遭遇
僕らは適当に公園から離れた場所で敵を撒いた後、急いで公園に向かっていた。
「お父さんは?」
「母子家庭なんだよ」
「あ、そうなんだ」
悪いこと聞いたかな?
「でも保護されたあとは、男の異星人に少しの間面倒見てもらってたから、俺にとってはその人が父親って感じだな」
「何それ!気になる」
「それはまたいつか話してやるよ。それより、これからのプランは?」
「とりあえず二人と早く合流しないと。あんまり遅くなると、慎重なカイルさんでも二人で戦闘を開始しちゃうと思うから」
そもそも二人が襲われて、戦闘に入る可能性だってある。
「……α。分かってると思うけど、公園にいるのは多分―」
「うん。でも、一人で突っ込むのはやめてね。この戦いは、シュウ君一人のものじゃない。僕ら四人のものだから」
「……」
「公園が見えてきたよ」
シュウ君を公園の入り口の前で降ろす。
今いるのは、前回の時とは違う入り口だ。
前回の入り口を探し外を回るか考えたが、時間のロスを考え、このまま公園の中から地下室を目指すことにした。
「ここにはアイツらいないな」
「うん。別の入り口から入ったのかも。僕らも中に入って地下室を目指そう」
「ああ」
僕らは銃を手に持ち、公園の中に侵入した。
「なぁα。俺は銃を使うべきか?それとも自分の能力で戦うべきか?どう思う?」
横を歩く彼の言葉に、僕は思考を巡らせる。
さっきの戦闘。シュウ君の能力で倒した敵は固まって、液状に溶けることはなかった。
これは多分、発火によって水分が蒸発したからだ。
それが有利に働くのかどうかは今は分からない。
そしてもし敵が、シュウ君の話に出てきた奴なら、泥が爆発する物質に変わる可能性がある。
なら接近でしか発動できないシュウ君の能力は、相性が悪いんじゃないか?
「もしシュウ君の記憶の中の奴と、今から戦う敵が同じなら、推測だけど泥が爆発するか、泥の触れた表面が爆発する可能性がある。飛空車や人が爆発したのを見たって言ってたよね?多分、その時降ったのは泥の雨だよ」
僕の考えを聞いたシュウ君は、ほえぇと言った表情をした。
「お前、頭良いよな」
「えっ、そうかなぁ。えへへ」
そんなやりとりをしたながら歩いていると、少し離れた所に背の高い木々があるエリアが見えてきた。
「シュウ君、あそこら辺に目的地があるよ」
僕の言葉にシュウ君の顔が引き締まる。
「あそこら辺て、どこだよ?」
「うーんと、あの木々の道のどっか」
「どっか?」
彼の額に皺がよる。
「ごめん。正確な場所は分からない。けど、あの木々ら辺で間違いないはず」
前回きた時は足の痛みで、ほとんど途中のルートは覚えていない。
ただあんな木々があった道を、通ったことは覚えてる。
「……お前よくそれで提案したな」
「えへへー」
僕は笑顔で誤魔化した。
そんな時、僕ら以外の小さい声のようなものが聞こえた。
「ん〜ん」
ん?
音の方に目をやると、人懐っこいのだろうか?尻尾を振った一匹の中型犬が、甘えた声を出しながら、こちらに近づいてきていた。
「おお、可愛いな」
シュウ君がそれを迎えに行こうとする。
なんでこんな所に犬が……!
「待って、こんな―」
「本物ならな」
僕の忠告をかき消すように、シュウ君の銃は犬目掛けて火を吹いた。
犬は数発被弾したあと、泥になって崩れ落ちた。
「趣味が悪いな、お前」
そしてそのまま、彼は近くの木に向かい銃を撃ち出した。
僕が状況を把握できない中、数発の弾丸を受けた木の影から、勢いよく誰かが飛び出してきた。
彼はそれを追い標準を合わせ撃つが、しなやかな動きとキレのある方向転換で、見事に翻弄されてしまっていた。
「チッ」
「危ないじゃにゃいかー。当たったらどにゃいする気?」
「シュウ君、一旦撃つのやめて」
僕は彼の肩に手を置き声をかける。
すると彼は銃撃をやめ、目の前の存在も動きを止め、僕らの対角線に立った。
その止まった姿はほぼ人で、褐色の肌、頭に猫耳を生やし、手と足は獣のように体毛が多く生えていた。
そして人よりも肘から先と、膝から先が一回りほど太かった。
「この肉球が傷ついたら、お兄さんたちのこと、ぷにぷにしてあげられにゃいよ〜」
彼女は両手の肉球を見せながら、ニヤニヤと笑っている。
彼女だと思った理由は、控えめだが胸があったからだ。
「お前は誰だ?」
シュウ君が問う。
「私?私は猫娘。まだ名前はにゃい。いにゃいにゃいばぁー」
彼女は舌を出しておちょくってくる。
「気をつけて。コイツは、僕らの思ってた敵じゃない」
「ああ」
僕らは彼女に銃口を向けたまま、じりじりと距離を詰める。
そう、詰める。
なぜなら僕らに逃げるという選択肢はなく、先ほどの彼女の動きからして、もっと近づかなければ弾が当たらないと判断したからだ。
それに僕らの能力も接近戦でしか、使えない。
だから近づかなくては。
シュウ君もきっと同じ考えのはずだ。
だから僕は自分の能力とシュウ君を信じる。
刹那、僕は全速力で彼女との距離を一気に詰める。
「にゃ!」
突然の動きに反応が遅れた彼女。
その隙に背後に回り込み、僕は彼女を気をつけの姿勢で羽交締めにした。
「シュウ君!」
さっきスラリムにやろうとしていた作戦だ!
僕が相手を拘束し、シュウ君が燃やす。
彼もその意図が通じたようで、銃を下ろし全力で駆けてくる。
「離せにゃん!」
やはり獣人。
かなりの力で暴れられるが、どうやら僕の力の方が強いようで、バタバタともがくしかできないようだ。
「押さえとけ!」
シュウ君の両手が、暴れる彼女の両肩に触れる。
発火。
すると瞬間で、後ろにいても熱を感じるほど、熱気を帯びた。
「いやあああ!熱いにゃ!話を聞いてほしいにゃ!」
「うるせえ、遺言なら聞いてやるよ!」
「敵じゃないにゃ!」
待てよ。
確かにコイツは木の影に隠れていたけど、攻撃はしてきてない。
「シュウ君!一旦話を―」
僕は帯びる熱気の中、思わず目を見開いた。
「私は被害者にゃ!」
なぜなら彼女の焼かれていた部分が、固まっていたからである。
エネスタにいた女性たちと同じように。
「助けてほしいにゃ!」
そして、大きな声で叫んだ彼女は爆発した。




