始まり①
「んで?この竜車はなにを運んでるんだ?」
「ん?ああ、商人とその商品だな。てか、乗ってたお前のほうが詳しいんじゃないか?」
「いやそれが、なんでこの竜車に乗ってたのか分からないんだ」
「ふむ、訳ありか。まあいい、お前ほどの戦士ならいろいろあるんだろうよ。深くは聞かない」
「いやほんとに...や、まてよ...」
俺はいったんレオンに断りを入れて竜車に乗り込む。
「なあおっさん、俺、いつからこの竜車に乗ってた?」
俺が質問を投げかけたのはさっき俺を起こした商人だ。
「...いや、わからん。よく考えたらお前はいつの間にこの竜車に乗り込んだんだ?」
「すまん。俺にもわからん。勝手に乗った借りはさっき命救ったてことで勘弁してくれ」
「あ、ああ。それで構わない」
(こんな謎の多い不気味な奴には関わりすぎないに限る)
商人はそう判断した。
「街まではきっちり護衛するから大船に乗ったつもりでいてくれ」
「あ、ああ」
そうして話を終え、俺は護衛の戦士たちの中に混じった。
それから、散発的に襲ってくるゴブリンを狩りつつ、特に問題もなく街までたどり着いた。
「いや、ホントすごいなお前...」
「?、なにが?」
「いや、いい。俺から言えるのはお前がいなけりゃ俺たちの命はなかったってことだ。正直護衛の適正料金がはらえそうにねえ」
「それならいくつか質問していいか?情報料はなしで。それでどうだ?」
「ああ。それでいいなら助かる。話せることなら何でも教えるぞ」
「これから行く街はどんな所だ?」
「グリンフィールド伯領の主都だな」
「主都...そんなところの街道にこんなにモンスターって出るもんなのか」
「普通はあり得ないな、異常事態だ」
「その首都は何か身分証は必要か?」
「その辺は俺が保証する」
「ありがと、恩に着るよ。とはいえ身分証は必要だよな?どうすればいいか分かるか?」
「それなら冒険者ギルドに行けばいい。俺もゴブリンの異常発生について報告するつもりだったし、ついでに連れてってやるよ」
「何から何まで助かる。お、あれが主都か?」
「だな。ああ、無事にたどり着けて良かった」
「お疲れさま」
「まだ少し距離がある。油断は禁物だ」
「あー、すまん」
「おまえらっ!!トーマがいるからって気を抜くなよ!!」
「「「「応!!」」」」
そうそう、俺は取りあえずトーマと名乗ることにしたのだ。