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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生とは名ばかりの妄言。

作者: 嵩城

 俺が転生した話を効かせてやろう。


 死んだのは18歳の誕生日、自殺。


 親や友人が泣く人間かと言うわけでもなく、普通の人生を生きた俺には終ぞ楽しいということなど思い浮かばなかった。


 テストは常に100点。勉強はちゃんとしていたし、元から頭が良かったこともあって基本なんでもできた。


 死ぬ寸前思ったのは「宇宙くらいには行きたかった」と後悔した。


 転生して記憶があったときには転生と瞬時に理解した。


 3歳になって記憶が流れこんできたときは死のうかと思った。


 4歳になって無口、無表情になっていた俺に周りの親族は驚き、病院に送りつけた。


 5歳になって幼児にしては天才過ぎると言われていたのは生前も似たようなものだ。


 6歳になって両親に売られると思わなかったが、顔が笑顔になっていたことは覚えている。


 その後、俺の両親はきっちり逮捕されたようで、俺の身元は不明。


 不幸な状況だと周りで耳にした時、生前体験できなかったことにワクワクした。


 7歳になって魔法を完全習得して、生活が楽になった。


 8歳になって魔物と化していた動物を聖属性の魔法で浄化したとき、この世界で生きていくことの簡単さに絶望した。


 そして、俺は第2の人生を終了した。


「別に思いつめたわけじゃない。ただつまらなかったんだ」


 神様を名乗るそいつに文句を言った。

 

 神様は頭を掻いて嬉しそうな表情を作る。


「君は、どんな世界だと楽しいと思う?」


「なにも知らず、なにも分からず、なにをしたらいいのかわからない、でもなんでもできる世界」


 常々考えていた。ファンタジーでは魔法を習得すれば普通の人が願うことは簡単に実現できた。


 元の世界では学力さえ高ければ、生活するだけのことができた。


 ただ願った。


 みんなと同じようになんて言わない。ただ、趣味がほしい。


 なんでも出来てしまう。


 次の世界では筋肉を増強して戦い、次は銃撃戦、その次は電脳世界でウイルスバスター。


 世界を知るたびに、自殺。


 いつしかただの死にたがりが完成だ。


 他の世界で面白かったことが一つ。


 俺が自殺するのを止めてきた人間が出た。


 同じ学校を通う女の子。


「なんでそんな風に死のうと思うの?」


 少し面白く感じた。その時少し笑っていたようで驚かれたが、自分がかまってちゃんの様な存在であることを認め、死んだ。


 その世界でそれに気づくと神様は現れなくなった。


 こんなことが続くなら、別に転生する必要ない。


 そう思った瞬間に涙が出た。


 目が熱い、とめどなく溢れる涙は、終わることを知らないようだ。


 初めて泣いたわけじゃなく、この時衝撃が走った。


 なんで泣いてるんだろう?


 その考えが保ったのは僅か一瞬。その疑問さえすぐに解けた。


 涙は溢れるのを止めた。


 考えるのを止めると、楽になった。


 もう何も考えたくない。わかってしまうのは、怖い。


 このわからなくすることをわかろうとして、そんな方法ないことがわかった。


 これは呪いだ。人生を狂わせて、生きることに絶望を与える。


 言ってみれば、バグの様なものだ。


 始めたゲームが序盤からカンスト通り越してなにもすることが無くなった。


 話は既に頭のなかで終わっていて、やり終わる前に放棄してしまう。


 それを理由に、考えるのを、止めた。


*****


 話を聞き終わると、少女は涙した。


 少年は目の前で机に頭を打ち付けて、喋る以外なにもできることができない体になっていた。


 彼はそれを認識してるのか、繰り返して話を始めた。


 医者は精神が壊れていると言っていたが、少女は話を信じた。


 妄言でも、幼い頃からずっと見ていた思考回路が謎の少年はこんな悩みを持っていたのだろう。


 それが本当かまでは信じてはいるがわからない。


 それでも、少年を見てきた少女は話を信じる。


 彼が死ねば、繰り返すのだろう。


 天才の妄想話を聞いて、少女はこんな解釈をした。


 そして少女は、少年に興味を持った。


 歪んでいるのかもしれない、ただの自己満足だ。

 

 少女は一人納得しても、抑えきれない感情が燃えて、いつしか病院に通うようになった。


 話を聞いて、相槌を打つ。


 それが彼女の日課になった。


 ただ、それだけの毎日が続くようになった。





――終わり――

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