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この星の記憶  作者: 神常神


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11/18

信じてくれ

「今すぐ自動操縦を切ってください!目的地はもう過ぎてる!」


いきなり声を荒げた僕に、3人はキョトンとしていた。


「早く!運転席を確認して!」


不審な顔をしながらも、カイルさんは運転席に向かってくれた。


「どうしたんだよ?」

「シュウ君!僕はっ―」


時を巻き戻ってる!

ハッ、言えない!

まるで首を絞められたかのように、口から言葉を出せない……。

そうだ、確か前回も言えなかった!


「おい、大丈―」

「α!いつからだ?」


ブーシくんの心配な声を遮り、カイルさんが声を荒げた。


「いつから異変に気づいたんだ!」


カイルさんはハンドルを握り、急降下を始めた。


「お前ら舌噛むなよ!」


ほぼ直角に降下する飛空車の中、僕は思考を巡らす。

どうする?思い出せ!考えろ!

最初は目的地が違うことに気づかず、()()よりもさらに奥の地域まで進み、飛空車を落とされて脱出後数時間で死亡。

二度目は引き返して、魔物の大群と鉢合わせてまた墜落。

前回は…………カイルさんに……。

ガタン!

地面に一度車体は擦られ、低空飛行に入った。


「お前らシートベルを外して、頭上の棚を開けろ」


目の前の町に向かって、運転する彼はそう言った。


「敵が周りにいる可能性がある」


どうする?

カイルさんは何故、僕を殺したんだ?

思い出すんだ。

ハシゴを降りた後、部屋の中へ肩を借りて案内された。

その後部屋の中の感想や、これからの事について会話をしたのを覚えている。

そして確か()()()()()()()()と言われ視線を誘導され、何を見て欲しいか分からなかった僕は、少し身を乗り出したんだ。

その時肩に回していた手を払いのけられ、バランスを崩した時に僕は刺されたんだ。

そう、()()()()

カイルさんはあんな剣、持っていなかったはず。

地下で手に入れた?

銃で殺さなかったのは音を出さないため?

でも殺す機会なんて、それまでも多々あったは―


「おい、大丈夫か?」

「はっ」


何もせず座っていた僕に、声をかけてきたのはブーシ君だった。


「顔色が悪いぞ」

「ほらみろ。αだって引き返した方がいいと思ってんだ」

「いや!」

「え?」

「それはダメだよ。絶対に……」

「αも俺の意見に賛成らしいぞ?」


僕は車がゼンに入るのを、窓越しに確認した。


「それにもう遅い。町中だ。覚悟を決めてくれ。俺が責任を持ってお前らを守る。命に替えても」


このカイルさんが僕を殺す?


「βには悪いが、故郷を取り返すチャンス。我はもう」


いや、ありえない。ないと信じたい。


「……俺はまだ死にたくないぞ」

「俺がお前らを死なせない。絶対に。α、お前も突っ立ってないで早く装備をつけろ」


僕は一旦彼の言葉に従い、ヘルメットとベストを装着しつつ思考を巡らせる。

もう時間がない。

まずはあの建物に、また車を止めさせるべきかどうかだ。

止めたらきっと、またあの化け物と戦う事になる。

だけど戦わなければ()()()生き残れない。

むしろ今なら、居場所を知っているこっちが有利なんじゃ?

ああ、時間がない。


「なあ、本当に大丈―」


僕はシュウ君の心配を遮り声を出す。


「みんな、これからあの建物の中にいる化け物の情報を教えるから聞いて」


僕のその言葉に、皆キョトンとした顔をする。


「なに―」

「分かってる。僕はカイルさんがあの建物に車を止めることも。そこに敵がいることも」


切り出したはいいものの、どうすれば、どうすれば信用してもらえる?

……そうか。これならどうだ?


