第一話 S級冒険者だから?
「じゃあ、皆。またね。」
「ああ。元気でな。」
「手紙を寄越せよ?」
「煉君と幸せにね。」
「頑張れ。」
「たっしゃでな。」
結果、アリアさんの仲間は皆揃って、都市国家オーブに残り、立上げを手伝う事にしたようだ。一人を除いて。
「私はアリアと一緒に行くよ。良いよね?煉君?」
そう言ったのは、グラスランナーのミスコンティさんだった。
「もちろんです。宜しくお願いします。」
僕の返事は当然こうなる。
どうも、前衛組ばかりとなる偏った構成のパーティーになっていく。
まぁ、仕方ないか。
「煉君。二人を頼むぞ。」
「はい。ブライトさんも必ず来てくださいね。」
「もちろんじゃ。」
ブライトさんは、今やっている仕事が終わってから合流してくれる事になっている。
どうしても途中で投げ出せないそうだ。『儂は独立までと言っただろうが!』とよく愚痴っていた。だけど、都市国家オーブは優秀な鍛冶師を手放せる状況じゃない。それもブライトさんは分かっているからこそ、愚痴っていただけだ。
こうして、僕等は都市国家オーブを出発する事になった。
目指すは、ロックフェラ連合国の首都であるアテナイだ。
黄道十二宮の勇者召喚。気にならないハズが無い。
僕の意を汲んで皆が提案してくれた目的地だ。
ロックフェラ連合国の首都:アテナイに向かうには、工事中の道路を進むのが早い。
工事現場を見ながら進む僕等の馬車は側道の様な場所を進む事になる。
先ずは隣の都市国家を目指す事になる。行程はおよそ三日。道路が完成したらもっと早く移動できる様になるのではないかな?
都市国家オーブの隣となる都市国家キャリオネスは王政都市国家だ。
カーリアン帝国であったアギドの街に来る際にも入った都市でもあるので、全く知らない訳じゃない。
道路工事中という事もあって、魔物等に遭遇する事は無かった。
もちろん盗賊にも出会わなかった。
「平和ですね~。」
「平和だね~。」
「暇だ~。」
というセリフを何回交わしたか分からない程に、緩やかに時間は経過していった。
そして、野営を挟んで3日目には都市国家キャリオネスに到着した。
「ここで数日過ごすのか?」
「そうですね。急ぎの旅でもありませんし、ゆっくりとしませんか?」
「それもそうだな。」
「お金もある事ですし、ゆっくり街を堪能しましょう。」
「良いじゃねぇか。美味い飯食って、上手い酒を飲もうぜ。」
「そうっすかぁ~。」
ロックフェラ連合国はどの都市も壁が凄い。
圧倒的な存在感を示している。壁が国境というのも関係しているのだろう。
都市に入れる順番が、自分達に回って来た。
身分証を呈示して、都市への入場の許可を貰う。
「Sランクパーティー‘夢追人‘だと?」
「はい。」
「悪いが確認の為、少し待たれよ。」
「なんの確認なんだ?」
「済まない。国命が出ておるのだ。」
門番の人にそう言われて、上から目線ではなく、懇願されたので、馬車を入口から離して、待機する事になった。
「どうしたんですかね?」
「そうね。何だろう?」
「S級冒険者という事が問題なのか?」
「う~ん。」
そんな会話をして待つ事30分。
道路の向こうから馬車がやって来た。物凄い勢いだ。
そして、僕達の馬車の前に止まると、高貴そうな人が降りてきた。
「そち達が、S級冒険者のパーティーと聞いた。本当か?」
「ええ。そうですが、貴方は?」
「これは済まぬ。私はこの都市国家キャリオネスの伯爵であるドミノビッチ・ド・レスクライである。S級冒険者パーティーには、城に来て頂きたい。我が王がお呼びだ。」
面倒な匂いがプンプンする。
行きたくないな。アリアさん達も嫌そうな顔になる。
「断りたいのですが・・・。」
「なぬ?王の命を断ると申すか?」
ちょっと、青筋を立てていらっしゃる。
すげぇ~面倒だ。
「私達は冒険者ですよ?それは、冒険者ギルドに相談してくださいませんか?」
「ぬっ。その様な事を申すとは!」
冒険者は国に在籍する民とは毛色が違う。
家でも購入すれば、都市に席を持つ事にもなるのだから、完全には拒否するのは難しいだろうが、冒険者ギルド自体が国の管轄ではない。
だから、王だとしても命令する権利は無いとされている。
まぁ、権力者である王族と敢えて揉める様な事は避けるだろうけど。
「わかりました。ではこの都市国家は素通りする事にします。ではそういう事で失礼します。」
「ぐぬぬぬ。調子にのりおって!!」
こうして、僕等は都市国家キャリオネスを壁伝いに迂回する事になった。
後ろで例の貴族が何か喚いていたけど、無視した。
「理由も告げず、ついて来いって何様なんだよ?!」
「いや、王様だよ。」
「確かに、ちげぇねぇ!わははは!」
プレストンさのボケ?にパークリーさんのツッコミが入っている。
「それにしても、不穏な感じね。」
「まぁ、伯爵レベルが出てくるって事が異常よね。」
「確かにそうですね。」
「まっ、関わらない事が正解よ。」
僕だけじゃなく、アリアさん達も僕と同じ気持ちのようだった。
関りを持たれるのが嫌で、急ぎ迂回を済ませ、次の都市国家へと向かった。
一日目は夜通し走った。それ程に関わりを持ちたくないと思ったからだ。
しかし、今回の様な事は次の都市国家でも起こったのだ。そして、その次の都市でも。
「いったい、どうしたと言うんでしょうか?」
「わからない。わからないけど、何か起こっていると考えて良いレベルよね。」
仕方なく、野営を重ねた。
そして僕等は、商業国家サーゲイロードへと到着したのだった。




