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第六話 食い倒れ。


いつか、また同じ事をしたい。

食い倒れコース、恐るべし!

現代日本には劣るモノの、人間の食欲は凄まじいと感じた一日だった。

正に『食い倒れ』だなと思った。


【揚げる・焼く・煮る・蒸す】根本はこの調理なのだけど。

【味・食感・香り・見た目】を追及している感じがする。


更に、日本でお馴染みの天ぷらや、寿司もあったりした。

絶対に過去に日本人が伝えた物だと、確信した。


もちろん、再現されているだけで、全く同じかと言うと違うのだが、それでも日本人として満足のいく食事になった。


「さぁ、次はそばですよ~。」


「そば?!うっぷ。」


「何それ?!」


目をキラキラさせるアリアさんとミスコンティさん。

ちなみに、ミスコンティさんは食べた事があるようで、アリアさんに説明している。

あぁ、プレストンさんとパークリーさんはもうダウンしている。馬車で横になっている。

僕もそろそろ限界が来そうだ。だって、13件目のお店だからね?

各お店で一品ずつとは言え、キツイよ?まぁ、プレストンさんとパークリーさんは早々に5件目の焼肉で思う存分食べてギブしたんだけどね。あははは。


「おお。キャンディスさんじゃないか。」


「店長。お客さんを連れて来たよ~。人数分、いつもの。」


「そうかい。ありがとよ。」


人の良さそうなオジサンだ。他のお客様とも笑顔で話している。

カウンター式のお店だ。立ち食いかな?椅子がない。


それにしても、キャンディスさんは色々なお店を知っている。

そして、どのお店に行っても声を掛けられている。道を歩いているだけでもそうなのだ。

ある意味で顔と言って良いのではないだろうか?


「はい。お待たせ。」


目の前にはドンと、どんぶりが置かれた。

茶色の半透明なスープに灰色の麺。そしてその麺の上には天ぷらと、とろろ昆布?!


やべぇ。絶対旨いよね?これ?!

あっさりしたスープに天ぷらの油が混ざり、コクが増す。

ズルズルとすすり食べる。

次から次へと口に吸いこまれていく麺は、程よい硬さ。


「うん。美味い!」


「おいし~い!」


「でしょ?ラーメンも良いけど、ここのソバは格別なんだよ~。」


ほどよく、僕等になれたキャンディスさんは、最初に接していた時の様子に完全に戻った。

つうか、ラーメンもあるのかよ?!


『美味しいだろ?』


「はい。」


『ここはね。僕が仕込んだお店だからね。』


「はい?」


あれ?今声が聞えたよね?僕は辺りをキョロキョロと見渡すが、それらしき感じの人は居ない。


「煉君。どうしたの?」


「いえ。今声を掛けられた気がしたんですけど?」


僕が周りを見渡しても、一生懸命にすすり食べる人か、後ろで立って待っている人しか居ない。知り合いも居ない。


「気のせいですかね?」


『気の所為じゃないのぉ~。』


「えっ?」


『今、神の存在を感知したのじゃ。それも上位神のな。』


「はぁ?」


『もう存在すら見えんようにされておるのじゃ。じゃが、神の御導きのあるお店であるのらなば、よっぽど美味しいのじゃろうな~。いいのぉ~。』


「凄いわね。ここ。」


「そうですね。あははは。」


しかし、どなただろうか?

僕には神様の知り合いは限られている。上位神と言えば、言葉にならない神様ぐらいだけど、あの時に感じたモノとは違う様な気がする。


「煉君。食べないなら、私が食べてあげようか?」


「ちょっと、ミスコンティ。ダメよ?!」


そのアリアさんの反応を見て、ミスコンティさんはニヤリとした。


「冗談だよ~。アリア怖い顔しない。しない。」


「だってぇ~!もう、知らない!!」


プイッとソッポを向いて怒ってしまったアリアさんをミスコンティさんが宥めだす。

宥める人の顔では無いけどね。だって、ミスコンティさんはニヤニヤしているからね。


「あれ?煉さんは残すのですか?」


「いやいや。食べますよ~。うっぷ。」


うっぷうっぷ言いながら、僕はそばを食べきった。

本当に美味しい、そばだったよ。


「さて、次は美味しいデザート屋に行きますよ~。」


僕が会計を済ませていると、そんな言葉が聞えた。


「旦那さんも大変ですねぇ~。」


「えっ?」


「ここに来てデザート屋に行くと言う事は、キャンディスさんの食い倒れコースでしょう?」


「はい。」


「まぁ、どこも美味しい店である事は間違いないのですが、量がね。無理はなさらない様に。」


「ありがとうございます。」


「はい。まいどあり!」


店の店長がそう言って、見送ってくれた。

不思議な体験と、美味しいそばを食べる事が出来た。


「さぁさぁ、次に行きますよ~。煉さんも早く乗ってくださ~い。」


キャンディスさんに急かされて、急いで馬車に乗る僕の体は、重かった。

これは絶対に食べ過ぎのレベルだ。


「ふふふ。煉君もまだまだね。」


「何がですか?」


僕は思わず突っ込んだんだけど、本当に何がだろ?

腕を組んで見下ろす感じのミスコンティさん。

小さくて細い体の何処にあれだけ食べたモノが入っているのか?

そこは謎だけど、言われる意味は分からない。


「はいはい。次のデザート屋さんに出発!」


馬車を動かすキャンディスさん。


「おおっと。」


僕はアリアさんに飛び込んでしまった。


「あん。いた~い。」


ドキッとした僕は直ぐにどいた。


「すいません!」


僕は謝る。


「良いのよ。煉君だから。」


「あっ、はい。ありがとうございます。」


そんなやり取りをしていると入ります。


「ひゅ~ひゅ~。」


ひやかしが。

ミスコンティさんのニヤニヤ顔に堪らず、僕とアリアさんは顔を赤くして下を向くのでした。


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