嘘つき
下からあのブチグソを撃ち抜いてやった。
ざまぁみろ!
破片は自由に操れるんだよ!
自分の体だぜ!なあ!
「ふみゃふみゃふみゃふみゃー」
しかしもう無理だ。
限界だ。
残り65%から70%ぐらいか。
もうこのままじゃ、速く動くこともかなわない。
くそ!
本当に炎は相性が悪い。
くそ!くそ!
まぁいい。上の様子は気になるが、今は逃げるか。
「ん?」
そうだ。せめてあの車だけでも壊しておかないと、人形野郎にふみゃふみゃ嫌味を言われちまう。
両手を前に構え、特大の一発の準備に入ろうとした時、背後に何かが着地する音がした。
「もし、今までの全てが一度経験したものだとして、追い詰められたのも演出だとしたらどうしますか?」
その声に体ごと振り向くと、そこにいたのは、今撃ち抜いたはずのブチグソだった。
「なんでおみゃえがここにいやがる!」
「今言いましたよ」
「今ふみゃふみゃにしたはずだろう!」
「全て演出だって」
何だ?
体が震えてる?
バカな!
ふみゃが怖がってるってのかああああ!
「不思議ですか?でも僕は不思議じゃないです。一度は撃ち抜かれましたから」
何言ってる?
「だから今回は賭けたんです。あなたの罠が僕を目視してないことに。気づきませんか?僕がベストを着てないことに」
はあ?何言ってんだ?
「あなたが撃った理由は音ですよね。きっと。僕はあなたの破片の近くに思いっきりベストを投げただけです。僕の力だと結構響いたでしょ」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいんだよおおおおお!」
両手から細かく玉を発射する。
しかし素早い動きで全てかわされる。
だが奴は、右に左に避けるだけで距離を詰めてこない。
何だ?何で詰めてこない?
まだ奴の動きは目では追える。
だが体を欠損してるせいで、ふみゃは殴り合いじゃ絶対奴には勝てない。
奴もそれは分かっているはず。
なぜ来ない……は!
ふみゃは撃つのをやめた。
「どうしました?」
「おみゃえ、仲間を待ってるな?」
そうだ。
なにを焦ってるんだふみゃは。
コイツにはふみゃを直接倒す技が無い。
だからさっきの炎野郎か、上で戦ってる奴が来るのを待ってるんだ!
ん?
ちょっと待て。
そう言えば炎野郎はどこに行ったんだ?
てっきり下に一緒に落ちてると思ったんだが。
そう言えば……いないじゃないかあああ!
「おおい!あの炎野郎はとこいったみゃあ!?」
「あの炎野郎?はて?誰のことですか?」
棒立ちで顎に手をやり、考える素振りをするブチグソ。
「舐めてんじゃねぇぞてめええ!」
「ああ、もしかしてシュウ君のことですか?彼なら落下した時に、あそこの階に投げ入れましたよ。優しくね」
そう言って、向こう側の上の階の方を奴は指差す。
投げ入れましたよの後に、何か言っていたが小さくて聞き取れなかった。
奴の指先の方向を確認するが、炎野郎の姿は確認出来ない。
でももういい。
ふみゃも時間は稼げた。
「お前は馬鹿な奴だあああああ!」
車を両腕に向け構える。
「ふみゃは構えなくてもチャージできんだよおお!あの車をぶっ飛ばしてやるうう!」
ふみゃの言葉に反応した奴は、まんまと一気に距離を詰めてきた。
やっぱりな。やっぱり焦って距離を詰めてきた。
そうだよな!
車壊されたらヤバいもんな!
さあ、その勢いのままふみゃをバラバラにしろ!
蹴るなり殴るなり撃つなり好きにしろ!
そしたらおみゃえらのいない場所まで逃げてから、再生するからよおおおおお!
しかし奴は、ふみゃの横面の前まで距離を詰めてきて、何もしなかった。
「なっ」
「本当は、本当はチャージなんてしてないんですよね?」
「なんで―」
奴はふみゃの両腕を掴むと、凄い力で気をつけの姿勢をとらせてきた。
「実は僕も一つ嘘を吐いていました。さっき、今までの全てが一度経験したと言いましたが、ごめんなさい。本当は、今の場所まで二度経験してました」
何言ってんだ……。
「何言ってんだよおみゃえええええ!」
「そして今からは未体験。受け止めます!」
奴はそう言いながら、向き合った俺の体を少し持ち上げる。すると背中に重い衝撃が走った。
何だ!!
「よう、スライム。殺しに来たぜ」
背中に悪寒が走る。
「おみゃえ、まさかおみゃえ!」
「時間稼ぎはお互い様ってことです。僕はあなたが自ら撃ち抜いた穴の下に、あなたを止めておきたかった。彼がこちらに来るまでね」
バカなっ。
「墓穴を掘るって言うけどよ」
背中の奴が、背中に両手を置いてきたのを感じる。
「上に掘る奴は初めて見たぜ」
「やめ―」
一瞬で体が蒸発を始める。
「むぎゃああああああああああああ!」
背中の感覚が徐々に消え、腰、肩と炎がふみゃを襲っていく。
その間に体の50%が欠損したのだろう。
ふみゃの心臓が形となって、胸の部分に現れてしまった。
ヤバいヤバいヤバいいいいい!
しかしどれだけ焦り、足をばたつかせようとも、押さえられた力に抗うすべは無かった。
「むみゃああああああああああ!」
そして自分の体が炎で掘り進められ、心臓に着火したのを感じた。
何なんだよ……何なんだよコイツりゃ……はあ。こんな死に方ってみゃいぜ……。
押さえ付けていたはずの体が急に原型を失い、一気に液体になり溶けるように全て消え去った。
終わったのか?
「……アツ、アツアツっ」
「ああ大丈夫かっ」
奴が消えたため残り火を被ったが、僕に馬乗りの形になったシュウ君に払ってもらった。
その際、自分で払えないほど、腕がいうことをきかない状態になっているのに驚いた。
でもこっちはまだいい。筋肉の疲労だろうから。
それより指先が心配だ。
きっと相当爛れてる。
「なぁ、終わったのか?勝ったんだよな」
「うん」
「いよっしゃああああああああ!」
僕に覆い被さるようにして叫ぶ彼に、体の心配は後回しにしてもいいかなと思った。
そうだ、今は喜ぼう。
泥の奴はここには来ないから。
僕らは、勝ったんだ!
「やったあああああああああ!」




