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この星の記憶  作者: 神常神


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15/18

前回の命

「お前は馬鹿な奴だあああああ!」


奴は両腕に飛空車に向け構えた。


「ふみゃは構えなくてもチャージできんだよおお!あの車をぶっ飛ばしてやるうう!」


奴の言葉は、僕を焦らすには充分だった。

今回はまだ飛空車を破壊されていない。

つまり最終的な撤退が、現実味があるということだ。

仮にこの町の中の敵を全滅させれても、敵の増援や助けが来ないなどの展開を考慮したら、そもそも飛空車が命綱なのは明白。

ここまでどれだけ繋いできたと思ってるんだ!

それだけは阻止しなければならない!

僕は一気に距離を詰めつつ、銃で奴の両腕を数発撃ち抜く。

そのまま蹴りを入れ奴を壁に追いやり、銃で足から蜂の巣にしていく。

せっかくここまできたんだ!

同じことをなぞるように!


「おみゃえは、ふみゃの体より青いな」

「なにっ?」

「ふみゃはチャージなんてしてみゃいよバーカ」


奴は僕が体を壊し切るタイミングを見計らい、(あざけ)りを含んだセリフを吐いた。

飛び散った破片が今度は壁や床をつたい、四方八方に動いていく。

しまった!

……まさか、まさかこれは!


「逃げる気か!」


その予感は的中したようで、奴はその後僕らの前で蘇生することはなかった。

もちろん逃げる破片を更に撃ったが、破片がさらに細かい破片になるだけで、まるで効果は無かった。


「アイツはどこいった?」


スラリムの開けた穴を覗く感じで、シュウ君が上から声をかけてきた。


「ごめん、逃した」

「マジか?」

「ごめん。せっかく作戦を立てたのに」


そう、一度やられたからこそ立てれた作戦。

正直この後のことが何も考えられない。

同じ行動や言動をなぞる作業なんて、何度もしたくない!

すごい疲れるんだ、これは……。

そもそも、これ以上死にたくない。


「まぁ、しょうがないだろ。それより俺を迎えにきてくれ。こっからじゃ降りられない」

「分かった」


僕はひとっ飛びで、シュウ君の居る階の手すりに手をかけよじ登る。


「やっぱすごいな」

「そう?」

「と言うか、冷静に考えると、お前ここから飛べって言ってんだよな」

「まぁ、そうなるね」

「無理じゃね?」

「大丈夫だと思う。衝撃は僕と、奴の衝撃を逃しそうな体が抑えてくれると思うから。多分」

「多分じゃねぇよ!」


スラリムの体は、かなりプルルンとしていたからいけると思うんだけどな。


「それより、上の敵はどうなったかな?」

「そう言えば、なんか死体が降ってきてたな。あの二人がやってくれたのか?」

「うん。さっきから静かだし、敵の姿もここからじゃもう確認できない。とりあえず飛空車の近くに戻ろう。アレがないと敵を倒しても帰れないよ」

「ああ、そうだな。だけど、ひとつ聞いていいか?」

「ん?」

「何で奴の行動をこんなに予測できたんだ?」

「それは未来を―」

「じゃあ何で逃した?」


僕は言葉に詰まった。

戦いの最中、僕はほとんど攻撃のダメージを最小限にしていた。

落下するのだって、思いついた作戦のための演出で、今回はシュウ君を優しく投げ入れたし、僕自身は受け身も取れた。

これだけ細かくやっていながら逃した。

まて、これって見方によったら、見逃したと思われてもおかしくないないんじゃないか?

