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上海リリ  作者: 吾妻栄子
48/50

<48>

上海は日本の東京とほぼ同じ気候なので、当然梅雨もあります。

表に出ると、眩しい光と、行き交う人や車の足音と、そして、この街特有の香ばしい匂いが一度に押し寄せる。


吸い込む空気は相変わらずほこりっぽくて少しせそうになるが、頬を微かに撫でる風は梅雨の湿り気を含んでいる。


――雨が降りだす前に食べ終えて戻らなきゃ。


莎莎の薄青い旗袍と薇薇の石榴色の旗袍の背中を追いつつ、私は案じた。


日に当てられて余計に暑くなったせいか、薇薇の背中はさっきより丸く濡れた分が大きくなったようだ。


これからますます暑くなるから、この子は衣装の洗濯が大変になるに違いない。

旗袍を何枚持っているのか知らないけれど、こんなに汗っかきだと、多分、毎日とっかえひっかえ着ては洗って干さなきゃいけないんだろう。


私はと言えば、この一張羅いっちょうらをどうやって長持ちさせるかが問題だ。

何しろこれは絹だし、薄いだいだい色だから、やさしく水洗いして、色がめないように日陰干ししないと……。


不慣れなハイヒールに痛み出した足は、梅雨の晴れ間に照りつける陽の光を避けるように、知らず知らず舗装された道の端に寄っていった。

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