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建国祭②

建国祭2日目。


初日にパーティーに参加した僕は母上の「参加しろ」の一言をなぎ倒して自室にいた。そもそも前世の記憶がある僕はそんな煌びやかなことには慣れていないし、教育を受けたとしてもどうしても異世界感が拭えなくて好きになれない。


そして、前世で異世界ものが好きだった僕はこの世界の家族は少々特殊だと思った。

まず仲が良すぎる。

え?普通こーゆー王族・皇族とかって、王位継承権が~とか殺されそう~とか?あと、親子の仲が良くないとか…なんて思っていたが、僕たちは違った。


イニ兄様は第1位皇位継承権を持っているが23歳なのに婚約者が居ない。本人も態度的に皇位を継ぎたくないのだと思う。穏やかな兄様は貴族の水面下でのやり取りがあまり好きではないらしい。


ウィル姉様は物語に出てくるような気品溢れる皇族そのものだが、家族には言いたいことをしっかりと言ってくる。それに好んだ人としか婚約はしないというし、何よりも皇女なのに剣の腕が騎士顔負けだそうで…。

エテル兄様は婚約者こそいらっしゃるが本人曰く「王位?そんなめんどくさい」との事。

それを父上と母上の前で言うから困ったものだ。


現皇王である僕の父上は貴族や民の前では威厳がある王であるだが、皮を剥がせば普通のイケメン父親である。ちなみに父上と母上は恋愛結婚だった。また、隠し子が~とかは一切ない。これは母上の"星占い"の結果だから間違えない。なんて平和なんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2日目の建国祭の夜、晩餐は家族揃ってという母上の言いつけにより毎日家族と会話をしながら食事をする。その際、途中から使用人を外に出すこともこの家族ならではなのかもしれない。

愚痴でもなんでも心置き無く言えるということだ。

(ちなみに皇宮全域にはある人物によって盗聴などの魔法は"0"とされている)


「イニは婚約者居ない、ウィルも居ない、エテルは皇位などいらない…はぁ…隣国の王族が聞いたら卒倒するぞ…父は頭が痛い」


「あなたたち!!!もうオムニスを困らせないでちょうだい!わたくしも心配で心配で…」


母上も僕からしたら美人な小言の多い母親そのものだ。

そんな具合に平和な家族なのである。

いやでもある意味国の危機には変わりない。

次期皇王がこのままではいなくなるのだから。建国以来、妃がいないまま皇王になった皇族など存在しない。このままだと兄様がファーストペンギンとなる。


「あ!!ファーブラ!私のとこに人参入れたでしょ!!」


「げっ…ウィル姉様…す、するどい」


「じゃぁファーブラのトマト貰ってあげるよ」


「あ!エテル兄様!!僕の好物なのに!!」


「こらこら…私のあげるから」


「イニ兄様っっっ好き!!!」


ぴーぎゃーぴーぎゃー………

これが日常である。華麗で威厳のある皇族なんて実はこんなものだ。他の貴族が見たら幻滅するよ間違えなく。

父上と母上はますますため息をついた。

それでも顔がいいと絵になるのはなぜ?


『主らはほんとに争いという文字は無いのか』


そう言ってどことなく現れたのは精霊王であった。

精霊王は頭に直接会話を入れてくるため不思議な感覚だ。

いわゆるテレパシーというやつである。


「精霊王からも言ってやってくれよ!!私とて困ってるのだよ」


と、情けないことに精霊王に懇願する父上。


『私が言ったところで何一つ変わらん。故、人間のことは人間で処理するのが1番だ』


正論で返される。ほんとにこれは皇王か?


『そんなことを言いに来たのでは無い。奴らが来るぞ。皇都の結界を異質なものが通った感覚があった』


その瞬間、場に戦慄が走った。


「ついに…か。何人いる?」


『当主の他3人だな』


「まぁ…護衛では無いでしょうね。恐らくはアーテル公爵家のご子息方かと」


奴ら。黒の一族ことアーテル公爵家のことだと悟った。

先程までふざけていた兄様方と姉様も真剣な面持ちになる。

会ったことの無い人に怯えるのも不思議な感覚だ。


「しかしなぜ当主だけではなく子息もこちらに来るのかが分からない。意図が見えないとこが怖いところだな…まぁあの一族に関しては考えても無駄だからな。至急使用人に応接間を用意させ、王室騎士団長を呼ぶ。お前たちも参加しなさい」


「「「「御意」」」」


こうして僕たち皇族は初めてアーテル公爵家一同に面会するのだった。


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