だから俺は強くなりたい」


『ふむ、主……いや、ガドウと言ったな。ガドウは何故そこまで強さを求める?』


「俺には魔王ヴェへムートを殺すと言う目的とその先の果てしなき夢想がある。その為だ」


リヴァイアサンの質問に俺は即答する。ギラリと強い意志を窺わせる俺にリヴァイアサンは一瞬惚けた姿を見せ、次の瞬間には堰を切ったように笑い出した。


『クハハハハ!そうか魔王を殺し、夢を現実とするか!なるほどな、それなら強さを求める理由も分かる!だがそれは生半可な覚悟ではなれんぞ?』


リヴァイアサンは急に目を剣呑なものに変え、俺を睨み付けて来る。これは……ためされているのか?


「ああ覚悟なら出来ている」


ならばそれには本気で返さないとな。

俺はしっかりとリヴァイアサンの目を見つめ、覚悟の程を伝えた。

目を合わせ続ける事数秒。その数秒は途轍もなく長く、数秒なの筈が数分にまで感じる程だった。

数秒の間俺の目を真っ直ぐに見詰め返していたリヴァイアサンは再び大声で笑い出した。


『クハハハハ!ガドウの覚悟の程は伝わった!良いだろう、我もその目的に少しばかり力を貸そう!暫し待たれよ!』


そう言ってリヴァイアサンは自らの住処である地底湖に戻り、何かを持って再び俺の前に戻って来た。


『これはかつて我と争った”英雄”と呼ばれる者が持っていた物だ。3日に渡る争いの果てに我は奴を屠った。その時の戦利品と、我個人が作った物だ。受け取るが良い』


そう言ってリヴァイアサンから渡された物は二対の特殊なフォルムをした道具と、その道具を差し込むのに適した作りになっているベルト。そしてリヴァイアサンと同じような気配を放つ一つの腕輪だった。


『”英雄”と呼ばれていた者はその二対の道具を”銃”と呼んでいた。そしてその腕輪は我が作り出し、何百年も魔力を注ぎ込んでいた物だ』


「こんな強力な物を……本当にいいのか?」


『クハハハハ!遠慮などするな!我はガドウが気に入った!いつかガドウが強くなったらまた来るが良い!その時は我と戦ってみようぞ!」


リヴァイアサンは楽しそうに笑ってそう言った。その裏表の無い言葉に俺も自然と笑みをこぼし、最後は二人揃って大声で笑い出した。


「ははははは!あー笑った笑った。じゃあありがたくこれは貰って行くよ。今度会う時には、あんたが腰を抜かす程強くなって来てやる!」


『クハハハハ!ならばその時を楽しみにしていよう!最後に我が地上まで送ってやる!背に絡み付くが良い!』


俺はリヴァイアサンの言葉に従い、蛇のような体を器用にリヴァイアサンの体に絡み付けて体を固定する。


『よし、では行くぞ!』


その瞬間リヴァイアサンの体は水を切って泳ぎ出す。泳いだ先にいたヘルシャークをリヴァイアサンは意図も容易く喰らい、止まること無く地上向けて泳ぎ続ける。

来る時数十分かかった距離を5分もかけず泳ぎ切り、リヴァイアサンと俺の姿は地上に出る。水飛沫を全身に受け水面から飛び立つその姿はとても美しく、幻想的であっただろう。


『着いたぞ。我も久々の地上だ。ガドウよ、ここでお別れだな』


「ああ、だけど直ぐにまた会えるさ」


俺は海竜化を解き、そのまま竜化を行う。


『ほう、それがガドウの真の姿か。美しいではないか』


「ありがとう。この姿は父さんから貰った俺の誇りだ」


『クハハハハ、息子にそう言って貰えるとは主の父君もさぞ鼻が高いだろうな!ではさらばだガドウ!達者でな!』


そう言ってリヴァイアサンは湖の底に戻って行った。その姿は直ぐに見えなくなり、やがて水面には穏やかな波紋だけが残っていた。


「キリンに引き続きリヴァイアサンにまで会ってしまうとはね……まったく、俺の運はどうなってんのやら」


後に残った俺はそう呟き、リヴァイアサンから貰った道具を完全解析にて解析する事にした。

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