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新歓の会場は大学の最寄りの小汚い居酒屋だった。

飲みサーらしく、座敷を貸し切ってサークル部員と新入生が入り組むような席の配置ながら、食卓には生ビールとチェイサーがすでに置かれていた。

新入生は、まだ未成年なんだけどなあ。

さすが遊んでいるサークルらしく、先輩方は美男美女ばかりだ。


その雰囲気に圧倒されながら、紗季とともに端の方に座った。

蒼介さんの顔がちょうど対角線上に見える位置だ。


「今日は来てくれてありがとうね~」

ウサギ顔の優しそうなイケメンに話しかけられた。

笑うと目がなくなるのがなんとも可愛い顔立ちだ。


「俺は、早川聖だよ。二人の名前はなんていうの?」

なんと、彼女がいるのに遊んでいるという噂の聖先輩ではないですか。

お互い自己紹介をしてさりげなく会話をリードしてくれるところが、さすがだなと思った。


「なんでこのサークルの新歓に来てくれたの?」


「あ、気になっている人がいて…」

横の紗季が無難な言葉を探しているようだったが、私は恥じらいもなく言い放った。


「気になっている人?!え、誰?」

聖先輩が面白いことを聞いたと目を輝かせた。


「あの、代表の蒼介先輩に一目ぼれして…」


「蒼介?!やば、おもしろ。あいつはねぇ~顔はいいからねえ、顔は。結構拗らせてるけど。」


「えっそれってどういう?」


「まっ、でも一女ではるかちゃんみたいに可愛かったらだいじょーぶ。応援しているね、いつでも力になるし」

聖先輩が肩叩いてウィンクしてきた。面白がられているような気しかしない。


「はい、ここでフガール代表の乾杯の挨拶があります」


副代表はどうやら欠席のようでガタイの良い…おそらく日向先輩が声をかける。

思わず耳を澄ませて体も改まってしまう。


蒼介先輩が立ち上がり、グラスを手に取った。


「今日は来てくれてありがとう。このサークルは本当に楽しいことしかないし、みんながこのサークルに入ってくれたら嬉しいけど、そうじゃなくてもかんぱーい!」

普段は見目麗しいキリっとした顔立ちなのに笑顔だと可愛くて愛嬌があるなあなんてこっそり思いながら乾杯した。


代表は全員の新入生に挨拶するように忙しく食卓を回っていて、対に私の食卓に順番が回ってきた。

蒼介先輩の視界にはじめて私が入る。


「今日はありがとう。乾杯」

乾杯のためにグラスをくっつけるだけなのに、その行為にひどく緊張してしまう。蒼介先輩の目を見た瞬間、柔らかく笑みが浮かぶ。それが外向き用の笑顔だろうとまるで全て吸い込んでしまうような瞳に、自分と彼しかいないかのように錯覚した。


「あの、好きです!一目ぼれしました!!」


決して酔っていたわけではない。ただもう、その顔を見ているだけじゃなくて何か会話をしたいと思ったのだ。隣で紗季が頭を抱えているのが確認できた。聖先輩も驚いていたようだった。


「あははー真顔うけるー、蒼介、二日前に彼女と別れて今ちょうどフリーじゃん。付き合っちゃいなよ」


どこからか、同級生らしき男の野次が飛ぶ。


「じゃあ、俺と付き合う?」


いつの間にか、隣によってきてどこか試すような、品定めするような目で蒼介先輩が私を見てきた。


「え、でも、蒼介先輩、私のこと知らないし、好きじゃないですよね?」


「…うん。でもこれから好きになるかもしれないじゃん。ダメ?」


先輩のほうが、背が高いはずなのに、上目遣いで大きい目をぱちぱち瞬かせながら問いかけてくる。

…あざと!!!!でも好き!!!


「え…いいんですか…?」


気づいたらそんな言葉口に出ていた。私は好きな人同士が付き合うべきという清き倫理観の持ち主なのだけれど、好きな人と付き合いたい!!!その気持ちが頭の中を占めていて何も考えられなかった。


「うん。よろしくね?真顔ちゃん」


蒼介先輩が首をかしげながら私の顔を覗き込んで言い放った。その破壊力は言葉にはできなかった。顔には出ていないようだったけど。



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