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妖精ちゃん、いらっしゃーい

「うーむ、Bランクでもこの旨さとは先々が楽しみだなあ」


 埃の積もった通路と黴臭い空気の充満する地下墓の中で、そんな暢気な声が木霊する。

 声の主はフードの様に兜にストールを巻き付けた騎士甲冑に身を包んだ長身の男性、転生者『ヒフミヨイツ』である。

 つい先ほどまでは右手に結晶の刀身を持つ聖剣を持ち、左手には聖火を灯す松明を掲げていたが今は聖剣を近くの床に突き刺し、松明を壁に立てかけて食事をとっている。

 籠手に包まれた手で器用に袋を開けて食べているのは、ガチャで手に入れた食料のチョココロネだった。

 なお、何故フルフェイスの兜を被ったまま食事が出来ているのかは謎である。


「いやー、なんか感動だわぁ。埃が充満してるし黴臭いし蜘蛛の巣も張ってて衛生環境最悪な所での食事だけど、それを補って余りあるほどの旨さだわ。何て言うのかな? パン生地がビックリするほど柔らかいんだけど程よい食感もあって、チョコレートの甘さと同時にパン自体の小麦の甘みも感じられて、それらが噛むたびに口の中で溶けるように広がって、だからと言ってしつこく残る事も無くパクパク食べられちゃうって感じでさ。もう兎に角今まで食べた事無いってくらい旨いわ、このチョココロネ!」



951:名無しさん

飯テロやめーやw


952:名無しさん

腹減って来たじゃないか、どうしてくれる!


953:名無しさん

なんかあったかなぁ? カップ麺しかないわorz、今は甘いものが食いたいんだ…


954:名無しさん

菓子ストックのあったワイ、高みの見物


955:名無しさん

俺も菓子見付けて食ってるけどなんか違うんだよなぁ

コンビニ行って菓子パン買って来るかな



「そっちが今何時か知らないけど、深夜の間食は太り易いから止めといた方がええで」



957:名無しさん

うるせー! お前のせいで腹減ってんだよ!!


958:名無しさん

最初に飯テロ投下したのはそっちですよね?


959:名無しさん

それともこっちが飯テロしようか? 深夜のラーメン屋実況しようか? んん??



「止めてくれマジで、たとえガチャ食糧でラーメン食えたとしても日本のラーメン屋とかもう二度と行けないんだからさ………」



 そう言ってヨイツは溜息を付くと今度は新たに取り出したメロンパンの袋を開けて頬張り出す。

 傍から見ると甲冑騎士がぶつぶつと独り言を言っているようにしか見えないが、実際は勿論違う。

 今はこの場にヨイツ一人だからあまり意味は無いが、転生特典で貰ったチート能力によりヨイツは他者から不可視の状態で空中にディスプレイを投影してインターネットを利用することが出来る。

 その能力によりヨイツは今リアルタイムの音声入力で自身が立てたスレッドの閲覧者たちと会話をしているのだ。



961:名無しさん

イッチ( ;∀;)


962:名無しさん

そうだよな、もう帰れないんだもんな…


963:名無しさん

ネット小説とかで転生者が日本食を再現する展開って多いけど、全部を再現するなんて不可能だろうし二度と食べられないものって多そうだよな



「ハァ…、これ以上この話しても暗くなるだけだから止め止め! それよりお前ら、パン食い終わったしお楽しみの妖精ちゃん召喚スッゾコラー!」


 そう言って残っていたメロンパンの最後の一欠けらを食べ切ると、ヨイツは空中ディスプレイを操作してアイテム欄からの選択でガチャ産の案内妖精を召喚する。

 また、召喚の一部始終の映像を掲示板にアップ出来るよう動画も同時に撮影していた。



965:名無しさん

待ってました!


966:名無しさん

それを待って居たぞイッチ!


967:名無しさん

欲しかったんですよ、ずっとそれが!


968:名無しさん

ドキドキ


969:名無しさん

ワクワク


970:名無しさん

wktk



 掲示板民も期待に胸を膨らませる中、ヨイツは魔術を試しに使った時にも感じた体から不思議な力が抜けて行く感覚、MPを消費する感覚を感じるのと共に案内妖精は召喚された。

 淡い黄緑色の光と共に現れたのは、ペットボトルほどの大きさの小さな少女だった。

 現れた時に放っていた光と同じ淡い黄緑色の髪は腰に届くほどの長さで、頭頂部からは一房の特徴的な癖毛が伸びている。

 身に纏う服はドレスの様な物で、黄色を主軸とした明るい色合いのものだった。

 背中からはヴェールの様な二枚の翅が伸びており、その姿は正に妖精と呼ぶに相応しい物であった。

 羽搏く事も無くフワフワと宙に浮く彼女は、閉じていた目をゆっくりと開きヨイツを見据える。

 焦点の定まらぬその青い瞳は超然とした気配を放ち、彼女が人間とはかけ離れた神秘の存在である事をヨイツに感じさせた。

 その姿に気圧されたヨイツが何と声を掛けようか迷っていると、彼女はゆっくりと口を開けて一言。


「―――ごはん!」


 目の焦点が合うのと同時にパッと表情を輝かせ、どこか舌足らずな調子で元気よくそう言い放った。

 台無しだよ、とヨイツは心の中で呟くのと同時に掲示板にその一言のコメントと撮影していた動画を投稿した。



972:名無しさん

キターーーーーー!!


973:名無しさん

いや草


974:名無しさん

ごはんwww


975:名無しさん

wwwww


976:名無しさん

いやー、この子絶対可愛いわwww


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