第終夢、いつかは
朝、「眠たい」と 枕に顔を埋める私の耳に、母の声が響く。
どんな目覚ましよりも五月蠅い。 どんな目覚ましよりも効果的。
それが私の朝の話。 ――“ユメカレ”が現実になんて話は、夢のまた夢。
朝起きて、今まで見ていたものが夢だと気付く。 毎度毎度の事だ。
いい加減慣れた事だけど、その後 思うんだ。 ――『これが永遠に続けば』って。
だけど、そんな願いは叶わない。 『一度でも』って思うけれど、叶う事はない。
毎年来る七夕に願っても、 時々 流れる星に何度願っても、 叶いはしなかった。
それが馬鹿馬鹿しいってことはわかってる。 叶わないってこともわかってる。
――だけど、どうしてもリアルでの恋がうまくいかないんだ。
――なんでか、好きになった人に愛されることが全く以ってないんだ。
だから、私はリアルの恋から逃げて夢の中に理想を求めた・・・。
だけど、その世界ではうまくいく。 何事も思い通り。 だけど、つまらない。
思い通りだし、とても幸せが溢れているけれど、 そこには、それ以上がないんだ。
全部、自分で創ってるから。 自分だけの世界だから、新鮮さに欠けてるんだ。
だけど、私はこの世界から抜け出すことが出来ない。
かと言って、別に 抜け出そうとも思ってないけれど・・・。
ただ思うことはある。
私がこれから先、誰かに愛されることになったら・・・
もし、そうなったら、金澤智哉君は消えてしまうのかな?
私しか知らない、 私が創り出した智哉君はいなくなってしまうのかなって。
別に、だからどうしたって話かもしれない。
将来の私は、「あぁ、そんな人いたねっ」って笑って流すかもしれない。
だけど、今の私にとっての“恋”とは、そういうモノ。
例え、他人から見て馬鹿馬鹿しくても、私は真剣なんだ。
だから、設定なんかじゃなく、新鮮さのあるカレができたら私は言ってやる。
「“ユメカレ?” 馬鹿じゃないの? 本当の幸せ知らないの? 可哀そう」って!!
それまで、私は智哉君に恋してる。 いつか、私を愛してくれる人が現れると信じて。