第二話 アギトの街へ
何度かの交代を繰り返した。
『レン。見えてきたぞ。そろそろ出て来てくれ。』
「わかりました。」
魔法道具の通信機。
外にいるプレストンさんからの通信だ。
「アリアさん。起きてください。もうすぐ着くそうです。」
「う、う~ん。」
バサリと布団をどけて僕に絡みついてくるアリアさん。
『痴女。』
『儂もしたいのじゃ。』
そんな外野の声を聴きながら、僕は優しくアリアさんを揺する。
「アリアさん。起きてください。」
「うん?おはよう。レン君。」
「おはようございます。」
「もうすぐ着くそうです。街が見えてきたみたいです。」
「わかったわ。」
僕の頬に軽くキスをして、アリアさんは起き上がった。
「う~ん。」
背伸びをするアリアさんの姿は目の毒だ?いや、福眼だ。
『ぐぬぬぬ。』
『悔しいです。』
このまま見ておきたいけど、そういう訳にはいかないな。
僕は手早く準備を済ませる。
「アリアさん。先に出ます。」
「うん。後から行くわ。」
アリアさんの返事に頷き返し、僕は部屋を出て馬車の荷台に出る。
荷台から顔を出してプレストンさんとパークリーさんに挨拶する。
「レン。あれだ。」
プレストンさんが指さす方には、大きく破損した壁が見えた。
前に一度きた事がある街だけに、ショックはデカい。
「酷い有様の様だ。」
僕は返事を返す事も出来ずにいた。
今、取っている街道もボコボコになっている。ここ迄来ると放置されている死体が散見される様になってきた。
「おい。街の方から何か来るぞ?」
「反乱軍だろうな。」
「気を引き締めましょう。」
少しして、街の方から来ていた集団が目前まで来た。
「そこの馬車は停止せよ。代表者は降りて来い。」
鎧を着た兵士のような人がそう僕等に告げた。
僕は馬車を降りようとして荷台の入口に立つと、後ろからアリアさんが出てきた。
「ここは任せて。」
「でも。」
「大丈夫。ちゃんと話してくる。」
「わかった。」
ニコリと笑ってアリアさんが僕の前を通り過ぎて、ふわりと馬車から降りた。
「私達は見ての通り冒険者よ。カーリアン帝国軍がさったからここに来たの。人探しの為に街に入りたいのよ。」
「人探しだと?」
「ええ。私の元の仲間を探しているの。私はアリアよ。」
「ふん。怪しい奴らだな。」
「そうね。そう思えるかもしれない。けど、この街に来るには今しかないと思ったの。」
「悪いが今は街には入れられん。」
「そこを何とかしてもらえないかしら?」
「無理だ。」
「せめて、代表者に会わせて。」
やはり、難しいか。正攻法では街に入れないかもしれない。
特に反乱軍【オーブ】にコネとかも無いしね。
「ダメだ。早々に立ち去れ。」
「そんな。ここで待機するから、探し人の情報をくれないかしら?」
「そんな事をしてこちらに何の得がある?」
「もし、教えてくれたら、食料を用意するわ。魔物の肉にはなってしまうけど。」
冒険者なのだから、それ位は出来ると思ったのだろう。
「良いだろう。上の者に聞いてやろう。それ位しか出来んが。お前達はここで、待って居れ。」
「わかったわ。」
二人の兵士が馬に跨って、街へと戻って行った。
残った兵士はこちらを警戒しながら見守っている。
街の中へと消えた二人の兵士。
それから少しして、街の方から一団が出てくる。物凄いスピードだ。
「アリア~!!」
うん?聞いた事ある声だ。
あっという間に目視で見える所に来た人は、グラスランナーのミスコンティさんだった。
「ミスコンティ!」
「アリア!」
ミスコンティさんはそのままの勢いでアリアさんに抱きついた。
アリアさんとミスコンティさんの二人は僕達の前で抱きしめ合った。
「無事だったんだね。よかった。」
「うん。レン君達が助けてくれたの。」
「ミスコンティも元気そうでよかった。」
彼女達二人は涙を流してお互いの無事を喜んでいる。
遅れて、バーナードさんやブライトさん達も合流した。
こうしてアリアさんとアリアさんの仲間の再開が果たせた。
◇◇◇◆◇◇◇
「レン。良くやった。」
「レン君。頑張ってくれたんだね。ありがとう。」
「いえ。ここにいるプレストンさん達のおかげです。」
「そうか。プレストン殿。ご助力ありがとう。」
バーナードさんやブライトさんは僕やプレストンさんやパークリーさんの方へと声を掛けてくれた。それから、僕等はアギドの街に迎えられた。
「ここではなんだ。アギドの街へ行こう。」
「入って大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。私達の仲間で有る訳だからね。」
にこりと笑顔でバーナードさんは答えてくれた。
そして、僕達はバーナードさんの後についてアギドの街の中へと入った。
アギドの街は、外壁は激しく摩耗している様子は有るものの、補修作業を繰り返しながら戦っていた形跡がある。今現在も補修作業中だそうだ。
「酷い状況ですね。」
「うん。厳しい戦いだったからね。」
街の中にも色々とバリケードを張っていた様で、今はさおの移動作業もおこなわれている様子だ。ただ、死体が転がっている等の悲惨な状況は目にする事は無かった。
「君達には話をする前に、私達のリーダーに会って貰いたいと思う。すまないがもう少しつき合ってくれ。」
バーナードさんは申し訳なさそうに僕等に言ったのだ。
夕焼けが眩しい時間になっていた。