第五話 専属契約をする。
「ありがとう。本当に良いの?専属契約を結んでもらっても?!」
「ええ。キャンディスさんにお願いしたいんです。」
「聞きましたか所長?!」
「ああ。聞こえている。」
嬉しさ一杯という感じのキャンディスさんの様子に比べて、所長は不貞腐れている感じの様子を見せている。
「という事で、所長。専属契約を結びますね。」
「わかった。」
「ではでは、皆さん。こちらへ。」
奥にある部屋へと、キャンディスさんが案内してくれる。
先日、お休みだったので、今日改めて案内所に来た訳だけど。
「ふふふ。これで昇給確定だぁ~。って、すいません。」
「あははは。大丈夫ですよ。」
どうも、専属契約が大変嬉しい事だった様だね。
自然と鼻歌を歌っている感じで、動きもリズミカルだ。
「早速何ですが、専属契約を結ぶにあたって、幾つか確認したい事があります。」
「わかりました。」
「先ずは、何を目的としているのか?と、何処までを必要としているのか?という事です。」
「観光が目的です。後は買い物も含みます。」
「なるほど。商業都市国家サーゲイロード内の全域ですか?それとも観光名所だけですか?」
「そうですね。全域でお願いします。」
「何日間の予定ですか?」
「どうでしょうか?逆に何日間位は必要ですか?」
「う~ん。馬車を利用してだと、三日間位ですかね?」
「では、三日の予定で組んでもらえますか?」
「かしこまりました。冒険者としての仕事の方の案内は要らないですか?」
「えっ?それもしてもらえるんですか?」
「はい。戦闘も少しなら手伝えます。敵にもよりますけど。」
「そこは、考えていなかったんですけど、それも可能ならこの都市に滞在している間はずっと、案内人として契約してもらえると良いかな?」
「あははは。わかりました。ありがとうございます。ですが、本当に良いのですか?」
「大丈夫ですよね?アリアさん?」
「ええ。問題ないわ。」
「わかりました。では、冒険者としての案内は戦闘する・しないに関わらず、成功報酬の10%を別途報酬として頂きます。これはクエスト成功、失敗に関わらず頂く事になります。宜しいですか?」
「はい。」
「後、案内人として1日銀貨三枚となります。日数分を頂く事になります。こちらも宜しいですか?」
「勿論です。」
「ありがとうございます。その信頼にしっかりと答えて見せますね。では、今の内容を契約書に記載してきます。少しお待ちください。」
こうして、僕達は案内人キャンディスさんを雇い、都市国家サーゲイロード滞在中の一時的な仲間を手に入れたのだった。
戻って来たキャンディスさんは所長を伴っていた。
所長の前で契約書の内容を確認した。ここで初めて身分証を提示した。
「S級冒険者パーティーでしたか?」
「はい。」
「本当にキャンディスで良いのですか?」
「勿論です。」
「わかりました。キャンディス!しっかりと案内をして差し上げろ!」
「ワカッテマスヨ。ショチョウ。」
「おい!本当に大丈夫か?」
「エエ。スコシキンチョウシテイルダケダヨ。ショチョウ。」
S級冒険者パーティーと聞いて一気に緊張してしまった様だ。
「キャンディスさん。そんなに緊張しなくても大丈夫です。普段通りで良いですから。ね?」
「キンチョウスルナトハムズカシイ。エスキュウボウケンシャサマ。」
「そうですよ。煉殿。S級冒険者パーティーの扱いは上位貴族レベルなのですから。キャンディスでは、こうなって当り前です。お許しください。」
「わかりました。普通に話してくれてかましませんから、本当に気にしないでくださいね。それに一時的とは言え、仲間になるんですからね。」
「それもそうですね。私も遂にS級冒険者パーティーの仲間か~。」
一気に普通に戻ったキャンディスさん。
所長は目をパチクリする。仲間という言葉で緊張が解れたのか、そもそも肝っ玉が座っているのだろうなと思う。突然の事で、少し戸惑っただけとかね。
「ふふふ。よろしくお願いしますね。」
「はい。夢追人の皆さん。よろしくお願いします。」
僕達は改めて挨拶を交わした。
所長も、受付の時とは違い、『頑張れ』という感じで激励していた。
S級冒険者パーティーというモノの影響力を感じた。
「先ずは、今日のこれからはどうしますか?」
「えっ?明日からで良いわよ?」
「いえいえ。今日はサービスです。だから、何処か行きましょう!」
俄然やる気のキャンディスさんはフンス―と息巻く。
荒い鼻息を受けてアリアさんは引き気味だ。
「じゃあ、今日は美味しい夕食を食べに行こうぜ。何処か案内してくれ。」
パークリーさんが、助け船を出した。
「ふふふ。任せてください!では早速行きましょう!!さぁ、早く早く!!」
「ちょっと。キャリオネスさん?!」
「善は急げです。」
こういう時に使う言葉だったかな?
しかも善かこれ?
「イチイチ気にしない。さぁさぁ、食い倒れコースに案内しますよ~。」
「食い倒れ?!」
「はい。美味しくて、美味しくて倒れる程に食べてしまう。というコースです。」
マジか。
つうか、そういうコースがあるのか?!
たこ焼きとか、お好み焼きに串カツとかあるのかな?
と現代日本の大阪を連想した僕だった。




