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この星の記憶  作者: 神常神


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16/18

エネスタにて

「どうだ?」

「ダメだな。残ってないぜ」

「すまぬ」

「気にすることじゃない。どちらにせよ取るべき行動だった」


僕らはブーシ君の案内で、近い方のエネスタに来ていた。

不幸中の幸いか、道中敵の攻撃はなく、無事ここまで辿り着くことができた。

さらにこのエネスタ中々大きく、三方を3m程の塀で囲んでおり、おかげで奥の角の方に駐車することで、射線を切りやすく視界の確保もできた。

しかし幸いもここまでで、肝心のエネルギーは貯蓄されてはいなかった。


「もう一つの方のエネスタに向かうか?」

「いや、ここに残っていなかったのなら、向こう側も可能性は低いだろう」


三人がエネルギーのことに気を取られている中、僕はあることに気が気じゃなくなっていた。

いつからだろう。

数字だ。

空の数字がいつの間にか変わっていた。

995。

現在僕の目には、空に刻印された数字がそう見えている。

何で減ってるんだ……?


「だけどよ、どちらにしろ他に試せることってなくないか?」

「……ブーシ、もう一つの方へはここからどのぐらいだ?」

「車で移動するなら、10分とかからない。近くの大きな公園を回り込めば最短で着く」


大きな公園!


「公園には、近づかない方がいい気がする」

「どうしてだ?まさか、何か見えたか?」


カイルさんに問われる。


「いえ、そういうわけでは……」


あそこに敵がいた確証はない。

でも僕を殺したカイルさんが、目の前のカイルさんだとも思えない。

なら、やっぱりあそこに敵がいて、カイルさんの姿に化けて僕を殺したと考えるのが妥当か……。


「α。考えがあるのなら言ってくれ。さっきの握手で、全てを水に流すのは無理だと思うが……お前のアイデアも必要だ」


カイルさん……。


「未来が見えた、とは違うんですが、その公園の中に、姿を変える魔物がいると思います」

「姿を変える?」

「それって、俺たちに化けれるってことか?」

「いや、姿を変えれるってのは予想の話で、その、えと」


ああ、どうしよう?

偽物のカイルさんに殺されたって言おうか?

でもそれだと、何で偽物って分かるんだって話になるよね。

そしたら確信的なことはやっぱり言えないし。

それによく考えたら、あのカイルさんは本物で、操られていたパターンもあるのか!


「……ほ、本当に詳しくは分からないんですけど、でも敵が―」

「分かった」


カイルさんはそう言うと、僕の肩に手を置いた。


「なら、まずは公園の敵を叩く」

「カイルさん!」

「とにかく敵がいるんだろ?」

「はい、それは確かです」


不思議と声が弾んだ。


「よし。問題は飛空車をどうするかだ」

「バリア張って、あそこのガレージに隠しとけばどうだ?」


シュウ君は向かいにある、一軒家のガレージを指差す。


「そうだな。あそこに一旦隠そう。もっとも、今敵に見られていたら意味ないがな」

「カイルって、何でそんなネガティブなんだ?」

「……慎重なだけだ。移動させるぞ」


カイルさんがそう言った時だった。


「あの、すいません」


エネスタの入り口。壁の角から、顔だけひょっこりと覗かせている、女性が声をかけてきた。


「助けて、ください。魔物に、襲われて」


おかしい。これは明らかにおかしい。

僕ら以外人間がいるわけない。


「……おい、おかしいぞ」


後ろ側にいるブーシ君が声に出す。


「ああ、人間が俺たち以外いるわけない」


僕の横でカイルさんがそう答える。


「いや違う!そんなことは分かりきっている。我はβの様子が変だと言っている!」


僕とカイルさんは軽く振り返り、ブーシ君の隣に立つシュウ君を見る。

彼の目は見開かれ、額からは尋常ではない汗が流れ、呼吸が浅く激しくなっている。


「β!」

「シュウ君!」

「な、何で……」


まるで僕たちの声は、彼には届いていないようだった。

それどころか、その視界にも僕たちはなく、壁の角にいる女性しか捉えていないように思えた。


「おい、どうした!」

「そんなわけないそんなわけない」

「落ち着けβ!」

「おい来てるぞ!」


後ろを向いていた僕とカイルさんに、ブーシ君が彼女の接近を知らせる。

ペタペタとコンクリを裸足で歩き、ゆったりとふらつきながらも、右手で僕らを求めるように歩いてくる。


「近づくな!」

「待て!」


銃を構えるカイルさんに、シュウ君が声を荒げる。


「安心しろ、あれは人間じゃない。仮に人間だったとしても俺が責任を―」

「違うそうじゃない!俺の母さんなんだ!」


苦しそうに吐いた彼の言葉に、僕らは驚く。


「な、何でお前の母親がここにいる!?いるわけないだろ!」

「いるわけない、いるわけないんだ!母さんは死んでる!」


カイルさんの言葉に被せるように、大きな声で喋った彼は、急に口に手を当て(うずくま)ってしまう。

その様子に僕は咄嗟に駆け寄った。


「大丈夫!?」

「α。それどころではないぞ」


シュウ君の背中に手を当てている僕に、ブーシ君は緊張のこもった小さな声で言う。


「見ろ」


その言葉に振り向くと、エネスタの入り口の両角から、次々と女性が()()()()と歩きでてきていた。

しかしその人達はこちらに来ると言うより、入り口を塞ぎ立つように、綺麗に横一列に整列を始めている。


「β。悪いな」


そう言ったカイルさんは、迫ってきていたシュウ君の母親?に向け一発発砲した。

それは見事に胸の真ん中を撃ち抜き、血飛沫の代わりに泥を飛び散らせた。


「泥……だと」


その様子を四つん這いになって見ていたシュウ君が呟く。


「やめて、撃た―」


そう口を開いた彼女に、カイルさんは反動の少ない、小さな弾を撃ち込んでいく。


「うだ、うだないびえぇぇぇ!」


断末魔の叫びが終わる頃には、泥の水溜りが彼女のいた場所にできていた。


「……まずいな、入り口を塞がれた」

「それだけではない。数人こちらに来だしたぞ」


現状への対処が遅れたことを、二人の言動が物語っていた。

しかしそれをどうするか、議論する時間は無かった。

なぜならさっきまで意気消沈していたはずのシュウ君が、カイルさんの横を駆け抜け、迫ってくる敵に対し突っ込んでいったからだった。


「シュウ君!」

「お前らは俺が殺す俺が殺す!」


なんだ、どうしたんだよ!


「シュウくうぅん!」

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