第九話 村の補修をする。
簡単に挨拶を済ませた僕等は、一緒に村の外側を回る事にした。
魔物に襲われる事が普通にある世界。しかし襲われた事が無い人間は緊張感が少ない。
なので、一番早いのが死体を見せる事だ。
オークジェネラルの死体を持っていたので、出して見せる。
「マジかぁ~。」
「やべぇだよ。」
「こんなのが沢山居るのか?」
反応は様々だが、少しは緊張感を持ってくれたようだ。
この世界は、地球よりも危険が側にある。だから、村人も自分達に危険が迫っている事は少ない情報でも理解する。
「まだ、確認が取れていませんが、これらのボスまで居る可能性があります。少なくともこれらの一つの集落が近くにあった事からも、防衛力の強化は必要でしょう。」
「そうだな。皆!やるべ!!」
「「「おぉー!」」」
少しはやる気が出た様だ。
次は物質的な対応になる訳だ。
「では、村を外から見て回りましょう。」
「何故外からなのですか?」
「攻めると考えて見る方が弱点を見つけやすく、防衛に行かせるからですよ。」
「なるほど。」
説明をほどほどに、村の入口をスタート地点として村を外から見てみる。
開拓した場所なのだろう、森に大きく囲われた場所だ。とはいえこの世界の常識なのか、森迄は軽く二キロはある。川と川に挟まれた三角州の様な場所だ。
魔物は川を渡らなければ入り込めない状況になる。川が魔物と人間との境界線という感じだろうか?防衛的な感じの村だ。
「ここは、昔は開拓兵が拠点にしていた所なのですよ。」
だから、安心している所があるのかもしれない。
ぐるりと回って村の入口に戻る。
「これは、堀を造るのはここの入口の周辺だけで済みそうですね。」
「そうだな。出来れば、非常時用の櫓を村の四ヶ所に欲しい。」
「他は、やはり塀ですかね?朽ちている所が沢山ありましたから、全てを補修した方が良いでしょうね。」
「そうですね。時間が足りるかな?」
「どうだろうな?」
「やるしかないじゃない?」
「まぁ、そうだわな。」
「人員を増やせるか、村長に聞きましょうか?」
村の青年が提案してくる。
「お願いできるかしら?」
「はい。出来るだけ人数を確保してきます。」
そう言った、青年は三人程連れて行った。
「で、私らは何をしたら良いでしょうか?」
「そうですね。先ずは木が必要になります。蓄えが無い様であれば、切り出しに行って欲しいのです。ただ深くまで行くと出会う可能性があるので、手前の方から用意してください。」
「どれだけ必要でしょうか?」
「そうですね。500本欲しい所ですが、出来る限りですね。」
アリアさんの言葉を聞いて、固まる村人。
「わ、わかりました。」
「よっしゃ。俺が全部切ってやる。だからアンタらは木を運んでくれ。」
プレストンさんが張り切って答える。
すぐさま村人たちは、道具を取りに散る。
「じゃあ、こっちの事は任せた。まぁ、村人を分けて作業にあたらせれば、何とかなるだろ?」
「そうですね。僕は村の入口の前の堀を造ります。」
「まって、それは私がやるわ。精霊の力を借りるわ。」
「わかりました。じゃあ、僕はここで村人を待って指示しますね。」
「よろしく。」
時間分けしたけど、最初は仕方がないか。
こんな感じで、村の防衛力を上げる為に準備を始めた。
◇◇◇◆◇◇◇
「あの木材は北の見張り櫓様ですね。北の方へ運んでください。」
「わかりました。」
「そっちは西壁面の補修に使いましょう。」
「はい。」
「そこのは、東壁面の補修用に使用しましょう。」
「わかりました。」
「入口見張り櫓の分が不足です。」
「わかりました。そこの予備を必要な分だけ持って行ってください。」
「へい。」
テキパキと指示を出す。
出せるのも、プレストンさんの木の伐採が早いからだ。
この速さは武技を使用しているのだろう。斧で切り倒している訳ではなさそうだ。
「そろそろお昼の準備は出来ましたか?」
「もう少しです。準備出来たら声かけますね。」
「お願いします。」
僕等が持って来ていた食料の備蓄分を今回は出した。
まぁ、村の全体で食べるには三日分ぐらいしかないけどね。
オーク肉も出しているから、その分持つかな?
このペースでやれば、三日間である程度の形になるだろう。
「なかなか様になっているじゃない?」
「もう、終わったんですか?」
「ええ。掘るだけは終わったわ。後は川と川を開通させるには、石を沢山用意して村側の方が削られない様にするだけね。」
「じゃあ、次は石ですか?」
「そうね。人手を借りて魔法鞄にでも入れて持って帰って来るわ。」
「了解です。予備の魔法鞄を用意しましょう。」
順調に防衛強化は進んでいる。
村も総出で手伝ってくれている。
なので、人でも確保できた。順次完成させれば、何とかなるだろう。
「村の防衛力は上がっても、やはり見張りは必要ね。」
「そうですね。自警団の見張りの仕方とかも聞いておいて改善が必要であれば、指摘して改善してもらいましょう。」
「その方が良いかも。」
改善する余地はいくつもあるだろう。
緊急時と平時によっても、変えるのも必要だろう。
「お昼の準備が出来ましたよ~。」
「良いタイミングね。じゃあプレストン達を呼びに行ってくるわ。」
「はい。お願いします。」
僕は、アリアさんの後ろ姿を見ながら、この後の事を考えていた。