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9.父親のお宝

 父親は早い段階から刀部屋で、自分以外の誰かが刀に触れた空気を感じて気になっていたらしい。刀馬鹿の父親を舐めてはいけなかった。俺の失敗は最初から始まっていたのだ。


 でも父親の、『侵入者あり』の疑いを確信に変えたのは、あの部屋の入り口にある刀掛台のせいだった。実はあの刀掛台は父親が床の木目の模様を目印にして、常に数ミリの狂いもなく床に設置していた。地震が起きてずれたなどの原因がないのにずれていたら、それは誰かが触れたと疑う必要があった。


 俺が鍵を開けて侵入すると、刀掛台にはほぼ毎回違う刀が置かれていた。丁度奥への通り道なので、俺は刀部屋に入るとまずはその刀掛台の刀を触ってから、部屋の奥に向かっていた。

 そうやって触っているうちに、刀掛台が数ミリ移動してしまった日が、なん度かあったようだった。そして父親は誰かの侵入を確信し該当人物探しをした。クソ。父親がそこまでの用心をして、外に出している刀にトラップを仕掛けていたとは。


 該当人物として真っ先に考えられたのは、部屋の鍵の在りかを知っていて、更にいつ刀を売り飛ばしてもおかしくない母親。母親は、そんな部屋には、刀を売り飛ばす時以外は入りたくもないと否定した。確かに母親は刀部屋に興味はないし、無断で売り飛ばされた刀も今のところはない。

 それならば残る容疑者は一人となった。俺だ。結果、俺が捕まった。全くもってくだらない理由だった。





 ポールおじさんから許可が下りた俺は、それからは父親の監視の下、日本刀を触らせてもらえるようになった。とりあえず小学生の間はそれで満足していた。しかしそれから四年が経過して中二になった俺は、再び刀部屋への侵入を開始した。理由は、父親が家族に隠したいお宝が、絶対にそこにあると確信していたからだった。


 小学生の頃の俺は父親を恐れていた。


『本気だと思うなよ』


 と言われた時の、父親の迫力に圧倒された恐怖が忘れられなかった。しかし俺も成長した。中二になった俺は、父親を恐れなくなっていた。あの迫力に一々ビビっていては戦闘にならない。あんなのがゴロゴロいる戦場に行く可能性だってあるのだ。あの威圧感の中でも動けるのが、一族上位者の条件の一つだ。小四の時に見た父親の迫力、そしてきっとそれ以上の父親の本気。見つかった時にそれが見られるかもしれないと思うと、逆にワクワクした。


 刀部屋の探索。まず刀部屋に侵入するのは造作なかった。父親は小学生の俺を脅して安心しきっていたようで、俺が成長して中学生になり、新たに何かしでかす可能性があることを忘れているようだった。刀部屋の鍵はそのまんま。四年前となんら変わっていないのだ。そして簡単に中に入ると、展示用ケースや刀箪笥の鍵も楽々開けた。

 鍵の数がやたら多いだけで、ここまでの到達は全て朝飯前だ。寧ろ母親の金庫のダイヤル錠の方が、開けられるようになるまでにかなりの月数がかかった。


 まず前にも書いたが刀部屋は、ドアから入ると片側に刀展示用巨大ガラスケースが並び、それが奥まで続いている。そしてその中には何本もの刀が陳列されている。逆側には山積みの刀箪笥。

 部屋の一番奥には普通の体型の人間では出入りが大変そうな小窓が二つ。小窓にはセキュリティがついていて、警戒をオフにしないで開けると警報が鳴る。そしてその小窓に挟まれるように一つ、木製の高さ百五十センチ程度のいわゆるキャビネットが置かれていた。

 いくつかの大小の引き出しと開き戸の収納が一カ所。サイズ的に大きい刀は入らないし、中身を鑑賞するためのガラス部分もない。中学生になった俺は、刀よりもこのキャビネットの中身に興味が移った。刀と共に鍵のかかる部屋に置かれた、この部屋に不似合いなデザインかつ用途不明なキャビネットの中身。絶対何か知られたくないものが入っているに違いない。それならばどうしても調べたい。


 キャビネットの鍵はたいしたものではなく簡単に開き、俺は用心しながらなん日もかけて少しずつキャビネットの中身を調べた。

 入っていたのは沢山の本と、何種類かの石と、中が空洞の透明なケース。本は相当古い物が多く、古い本は全て英語で書かれていた。比較的新しいのは日本語で書かれていて、どうやら英語の本を日本語に訳した物らしかった。


 他にはネックレス、指輪、ブレスレット等の装飾品があった。この装飾品が高価なものだからキャビネットに入れたのか、または神の世界から持ち込んだこの世界に存在してはいけない物だから隠してあるのか、それはわからなかった。

 

 とにかく、まずは本だ。本を読んで知識を得なければ、石やケースがなんなのかわからない。その日から俺は英語の本・日本語の本を問わず、数冊ずつだが無断で持ち出して、勉強そっちのけで読み漁った。それはそれは、面白かった。

 そしてあの石達について書かれた本もあった。あの隠されていた石は色々と使い道があるのだ。それならば、次にやるのは石を使った実験だ。


 俺はルカと智哉に声をかけた。本の内容を話し石が持ち出せると二人に話したら、智哉はノリノリだったがルカは嫌そうな顔をした。


『持ち出しバレたら怒られるんだよね』


 と言う。でもこいつは暴力をほのめかせば言うことをきく。上手く誘導すれば、こいつをアリスに殴らせることもできる。


『一人だけ抜けたりチクったりしたら、酷い目に遭わすぞ。酷い目って、どうなるんだかわかるよな?』


 と脅して参加させた。こいつは使えるから引きずり込んだ方がいい。実験で怪我でもしたらこいつに治させるのだから。


 赤い石、青い石、緑の石。他にも色々な色の石があった。サイズや形も様々だ。そしてそれぞれに使い方がある。石を使った実験は面白かった。が、本に書いてあることを通一通りやってみたら、もう飽きた。透明ケースだけは次期守護者がいないと使えないそうで、がっかりした。そのうち次期守護者をだまくらかして引き込み、株分けされたトーチ使って一緒に遊んでやろうと思っていた。しかし株分けされたトーチの実物を見て更に火傷させられた今は、もう実験はしなくてもいい。十分にあいつを体験できた。あいつの性格は最高だ。正に俺達のシンボルに相応しい。


 それから、引き出しの奥の隙間空間とか、キャビネットに二重板部分があってその間とかに、なん枚ものディスクが保管されていた。

 この頃になると俺は無断侵入のための解錠技術だけではなく、隠された物を見つけ出す捜索能力の訓練もし始めた。入った場所のどこに何が隠されているか隅々まできっちり把握しなくては、無断借用の一流にはなれない。


 さて、次はそのディスクの中身だ。自分の部屋に持ち帰ってパソコンで確認したら、それは成人用の内容のDVDで。多分二十世紀に撮られた日本では違法な映像で。

 それも折角なのでダビングして、ルカや智哉を引き込んで鑑賞した。この時は、R18なだけでなく違法な内容と聞いたためか、ルカは嫌がらずに仲間になった。



読んでくださってありがとうございました。

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