第五話 プリメラさんとの再会。
「あれ?こちらの女性が君の愛しい人かな?」
「えっ?あっハイ。」
プリメラさんは僕等の席にそのまま座った。そして、目の前のアリアさんを見て、僕にそう聞いて来た。
「初めまして。私はシャルマン商会で副会長をしているプリメラです。お見知りおきを。」
「はい。私は、レン君の彼女のアリアです。よろしく。」
うん?彼女って言った?言ったよね?
それとも、僕の聞き間違い?
「彼女ねぇ?へぇ~。」
「何か?」
「ゴホン!俺は、プレストンだ。」
「パークリーです。お会いできて光栄です。」
僕の思考がパンクしそうな感じになっている間に話は進んでいるようだ。
「ふふふ。こちらこそ、よろしく。」
「ところで、何故攻めてこないと言えるのですか?」
プリメラさんに対して、問いただすかのように、アリアさんが聞いている。
「簡単なことさ。カーリアン帝国が攻める事が出来ないというだけさ。君達も聞いているだろ?カーリアン帝国の侵攻軍が敗北をしたのは?」
「はい。でもウワサ程度にしか聞いていません。」
「なるほどね。カーリアン帝国侵攻軍は、魔物の軍団に潰されたのさ。」
「魔物の軍団?」
僕はビックリして声を思わず上げてしまった。
周りの人達が、聞き耳を立てていた様で僕の声にビックリしている様子はない。
「そうさ。想像できないかい?君達なら出来るのではないかい?」
そう言われて思い出した。
アリアさんが襲われた時の事を。アイツだ。アイツが関わっている。
「ピンと来たようだね。君が思っている通りだよ。」
「まさか?」
「そのまさかだよ。しかも今回は黒竜を引っ張り出してきた。」
ドラゴン。ファンタジーの大物。
生物のトップ。食物連鎖の頂点に君臨する生物。
そのドラゴンを使役している。出来る存在。
「【邪神の使徒】ナベリウスが、率いた魔物の軍団に襲撃されて、壊滅させられたんだ。その結果、カーリアン帝国の重鎮達が戦死した。今回はかなり本気で侵攻軍を組んでいたみたいだから、無視できない被害をカーリアン帝国は被った。だから国内の反乱を抑える事なく撤退したんだよ。」
「つまり、ドラゴンも含む魔物の軍団がカーリアン帝国の帝都に進軍する可能性があると思った。もしくは対応を検討せざるを得ないという事ですか?」
「そういう事だね。全く良いタイミングで彼は動いた。」
「そうですね。」
「まぁ、彼は元々この地区の滅ぼされた王国の貴族だった様だから、何かしらの思惑はあったのでは無いかな?」
「えっ?」
「おっと、これ位にしておこうか。とにかく今は反乱している都市に構っている状況じゃないって事さ。特に、こんな遠方での反乱に軍を割く位なら、他の都市を確りと纏めておく方に時間をかけるよ。それに、ロックフェラ連合国に加入する事は内定している。ロックフェラ連合国に参加する新規都市国家となるわけだから、後ろ盾があるからね。それが無い都市では、そもそも独立なんて無理さ。少なくともカーリアン帝国は衰退している訳じゃないからね。それじゃ、私はこれで。」
プリメラさんは席を立って出て行った。
残された僕達は、とんでもない情報を投下された被爆地帯のような状況になっている。
「まぁ、つまりあれだろ?俺達がこの街で当面は冒険者として活動すれば良い。つう事だよな?」
「あぁ、そうだな。」
プレストンさんとパークリーさんは考えるのを止めた様だ。
アリアさんは逆に何かを考えている様だ。
そう言えば、カーリアン帝国はアリアさんを追っていたハズ。
こんな状況では、ちょっかいかけてこないかな?
それとも、こんな状況だから逆に狙って来るのかな?
少なくとも、注意は必要かな?うん。もっと警戒する必要があるな。
「アリアさん。大丈夫ですか?」
「あっ。ええ大丈夫よ。でも皆は本当にそれで良いの?」
「このまま、放置して出て行けないだろう。なぁ?」
「そうだぜ。」
アリアさんの問いに、プレストンさんとパークリーさんは肯定を示した。
「少しでも、ブライトさん達の手助けになるなら、やりましょう。」
僕も肯定だ。出来る事はやろう。
「わかったわ。ありがとう。」
アリアさんは頭を下げた。
「良いって事よ。」
「そうだぜ。」
「じゃあ、明日から頑張りましょう。」
「うん。そうね。頑張ろう。」
僕達は当面、このアギドの街に滞在し、冒険者家業をする事に決めた。
「とりあえず、冒険者ギルドに行きませんか?」
「そうだな。とりあえず行ってみるか?」
「それより前に、ご飯を食べきってしまいましょうよ。」
「そうですね。」
僕達はそれから談笑しながら、ご飯を食べた。
◇◇◇◆◇◇◇
「プリメラ様。良かったのですか?」
「うん?あぁ、別に問題ないよ。それに彼らが居れば、ここの復興は早く進む。その方が商会としては助かるんだから、良いのよ。」
「それ程凄い方々なのですか?そうは見えませんでしたが。」
「うん?そうだね。内のクラウンに入れたいとラムザ様がおっしゃる位には強いんじゃないかな?」
「そうなんですか?」
従者は驚きの顔になる。
先ほど見た彼らがそんなに強い存在だとは思えなかったからだ。
「うん。それに彼等に協力していれば、あの方が喜ぶしね。」
「あの方?」
「そうだよ。あの方が協力してくれる限り、私達の商会は安泰さ。」
従者はあの方が分からない。
会った事もないのだからそれも仕方がない事だろう。
しかし、あの方のおかげで、商会は大きな利益を得ているのは事実である。
「それにしても、彼女か・・・。」
どうやら、プリメラにとってはそれよりも気になる事がある様だ。