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32歳男ニート 癌になる  作者: 十三
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 今朝も曇り

 朝ドラ、15分で何か月進んだ?

 結構大事な時期だよなぁ、大学卒業と航空学校入試って

 友人とか同期生、サークルの仲間の進路を知って影響を受けて、本当にこの道に進むべきなのかとか悩んだりしない?

 ドラマだから仕方ない?

 入試に失敗して、1年間葛藤を抱えながらもなんとか初志貫徹して再度入試に挑む姿とか見たかったような

 ドラマ的には盛り上がりにかけるかな

 朝ドラだしな、あんまり深い挫折とかは描写しないのかもな

 まぁ語るほど詳しくないんだけど



 今思えば高校卒業でいったん立ち止まったほうが良かったなぁ

 浪人に拒否感があったのか、適当な大学に進学することを選んでしまった

 別に数年程度誤差なのにね。あの頃はそんなこと思いもしなかったんじゃないかな

 そして流れで参加してた就職活動の失敗

 どうにも意味を見出せなかったんだよなぁ

 就職活動の意味、働く意味、生きる意味

 特に目的をもって大学生活を過ごしてなかったから、学生時代に力を入れたこととかろくなもの挙げられなかったし。外面を繕う器用さも愛想も愛嬌も甲斐性もなかったし。三流大学だったから学歴で目を引くこともできなかったし。

 同期生がでっち上げと外面の良さで内定もらったりしてたり

 それに比べて自分は選考に落ちてることによって心の空虚さが増すし

 こう、元から憧れやら期待なんて無かったけど、さらに幻滅した感じ?

 おお、文字にすると我ながら典型的な社会的落伍者の一種

 まぁ10年ニートしてるからね、そんな人間なんてこんなもんってことなんかね

 癌で早々くたばれるなんてむしろ幸運?

 そんな発想が出てきてしまう

 ごめんなさい


 ニートを抱えられてしまう家庭の経済的余裕が、俺にとって幸か不幸か

 稼ぐために働くって発想にならなかったんだよね。ほどほどに金のかかる趣味でもあれば話は別だったのかもしれない

 今更幻滅した日本/経済社会の一員になるってのも現実感がなかった

 いや、生きていることへの現実感がなかったのか

 無感情に送る日々、やり過ごす日常

 特に楽しいことが起きるわけでもないけど、悲しむこともない

 癌を告知されたことによっていきなり現実に戻った?

「いつ死ぬかもしれない人生」

 陳腐な言葉

 でも劇的なことがない限り実感する機会はなかなかない

 垢が付くほど使い古された

「いつ死ぬかもしれない人生、悔いなく生きろ」

 という言葉をかける気持ちが今なら分かる気がする

 でも悔いなくってのは俺にとっては無理だろうし、言葉の意味が広すぎる

 俺が言葉をかけるなら

 いつ死ぬかもしれない人生、本当にその命を消費してでも成し遂げたいことを見つけて実践してくれることを祈る

 ってなるかな

 言うは易し、行うは難しってね

 もし俺のがんが治っても自分で実行できるとは思えない辺り、軽い言葉になってしまう

 身近な人は大切にしましょう くらいが身の丈に合っているか



 午前中に母の健診の送迎

 前回が最後の機会にはならなかった、よかった

 途中で車同士の接触事故の発生を目撃する

 人の振り見て我が振り直せ

 運転は本当に気を付けないとね

 2回致命的な事故につながりかねないことをした身としては、一層気を引き締める所存



 日中は青空が広がった

 午後は公園に散歩しに行くことにする

 なんか久しぶりだな

 前に来たときに紅葉が綺麗だった木は、雨のせいもありすっかり葉を落とし、寒々しい裸の姿を見せていた。その一方で別の木々が色づいているのを見て、また一歩季節が進んだことを実感する

 晩秋にしては暖かい気温、湿り気を帯びた空気と落ち葉、雨の残り香、訪れることの多かった午前中とは違う日差しの角度

 三毛、サバトラ、ブチの3匹の猫が連れ立って歩いている どこ行くんだろう

 テクテク2周して帰る。2周歩けたことに安堵する

 そのうち難しくなったりするのかな

 すっかり左下腹部からの幻聴は消えていた

 水下の重みは石が詰まったかのようだ

 気のせいでありますように



 これを始めて1週間

 癌告知(仮)以前の1週間よりははるかに長く感じたけど、過ぎてみればやはり早かったような

 もう1週間、まだ1週間

 適当にメモ帳に書き連ねること

 癌という重たい不安を抱えること

 非日常になったから始めたけど、どんなことも1週間もあればたいていのことは日常に、毎日の常になるもんなのかな

 癌の大元がいまだに分からなかったり、こうしている間にも刻一刻と癌に侵されてる事実には目を背けることも多いけど

 続けられるといいな

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