第三夢、悪いのは
それから少しして、一限の授業が始まった。
これで、やっと二人の悪乗りの無限ループから抜けられる。
私はそう思い、完全に安心しきっていた。
だが、ここで再び携帯が鳴るのである。
――ヴーヴー ヴーヴー
私は鞄の中から暴れる携帯を取り出し、画面を見た。
すると、再び智哉君からのメールであった。
「紫蘭へ
授業中に、ごめんな。
見る映画なんだけど、何が良い?」
そんな簡単な内容だったが、二人は黙ってはくれなかった。
梓「おぉっ!?」
「今度は智哉君なんだって?」
「別れたいって??ww ウケルwww」
美優「違うでしょw」
「どうせ、たまには外でヤラないか?じゃないww」
私「どっちも違うよ・・・」
「残念でしたねっ・・・!!」
私は二人を気にしないことにし、返信を始めた。
「智哉君へ
私は何でもいいから、
智哉君に任せるよ♪」
そう返信しておいた。
それから、しばらくして、智哉君から返信が来て、見る映画が決定した。
あーーー、 あーーーー、 あーーーーー!!!
楽しみだっ! 楽しみすぎて、口から心臓が飛び出しそう☆彡
ヤバい! ヤヴァイ!! ヤヴァぁああああい!!!
心臓がバックバック鳴ッテルww ダメだ、死んじゃいそう☆彡
だって、“ユメカレ”である智哉君と、
夢の中でしか触れ合えなかった智哉君と、リアルデートするんだよ?
すごいでしょ?すごいっしょww? ありえんでしょ?ウケルでしょww
あーー、 あーーーーー、 あーーーーーーー!!!
は・や・く・が・っ・こ・う・お・わ・ら・な・い・か・な・?
私は授業中、そんなことばかり考えていた。
すると、休み時間になり、例の二人組が私の所にやってくるのである。
美優「何々?」
「『この世には“幸せ”しかない』みたいなその顔ww」
「羨ましすぎて、本トにもう殴り飛ばしたい勢い!!」
梓「でも、そんなことしたら愛しの智哉様が黙っちゃいないっ!!」
「「テメェ、俺の女に手を出すたァい度胸してんなァ!?」ってな感じでww」
美優「あーーー、うっざっ!!」
「あーーー、私も幸せになりたいっ!!」
梓「じゃあ、私達、一緒に し・あ・わ・せ になっちゃう?」
美優「梓・・・あんた・・・」
梓「うん、あたし・・・美優ちゃんのことが・・・」
美優「梓・・・実はね? あたしも・・・」
私「はいはい、そういうのは余所でやって!!」
梓/美優「えーいいじゃんっ!」
美優「いくら智哉君が待ち遠しいからって、私達を遠ざけるのは良くないよ?」
梓「それか、そんなに・・・私達のこと嫌い?」
「こんなにも私は紫蘭のことを好きで・・・大好きでいるのに・・・」
メンドクサっ!! 超メンドっっ!! あーメンドぉ!!
なんでこの二人はこんなにも面倒なの??
――私はそのままの想いを二人にぶつけた。
私「私は、今あんた達のおふざけに付き合ってる暇はないの!」
「だから、シッシ!! あっち行っててよ!! じゃーまっ!」
すると、困ったことに、梓が泣き始めるのである。
梓「ふぇっ、えっ、あぅ、、、わぁあああーーー、 紫蘭なんて大っ嫌いだっ!!!」
「わっ、わたしはただ!! 私はただ、紫蘭が彼氏とばっか仲良くするから、その寂しさを紛らわせたかっただけなのに・・・だけなのに、なんでそんな風に怒るの?」
「そんなに私が嫌い? ねぇ!嫌いなんでしょ?」
「どうせ、紫蘭が私のことを嫌ってるって!嫌ってるってことは知ってたけど!!」
「だけど、面と向かってそんなこと言わなくたっていいじゃんっ!!!」
「そんなに私を・・・わたしを・・・わたっ・・・わぁああああ!!!」
――そして、梓はどこかに走り去っていった。
美優「あぁー、やっちゃった・・・」
「紫蘭・・・あんたどうすんの?」
「梓がああなっちゃったら、もうどうしようもないよ?」
「ほら、早く追いかけて慰めてあげないと、取り返しつかないよ?」
――そんなことは知っている。
――けれども、本当に悪いのは、果たして私の方なのか? そうなのか?
――それを全国民の人に訊いてみたいと思うのは、果たして私だけなのか?
――わからない・・・。 だけど、とりあえず梓に謝るために私は走り出した。