もしシュウ君まで僕を疑い出したら……。

僕が黙っているとシュウ君は急に、皺の寄った眉間にデコピンをかましてきた。


「イタッ」

「まぁ、いいや。お前の言った通り敵はいたし、作戦も途中までは上手くいってたってことだもんな」

「シュウ君」

「俺はお前が敵だなんて思わない。きっと俺には説明しずらい能力なんだろ?ん?」


彼は笑顔で小首をかしげる。

ああ。この人は。


「ほら、早く俺を抱えろ。降りるぞ」

「うん」






飛空車の近くに立っていた僕たちの元に、カイルさんとブーシ君が合流した。


「もう終わったんですか?」

「ああ」

「何で天井があるのに、アイツらは現れたんだ?」

「あいつら、丁寧に部屋のドアを開けて出てきていたぞ」

「は?」


シュウ君と声がハモった。


「すごくシュールな光景だったな」


そりゃ確かにシュールだ。


「さて、一時は難を逃れた形だが。α、俺はまだお前を信じれることはできない」

「おいお前―」


掴みかかろうとするシュウ君をブーシ君が手で制す。


「だが、これも俺の勘だが、敵ではないとも今は思う。ただしやはりお前には違和感を何か感じる。何と言うか事前の資料やイメージが、今のお前の戦闘や先程の言動とそぐわない。しかしこれは俺の感性の話だ」


そう言った彼は握手を求めてくる。


「さっきの言動はお前を侮辱する行為だった。すまない」

「いや、僕のほうこそ、無茶苦茶な言い方だったと思います」


いざこうして謝られると、なんか胸がくすぐったい。


「そういえば何で二人は上にいたんだ?」

「とりあえず戦況を見るためだ。たまたま上に敵が出てきた時には驚いたがな。α、お前はあとどこまで見えてる?」


う。


「ごめんなさい……ここから先は分かりません」

「そうか?何か条件があるのか?」

「多分……もしかしたら寝ることが条件かも知れません」


和解の握手をした直後に嘘をつくのは、少しくるものがある。

しかし死んで過去に戻ってやり直してる、とは言えない以上しょうがない。


「なるほどな。まぁ今はそのことについてはいいか。それよりこれからどうするかだ」

「あの、カイルさん」

「何だ?」

「バリアが張れるなら、バリアを張ったまま走らせられないんですか?」


素朴な疑問を彼に投げかける。


「出来なくはない。が、飛行高度は低くなりスピードも遅くなる。だから張りながらの運用は短距離に限られる。エネルギーもかかるしな。現状ではその行動はよろしくないだろう」

「なるほど」


まぁ、張りながら飛行できるならとっくにやってるか。


「しかもさっきの攻撃でエネルギーはかなり消耗した。エネルギーをチャージしなければ、普通にここから帰ることもできないだろう」

「そんなっ」

「そのエネルギーってのは、何か特殊なものなのか?」


シュウ君が問いかける。


「いや、一般的な車両と同じく電力で動いている」

「なら、この町にも()()()()ぐらいあるんじゃないか?そこに行けば」

「いや、仮にあったとしても、この町への電力供給は今はしていない」

「なら(たくわ)えらてる分とかは」


僕も考えを発言する。

確か()()()()()()()()()()()()()には、車両や機械類に電力を、一気に供給できるように、ある程度電力が蓄えられていたはず。


「……それがどれだけ残っているかか……。ブーシ、この町のエネスタはどこにある?」

「二箇所。ここの近くと、町の正反対に」


カイルさんは少し俯き、顎に手を添える。


「そもそもエネスタ自体が壊されている可能性もある。今は、無駄骨になるようなことは、避けなければならない、が……」

「我はこの町から、退避する時の景色を覚えている。ここに来るまでに、車内から少し確認できた感じでは、窓が割れていたり、ヒビの入っている建物や道路も見えた。ゴーストタウン特有の雰囲気のようなものも感じた。だが、同時に懐かしい景色でもあった」


僕ら三人を見渡しながら話していたブーシ君。今度はカイルさんの目を見ながら、さらに続ける。


「町の向こう側は分からないが、この付近なら、魔物も手を加えていないのではないかと。現にこの大きな建物すら、崩されていなかった」

「……」

「敵を撃退した今、動くなら今ではないか?」

「……ここからどれだけかかる?」

「10分ほど」


少しの沈黙の後、カイルさんは決断した。


「分かった。皆飛空車に乗り込め。エネスタを目指す。どのみちコイツを動かさないことには、帰れないしな」

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