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建国祭②-2

皇都は広い。

皇都の門から皇城まで馬車で来ようとすると検問やらなんやらにかかる時間と、単純に距離があるという点で時間がかかる。

多少は猶予を持って準備できるだろうと思っていたが、使用人の慌てぶりを見るとそうでは無いらしい。

ここは異世界。魔法があり"特異"というものまである。

馬車で来るとは限らない…ってことかな?


建国祭ということもあって、主要貴族4家の当主は直ぐに集まることが出来た。それぞれが各家の礼服を着て面会に応じるということは最上級の敬意を払うということだ。そしてどこか緊張の面持ちをそれぞれが見せていた。


「でも~今まで誘っても来なかったじゃないですか~なんで今更なんですかねぇ~」

と、ウィリディス侯爵。

それに「知らん」と一言カエレウム侯爵。


「でもよ?俺らよりもアルガスの方がそこら辺詳しいんじゃねぇの?どうなんだ"白の一族の当主代理様"?まぁ知らねぇかそんなこと」

軽い喋りで煽り出すのは第1騎士団長を務めるループス侯爵だった。騎士団長だけあり胸板の厚い体に彫りが深く日焼けした肌。右頬には大きな切り傷があるが、見目はさすが侯爵家である。深紅の赤い髪は今にも燃えだしそうだ。"戦場の赤獅子"と名高いのも納得がいく。腰には大振りの剣を備え、銀色の甲冑はカチャカチャと音を立てる。


「今の発言は私に対する侮辱か?ループス侯爵。確かに私は爵位を持ち合わせていないが正式な"当主代理"だということをお忘れなく。それにアルガス公爵家は確かに少しアーテルとの交流はあるが何も知らない。」

アルガス公爵家当主代理兼王室騎士団長のアルガス・グレイシア・ヒエムスである。アルガス家はオーラム皇国の最北端に領地を構えている。数年前の戦争により現当主ソムナスは長い眠りについた。次期当主を選ばぬまま、文字通り長い眠りについたため継承が出来ない現状が続いている。爵位の継承は当主本人の意思表示が、死亡の場合を除いて必要になるためだ。

そしてヒエムスは長男でなく次男である。それは長男ニクスは体が弱く務めることが出来ないため次男が代理を務めているのであった。


「お二人共。王の前であることを忘れないように」

「そうですよ~」

「「御無礼を働きました」」


2人は我に返り王に謝罪する。


「もうよい。アーテルのことは考えても分からんのだ。そして言い争ってもな…気が重い((ボソッ」


父上…心の声が漏れてます……。


『来るぞ。上だ』


精霊王の一言で場が固まった。

上。上はもちろん天井だ。そんなことはわかっている。

ということはーーーーーーーーー


「誰かの"特異"もしくは魔法で転移が可能ということ…か…」

イニ兄様が呟く言葉にその場の誰もが同じことを思ったと思う。


厄介すぎる。


決して高くない天井の何も無い空間からビリビリと魔力が発生する。やがて空間はガラスのようにバリバリと剥がれ出す。強すぎる魔力とその"概念"を超えた光景に。

驚きを隠せないことではあったが誰もうろたえるような素振りを見せなかったのはさすがと言ったところだ。

そして次の瞬間息が止まる。



怖いほどの美しい一族に息をすることを忘れた。


輝く黒髪は艶やかでこの場の誰よりも威圧を放つ美しい長身の男性が床に降り立つ。


その後ろにはその男性と瓜二つの顔が。

しかし少し幼いように感じる。どこか鋭い目の視線の先は確かにこちらを向いているはずなのに、なぜか見られていると感じることがない。


横には目を見張るほどの美の権化と言わんばかりの中性的な顔立ちに長髪の黒い髪を低い位置でひとつにまとめた人が立っていた。黒縁のメガネの先には深く濃い青さを持つ宝石のような瞳が輝く。


最後に降り立ったのは姿・形がよく似た僕よりも恐らく小さい子供が降り立つ。おそらく男女の双子で、女の子は黒く品のある奥ゆかしいドレスに赤黒い大きなリボンで2つ結びをしている。こぼれ落ちそうな大きな目には魅了される赤い宝石と透き通るような緑色の宝石が入っているかのようなオッドアイ。

男の子の方は彼女の手を取りエスコートをしている。

女の子よりも少しばかり背が高く、オールバックの黒い髪は美しい顔を全面に強調している。

彼、彼女は向き合ったら鏡合わせのようにそっくりである。


最初に降りたった男性ーーーーーアーテル公爵が指をパチンと鳴らすと、空間は何も無かったかのように元に戻った。



「我らはアーテル公爵家。時間に間に合わなかったことを謝罪する」


そう言い放つと彼らは綺麗に礼をした。

洗礼された動作に、優雅なのに隙など一切ない。

王は少し硬直していたが我に返り構わないと一言告げる。


「本日こちらに来たのはあることを助言しに来たからだ」


公爵家は名乗ることはせずに本題を切り出した。

本来ならば不敬でしかないが誰も咎められない。




「この国の崩壊についての助言を」

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