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コミュニティ

 亜人には亜人特有のコミュニティがある。


 大きく分けると二つ。


 一つは種族ごとの互助組織。これは種族特有の問題に対し、フォローしたりするのが主となる。吸血鬼ならば肌や血の問題に対し、助言や手助けをしたりする。組織と言ってもこれは互いの善意で動いているため、ボランティアに近い。あまり大きな問題になると行政への相談を勧められる。


 もう一つは亜人全体の問題解決運動。いわゆる偏見の目や弾圧に戦う政治運動だ。これは亜人のなかでも参加率はとりわけ高くはない。けれど社会的に力があり、亜人の歴史を語る上では欠かせないものだ。


 君も前者のコミュニティに属していた。


 だいたい幼稚園に入園した頃からだろう。毎日、互いの家で遊んでいたのに、度々用事が入り遊べなくなったのは。そのコミュニティに顔を出していたからだった。


 そのコミュニティには年の近い子はいなかったから、行くたびに「暇だ暇だ」と君は文句をつけていたと君の母が教えてくれた。


 あまりにうるさいものだから亜人ではない僕をそのコミュニティが開催する会まで連れて行かれ、君の相手をする係に仰せつかったのは妙に記憶に残っている。僕が君の相手をしているだけで、そのコミュニティの老若男女問わず「君は偉いねぇ」と褒め称えられたからだ。君が幼稚園だけに飽き足らずここでも暴虐無人な振る舞いをしていたことを幼いながらに悟った。


 そこのお爺さん、お婆さんはとりわけ僕と君を可愛がってくれた。みんな振る舞いが紳士淑女だった。君とは大違いだった。当時の僕は浅慮で、それを口にして君に怒られていた。


 そこのお婆さんが言っていた。


「吸血鬼というのは本来弱い生き物なの。他者の助けがなければ生きていけないほどに。だから大きくなっていけば本能的に礼儀正しくなっていくわ。澪ちゃんは、ちょーっと我が強すぎるだけ」


 その「ちょーっと」というのがお婆さんなりの気遣いだと僕は察した。


 そのお婆さんの言う通り、小学校入学直前でのあの事件以降、君は礼儀正しくなっていった。我の強さは変わらなかったが、それでも礼儀正しくはなった。


 あの暴虐無人な君が礼儀正しくなったのだから、それはきっと喜ぶべきことなのだろう。


 社会常識というものは所々抜け落ちているのはご愛嬌だろう。

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