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私温泉  作者: 青空文学
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私という人間

 財布にはお金が入っているか? コンセントは抜いたか? 鍵はかけたか? 脱衣場と自室を何度も行き来し、ようやく私は湯に浸かることができた。体中に巣食っていた寒の気が、散り散りに去っていくのが感じられる。

 私は温泉が好きだ。自然の内より湧き出ずる湯と一つになることで、私と言う存在から逃れることができる。

 加水や加温のされていない良質な温泉。無味無臭な単純泉は硫黄泉や酸性泉のような温泉風情に欠けるものの、その反面で湯あたりせずに長湯できる。

 が、ふと混浴だと言うことを思い出してしまい、とたんに落ち着かなくなってくる。さっきの女性客から混浴目当ての客だと思われているのだろうか、などといらぬ考えを巡らせてしまうのだ。

 いや、それどころではないな。ネットの掲示板には、この宿では強盗殺人も発生しているなどと書き込まれていた。年季の入った木造建築は趣があるとも言えるが、気味が悪いとも言える。女は、私を恐れて部屋から出てこなくなってしまうのではないだろうか。

 実際何を言われたわけでもないのに、自意識過剰で疑心暗鬼に囚われてばかり。人里離れた山奥へ来たところで、私という人間から逃れることはできなかった。

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