「僕には少し先の未来が見える」


シュウ君、そんなに怪訝(けげん)そうに見ないでよ。


「嘘じゃないよ。さっき目的地を過ぎたのに気付いたのは偶然じゃない」


前を確認すると、建物は目前に迫っていた。


「だからカイルさんはそのまま、ビルのエントランスに侵入してください。思ってた通りに」


彼は僕の言葉の真偽を考えているのだろう、険しい顔つきをしながら前に向き直った。

頼む、信じてくれ!

そして思いは通じたようで、車はそのままエントランスに侵入して停車した。

よかった!ここからだ。

内心喜ぶ僕に対し彼は、運転席に座ったまま体を反身(はんみ)に向け、眉間に皺をつくりながら言ってきた。


「信じた。と言うよりこのまま走らせる気がなかったと言う方が正しいな。それより未来が見えるなら、どこまでどんな風に見える?」


今詳しく説明する時間はない。


「それよりも、少ししたら敵の攻撃が始まります。だから早く降りましょう」

「待て、俺はまだお前を信用していないぞ」


カイルさん!


「でもっ、車内でゆっくりはできない!敵は左側の5か6階の廊下から攻撃をしてくる。僕は見えた!」

「お前は本当にαか?」


な、何言ってんだ!


「それはどういう―」

「ほんの少しだ。ほんの少ししかお前とは行動していない。しかし俺の経験から、お前がさっきまでとは別人のように感じてならない」

「そんなっ」

「まずさっきまでお前は寝ていた。なのに急に叫んだかと思えば、目的地が過ぎていることを知っていた」

「それは―」

「未来が見えるなら、お前が俺に初めて会った時、あんなに驚いたりはしなかったはずだ。なあ、今俺はこう考えている」


そう言ったカイルさんはこちらに向かって歩いてきて、僕の目の前に立った。


「お前は俺の意見に同調するフリをして、この町にこの場所に、俺を誘導してたんじゃないかって」


なっ!


「何馬鹿なこと言ってんですか!なんで僕がそんなこと―」

「決まってる。お前が敵側なら俺を利用した方が都合がいいからだ」

「ちょっと待てよ。流石にそれは考え過ぎじゃないか?」


助け舟を出してくれたのはシュウ君。


「β、ブーシ。こいつがぼーっとしてたの見てたろ?」


カイルさんは振り返り2人に確認を取る。

2人はゆっくりと首を縦に振る。


「昔俺が戦った中に、仲間との連携にテレパシーを使う敵がいた」

「まさか、僕がそんなことするわけないでしょ!」

「なら証明して見せろ。お前が敵じゃないと」

「どうや―」

「俺は敵に背中を撃たせる気は―」


ドゴオオオオオォォォン!


轟音と共に車内が激しい揺れに襲われた。

あまりの揺れの激しさに、僕らは全員壁や床に叩きつけられる。


「いってえ」

「お前ら、大丈夫か?」

「ああ、なんとか」

「我も無事だ」

「僕も、大丈夫です」


一瞬何が起きたか理解できなかったが、敵の攻撃が始まったと僕はすぐに思い至る。


「ほら!攻撃が始まりました!僕のことを信じてください!」

「おい、随分嬉しそうだな?」


えっ?


「そんなこと」


言われて気づいたが、確かにそう見えるような感じで言った気もする。


「カイル。攻撃されたのは事実だろ?このままじゃ」

「確かにな」


シュウ君の言葉に同意したカイルさんは立ち上がる。すると意図せず僕を見下ろす形になった。


「だが俺はこうも考える。攻撃が始まったのはお前が疑われたから、誘導に失敗したからだと」

「いい加減にしろよカイル!」


シュウ君がカイルさんに突っかかり、壁まで押しやる。


「てめぇ、仲間を疑い過ぎだろ。さっきお前言ったよな。命に替えても守るって。このままだとお前のせいでみんな死ぬぞ」

「落ち着けよ。さっきバリアを起動させた。今ぐらいの攻撃なら、後2.3発は耐えられるだろう」


シュウ君を払い除けると、彼は僕を引っ張り立たせて言った。


「お前が敵を倒してこい」


僕は目を見開く。


「証明しろ。仲間であることを」

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