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退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたりする話  作者: 菊池 快晴@書籍化決定


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24話 普通のおじさん、引率のおじさん

盛大な御見送り――なんてものはもちろんなかった。


 静かにこっそり、日が落ちる前にと思っていたが、夕方頃に出発した。

 異世界で困るのは夜だ。


 元の世界と違って街灯があるわけじゃない。

 ビルの光がどれだけありがたいか身に染みる。


 けれども、天然の月夜と星空は圧倒的な光りを放つ。


 今日も幸い綺麗に出ていたので、何とか夜でも歩くことができる。

 自然に感謝だ。


「ククリ、本当にいいのか?」

「はい、こう見えてエルフは力持ちなので」

「…………」


 夜も遅いことあってエヴァを担いで歩こうとしたが、ククリがその役目を申し出た。

 何かあった時に咄嗟に動けるのはシガ様なので、と言われたのだが、なんだか申し訳ない。


 それと夜なので見えづらいが、私とククリの装備が随分と上物になった。


 ただチラリと見ただけではわかりづらいものをあえて選んだ。

 煌びやか装備は華やかで威圧感もあるが、私とククリだと逆に狙われてしまうかもしれないと気付いた。


 ただし、剣はかなりの業物で、試し切りしてみたが、今までの物より随分と切れ味がよかった。


 Nyamazonに投げ入れてみたいが、返品は効かないので出来ない。

 いつかやってみたいことの一つだ。


 私たちの目的は、ヴェレニ国に住むロベルトさんに彼女エヴァを引き渡すこと。

 その国は、亜人種、所謂人間族ではない種族たちのことを指すが、国全体が寛容で、様々な人たちが住んでいるという。


 そして後から教えてもらったのだが、非常に強い魔力を持っているエヴァだが、ただ魔力が強いだけではないらしい。

 私も聞いて驚いたが、とても稀有な魔法が使える。


 実際にこの目で見るまで、にわかには信じられないが……。


「エヴァちゃん、後で鮭おにぎり食べようね」

「……しゃけ?」

「そう、美味しいんだよ」

「どんな味?」

「ええとね、ええと、一口食べただけで、凄く、おいちいいいいいいってなるの。あと、ふわふわふわ~って」


 そんなことを考えていると二人の会話が聞こえてきた。


 しかしククリ……そうか何でもできると思っていたが、食レポは下手なんだな……。

 その言い方では、エヴァには何も伝わらな――。


「おいしそう……食べたい」


 あれ? どうやらわかるらしい。

 食べたいってなるのか。


「だったら、後でシガ様に頼んでみようね。ねっ、シガ様?」

「はは、そうだな。だが、もう少し進んでからだ。先は長いぞ」


 サイクロプス討伐の時のおかげで道はある程度わかっている。

 このあたりは本来魔物もいないらしいので、今日は大丈夫だろう。


 ――と、思っていたが、数時間後。


「グルウウウウウウ!」

「――消えろ」


 魔狼の似た魔物が現れた。

 一撃で倒せるので強いわけではないが、寝込みを襲われると面倒だ。

 それより、情報と違う。


 私と同じことを思っていたのか、ククリも考え込んでいた。


「シガ様、もしかしたらですが」

「どうした?」

「魔物は本能で魔力を求めます。エヴァちゃんの強い魔力を感じ取っているのではないのでしょうか?」


 なるほど……その可能性があるのか。

 初めて聞くが、理にはかなっている。

 魔物は人間を食べるわけでもないのに、なぜか人を襲う。

 サイクロプスもそうだ。魔力を感じ取った相手を狙う、というのが組み込まれていればありえるだろう。


 しかし、そうなると大変だな。

 これから魔物が多い地域に到達すると、より危険度が増すということか。


 ……思っていたより、大変な旅になるのかもしれない。


「ごめんなさい」


 そのとき、エヴァは申し訳なさそうな表情で謝罪した。

 今にも泣き出しそうな顔だ。


 これは……私たちが悪いな。


 足を止め、エヴァに顔を向ける。

 そして、頭を撫でた。


「すまない、確かにこの話し方だと君に冷たい言い方だったな。そういうわけじゃなく、予め想定しておくことで、安全を確保しようとしてたんだ。それに――君のことは私が必ず守る」

「……ほんと?」

「ああ、ククリも私も強いからね」

「……うん」


 ククリも、ごめんね、と謝っていた。

 そして私は、ククリに君のことを伝えていいかと訊ねた。

 もちろん、頷いてくれた。


「私たちも辛いことがあったんだ。もちろん、エヴァの事もわかってる。だけど、これからの旅で少しでも仲良くなれたらと思う」

「私も……なりたい」


 そう言いながら、エヴァはほのかに笑みを浮かべた。


「きっとなれる。それに、君は笑顔が似合うな」

「似合う?」

「ああ、とっても可愛いぞ」

「それにエヴァちゃん、私と耳、おそろだね」

「同じ……えへ、ありがとう」


 ああ、良かった。

 彼女は、笑えるんだ。


「さて、少し早いがこのあたりで野営しよう。鮭おにぎりはもちろんだが、今日はチョコレートも食べよう。ククリを虫歯にさせたくないので今まで出さなかったが、悪魔のような美味しさなんだ」

「チョコレート!? シガ様、なんですかその甘美な名前は!?」

「ああでも、鮭おにぎりと合うか……な?」


 おにぎりとチョコレート……。

 そのとき、エヴァが私の服の袖を掴んだ。


「わたし、二人のことなんて呼んだらいい?」


 おじさん、とは自分で言うのは恥ずかしい。


「私はシガ、彼女はククリ、好きに呼んでいいんだよ」


 おじさん、おじさんはなしだ。


「ええと……じゃあ、シガとククって、呼んでいい?」

「ははっ、いいじゃないか」

「はい、エヴァちゃんっ」


 護衛任務、重要な任務だが、道中ずっと気を張っている必要はない。


 私は強い。その自信をしっかりと持ち、油断せずに楽しんでいこう。


「それじゃあ、初日のパーティだ」


 それから私たちは、キャンプを設営してご飯を食べた。


 鮭おにぎりはエヴァも気に入ってくれたのだが、やっぱりチョコレートのほうが好きらしい。


 ただ一番驚いたのは――。


「シガ様、鮭おにぎりとチョコレート、抜群に合います! 美味しいです!」

「お、おお、そうか。良かった」


 鮭おにぎりにチョコレートを具に詰め込んでいたククリだ。


 ……ま、まあ、本人が満足ならいいだろう。

【大事なお願いです】


仕事をしながら合間で執筆をしています!

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