ガラスの瓶
「なあ、話しを聞いてくれるかな。そんな長い話しにはならないんだけど」
居酒屋でチョイ飲みしていると、隣に座った男が話しかけてきた。
「アパートに住んでんだけど、トイレに行こうとしたら洞窟になっていてな」
まあ、よく聞く話しだよな。
もっとも、フィクションの中だけど、ネット小説になったりしてるな。
「中に宝箱がぽつんと1個あるんだよ」
へえ。
「それでな、ちょっと開けてみようかとおもったんだよ」
魔法剣とか金塊とかだってことかな。
「ガラス瓶だったんだよな、空の」
「カラ?」
思わず声を出してしまった。
「そう、空だったんだよ」
「で?」
「しかたないから、部屋に持ち帰ったよ」
「あれ、トイレはどうした」
「ああ、それは近くのコンビニですませた」
「それはご愁傷様だな」
「だよな。でな、消えないんだよ、その洞窟」
「いまもあるのか?」
「あるある。そして宝箱から出るのが、毎回空き瓶なんだよ」
「どうするんだ、それ」
「空き瓶か?資源ごみ行きだよな、普通は」
「そうだよなぁ」
「砂つめて、ネット販売してる」
「砂?」
「200円くらいで、いろんなところの砂を詰めてな」
「売れるのか、それ」
「売れる売れる。好きなやつがいるんだな、そういうの」
「雑貨屋さんとかに、そんなのあったなあ」
「だろ?元手かかってないしな。それでも、毎日カップ麺がたまに外食できるくらいだけどな」
「あ、トイレってどこいったんだ?」
「そう。俺も気になってなぁ。外からのぞいてみたんだよ」
「で」
「そのままの形で、存在していた」
「へえ」
「窓もちっちゃいから、中に入れないけどね」
「それは仕方ないな。てことはドア自体が繋がってるということか」
「なるほど、ドアの枠をはずせば、もっていけるってことかな」
「そうかもねぇ」
「実はさ、俺のアパート、来月には取り壊されるんだよね」
「枠はずしてもっていけばいいじゃん」
「来週引っ越しだから、そうしてみるよ、ありがとなあ、話し聞いてくれて」
「いやいや、面白い話が聞けてよかったよ」
「早速はずして持っていくよ、お先に」
そう男が言うと居酒屋を出て行った。
それから1週間余りがたった。
のちに「ブラック・ホワイトデー」といわれる、ネット小説などでスタンビートといわれるモンスターの大氾濫が起き、わずか7日間で、世界は一変した。
タイトルを「血のホワイトデー」か「ブラック・ホワイトデー」にしようと思ったんです。
だから、ホワイトデーの日に予約投稿しようとも、思ったんですけどね。
え?
ホワイトデーになにもありませんよ、ええこれっぽちも。