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「先輩!おはようございます」


「先輩、今日はいいお天気ですよ」


「先輩は何の授業を取るんですか?」


「サークルにはどれくらい顔を出すんですか?」


「普段は何をして過ごしているんですか?」


「今度、私と一緒にデートしましょう!」


「先輩、起きてますか?」


「昨日、一応お付き合いすることになった榊はるかです!」


「ブロックしていないですよね?」


自分でもどうかと思うが、わけもなく連絡したくなって鬼LINEしてしまった。


「おまえ、うるさい」

こっちを向いてあっかんべーする太ったうさぎのスタンプが送られてきた。


うるさいって言われたのに、憎たらしく見えるはずのスタンプが輝いて見えた。

先輩が使うスタンプ可愛いなあ。


新歓の時に、蒼介先輩と連絡先を交換したのだ。

秒でうざがられても、自分のスマホのなかに蒼介先輩の連絡先があることが嬉しい。携帯を抱きしめたくなってしまう。


「先輩のそのスタンプ可愛いです!」

と送ったのに既読無視だ。

これ…彼女なの?恋愛ってどうやってするの?と思いながらも、まず会って話す時間を作らなきゃなと思う。


とやきもきしていたらいつの間にか、蒼介先輩から送信取り消しメッセージが入っていた。

メッセージを見逃してしまった。なんて打ったんだろう。くそぉ、気になる。


この新歓週間だから、先輩がどこにいるのかは全然わかる。突撃あるのみだ。



全然LINEに返信がないので、毎日開催されている新歓の飲み会に1週間連続出席したら、居酒屋の個室に呼び出されて怒られた。


「真顔ちゃん、ちょっとしつこいんじゃないー?」

あくまで柔らかい口調で言われたが先輩の目が笑っていない。


「でもちゃんと、節度は保っているつもりです」


「いやいや。君の辞書の節度の定義を聞きたい」


「別に毎日話かけたりしているわけでもないじゃないですか。なんなら聖先輩とのほうが話してますよ」


「でも真顔で俺のこと話しかけもせずに見つめるじゃん?ちゃんと邪魔にならない程度に話しかけてくれたら俺だって相手するのに?」


蒼介先輩がかがんでずいと顔を近づけてきた。まるで見てくださいといわんばかりに。

その近さに思わずたじろぐ。


「…でもなんて話しかけ…れば、わかんないです、先輩、返事してくれないし…」

蒼介先輩の目をそらして、後ろに下がって言葉尻がすぼまっていく。

だから目の奥の濁りにも気付けなかった。


「ふーん、逃げちゃうんだ。もしかしてわかりにくいけど照れてる?」


「…」


どうやら私は自分が押す分には問題ないけれど、迫られると何も言えなくなるようだ。

後ろ手に握りしめた手が壁にぶつかる。もう逃げる場所はない。


「ふーん、かわいいところあるじゃん」

口角があがってにやっと悪い顔した蒼介先輩が耳元で囁いた。タバコくさいのも感じとれてしまうその距離に勝手に体温が上がっていく。


「じゃあ!!かわいいって思うんだったら!!!LINEに返事するかデートするか私と時間作ってくださいよ!!!」


変わりかけた空気を自ら大声でぶち壊しにかかった。

蒼介先輩がくははっと笑った。これは本物の笑顔だ。かわいい。


「だって真顔ちゃん、勢いすごいんだもん。普通、なんも返せないよ。今週末空いてるから二人で出かける?」


「え、それってデートってことですか?」


「そうなんじゃない?」

また先輩は悪い笑顔に戻っている。


蒼介先輩と接すると心が動揺しっぱなしだ。

突然の約束になんて言っていいのかわからなくて口をはくはくさせた。

私が何か言う前に、個室から蒼介先輩は去っていった。

それでも、体の熱は冷めないままだった。


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