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降りた階では、一階と同じくツルツルした廊下が続いている。
蓉姐の後ろについて立ち並ぶ扉の前を一つ一つ通り過ぎながら、今にまた何かが飛び出してくるのではないかという気がしてならなかった。
一番奥の扉の前に来た所で、蓉姐はビーズのバッグの口を探り出して、銀色の鍵を取り出した。
私はほっと息を吐く。
どうやらこの部屋で上がりらしい。
蓉姐が扉を開くと、暗がりの奥から、鐘の早打ちに似た音が鋭く鳴り響いてきた。
「はい、はい、はい、はい、」
身を固くする私をよそに蓉姐は、音のする闇の中へ駆け込む。
その途中でカチャリと軽い音がして、蓉姐が姿を消した奥がパッと明るくなる。
鐘の早打ちが止まった。
「もしもし?」
部屋には他にも誰かいるらしい。
「私ですけど、どちら様ですか?」
閉じた扉に錠をすべきか一瞬迷ったが、そのままにして奥に向かった。