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「はるかは昔から考えなしなところあるから、考えなおした方がいいって!!」
あれから一目ぼれした経緯を説明したものの、紗季はさりげなくディスってくる。
「もう決めたんだもん。恋に落ちたら行動あるのみでしょ?」
「いや…真顔で言われても。そもそも本当に恋なの?」
私たちは女子校で育ったため、恋愛経験は皆無だった。恋愛ドラマや少女漫画を見てもどこか他人事のように思えていたのだが、いまならあのヒロインたちのはやる気持ちが抑えられないのもわかる。
「うん。あの瞬間、好きだと思ったんだよね」
「いや表情筋動いていないけど?!」
「これは生まれつきだから仕方ない。」
私はあまり表情が豊かな方ではないのだ。そのせいで冷静やクールにみられることも多いが、中身は真逆なので驚かれる。
「とにかく、いい噂聞かないんだよ、悪のF4とか言われてるんだよ!」
「F4だっていじめしていたから悪だよねえ」
「そういうことじゃなくて!」
紗季が説明するには、件のテニサーには、女たらしで有名な4人がいるらしい。
サークルの副代表、神楽坂蓮範。女性と見間違うほどの中性的な美しさがあり、病弱であまりサークルに顔を見せない。留年も何回かしているとのこと。レアキャラだが、その耽美的な魅力に沼ったが最後、全員メンヘラ化するという悪魔のような存在だ。
サークルの広報、大西日向。ガタイが良くまるでマンガから飛び出してきたスタイルと男らしい顔立ちに、犬のような社交的な性格で誰に対しても明るく太陽のような存在。だが、博愛主義で去る者は追わず来る者は拒まず。サークルの女子は全員抱かれたことがあるとかないとか。
サークルの会計、早川聖。うさぎのような澄んだ顔立ちで、紳士で優しい性格だが、長年付き合っている彼女がいるというのに、同じ大学にいないことをいいことに浮気を繰り返している。
そして、サークル代表 南八幡蒼介。西洋の血が入っているのかと思うぐらい濃い顔立ちだが、愛嬌もありかわいさも存在する奇跡のイケメンだ。私の好きな人だが、紗季曰く女の子をとっかえひっかえする、一か月ごとには必ず恋人が変わっていて女泣かせという遊び人だ。
「…絶対に譲らないっていうなら、せめて新歓は一緒に行かせて。本当、くれぐれも気を付けてよ。」
この時の紗季の警告を、私の恋に恋する気持ちが全力でスルーしたのだった。