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「停めて」
蓉姐の声と共に灯りの流れは止まった。
降りなくちゃ。
今度は指示される前に動いてみる。
「全く、最近は何でも値上がり、値上がりなんだから」
車夫がまた全速力で駆け出すと、蓉姐はバッグに財布をしまいながら、舌打ちした。
ビーズで出来たバッグは辺りを彩る灯りを反射して、キラキラと無数の細かな光を発しながら柔らかにうねる。
「あんた、自分だけさっさと降りんじゃないわよ」
蓉姐はこちらの姿を認めると、またきつい声を出した。
「人に車代払わしといて!」
どうやら、私はまた気の利かない真似をしたらしい。
「お車代、いくら払えばよろしいですか?」
綿入れの懐を探る。
車代とお粥一杯の値段ではどちらが高いんだろう?
「もういい!」
付き刺す様な声が飛ぶ。
「あんたに払えないのは分かるから」
蓉姐は急に声を落としてそう告げると、歩き出した。
本当に、ついていっていいのかな。
迷いながらも、私は後に従うしかない。