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ゲーム

 幼稚園で友人となった美希と悟が我が家に遊びに来る運びとなった。


 幼稚園で毎日つるんで遊んでいると幼稚園の先生方から親に世間話の体で話が入る。君と美希は幼稚園では悪い意味で目立つから話が入るのも早かった。あと君と美希の母親同士も仲良くなるのは早かったように見える。子供がわんぱく過ぎて困っている同盟だ。一目で同類だと見抜きシンパシーを感じたのだろう。


 そうなると僕と悟、その両親も話す機会が生まれ、一度お茶会でも開こうということになった。ファミレスという提案もあったのだが、暴れん坊女子二人組を持つ母たちから抑えられる自信がないということでお流れになった。そこで、だったらうちに来なよという僕の母からの誘いがあり我が家に来ることになった。


 慣れている君はさておき、美希と悟は初めて来る我が家にそれぞれ違った反応を見せていた。


 美希の方は遊園地にでも来たかのように、家具や間取りなどを楽しげに見て回っていた。悟は遠慮がちに僕らが座っていたソファに腰掛け、「なにするの?」と訊いてきた。僕と君がよくやっている遊びを答えていたら、美希がジャンプしてソファに飛び込んできて「ゲームというものをやってみたいの!」と高らかに宣言した。


 話を聞くと美希の家にはゲーム機がないらしい。両親がゲームをやらない人種ゆえ、そういう教育方針というわけではないが、自然とそうなってしまったそうだ。


 僕らもたいしてやりたかったことがある訳ではないのでそれに応じることにした。


 やったゲームは二人協力プレイもできる横スクロールアクションだ。


 四人いるため二人ずつ交代プレイをした。悟がとても上手く敵の攻撃を一切喰らわないで進んでいくという姿を見せつけた一方、未希は初めてのゲームという点を鑑みても下手くそだった。ゲームキャラが横歩きを初めて覚えたカニのように敵へ思い切り体当たりを繰り出して返り討ちにあっていた。これなら他のゲームを覚えたての子が、脇をくすぐられてプレイさせてもこれよりはマシな戦果を残すだろう。あまりに下手なのですぐに飽きると思いきや、ゲームのキャラを動かすだけでも新鮮さがあったのかコントローラーを手放さないでずっと遊び続けた。


 このことで知ったが、未希は距離感覚を掴むための器官がバグっていたのだ。球技などが苦手なタイプといえば通じるだろうか。運動神経に問題はないものの、自他の動きを合わせて調整できない部類だ。


 君はそんな未希を見て、最初は「最初だからねー」と興味がなく、中盤は「下手くそ―」と軽く馬鹿にして、終わり際には「……楽しめてるならそれで十分ね!」と気遣いすら見せた。


 あのガキ大将が気遣いを見せたのだ。


 僕はそれに成長を感じ、一人胸中で感動を味わった。


 ちなみに僕と君は、慣れ親しんだゲームというのもあるけれど可もなく不可もない程度の上手さだった。


 一通り遊んで夕暮れ時になる。


 母親たちは「夕飯の支度をしないと」と席を立った。玄関で、ゲームをいたく気に入った美希が「わたくしもゲームほしい!」と大声で母親に頼んでいた。母親は「良い子にしてたら買ってあげる」と返していた。方便なのか、本気なのか意図は掴めなかったが美希は「良い子にする!」と宣言した。


 その翌日からも女帝は女帝であり続けたが、その統治の仕方が変わった。圧政を敷いていた彼女が、聞く耳を持つようになったのだ。その変わりように驚いた先生方は母親に「双子の姉とかじゃないですよね?」と確認する始末だった。

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