第十一話 魔物の殲滅。
オークの奇襲。
そうならなかっただけマシなのかもしれない。
ここで、今、殲滅させる。
そうすれば、少しは時間が稼げる。
「おぉ~!」
僕は‘桜花‘を構え直して、オークの群れに突っ込む。
僕等三人は近接攻撃が出来るメンバーだ。
オークジェネラル相手に負ける様なメンバーじゃない。
だけど、悠長に戦う時間も無いだろう。二体目のジェネラルオークなのだから。
ほぼ、確信している共通認識。それはキングが間違いなく存在するという事だ。
今回のジェネラルオークは、僕等の動きを見ている。様子見だろう。
後ろに下がって、指示を出している。
200体ぐらいのオークだろうか?
増援の可能性も捨てきれない。
「ブフォ~ン!」
斬りかかってくるオークの攻撃を避けながら払い斬る。
連携もシッカリと取れているオークは一体目が振りかぶると、二体目は横一文字に斬りかかってくる。それを刀で受け止め、蹴りを入れて崩れた所を斬りすてる。
そこを別の個体が後ろから斬りかかるのだが、そこはプレストンさんが突き倒す。
そのプレストンさんを目掛けてきた別の個体を袈裟切りにする僕。その後ろをアリアさんが通り過ぎてその先にいる別の個体を横切りにする。
僕等三人を中心に囲んでくるオークを一匹また一匹と僕等は斬り殺す。突き殺す。
中心の輪は小さくなる事は無く、少しずつ大きな輪になっていく。
その外の輪の後ろにオークジェネラルが立っており、指示を出している。
「アリアさん精霊魔法をお願いします。」
「OK!」
「プレストンさんフォローを!」
「任された!」
アリアさんの魔法の準備が始まると同時に僕とプレストンさんは動きを活発化させる。
お互いに六芒星を模る様な動線になる。
実はこれも魔法の効果を上げる一つの要因になる。
まぁ、『上手くいけば』の話だが。
「ドライアド!」
詠唱の必要は無い。
しかし、準備も詠唱もした方が高い効果を得る事が出来る。
綺麗な女性の姿のドライアドが現れる。と同時に、木のツタが一斉に伸びてオーク達を絡めとりながら、切り結ぶ。ドライアドの力を借りた殲滅魔法。気のツタが、鋭い刃の様になって切り刻む。一気に100体以上は切り刻んで絶命させた。
本来の魔法であれば、精々が絡めとるレベルだろう。
「ブモォ~ン!!」
怒気を含んだ目をオークジェネラルは僕等に向けて声を上げた。
「来るぞ!」
「僕が行きます!!」
プレストンさんに応えた僕は、そのまま真っすぐにジェネラルオーク目掛けて進む。
前には何匹かのオークが居るが全て一刀で斬捨てる。
数匹を斬捨てた所で、オークジェネラルが持っている斧で襲い掛かってくる。
ブンと音を立てて過ぎ去る斧を目で追いながら、僕の体は輝き出す。
ヒミコ様と桜花が反応したのだろう。魔力?神力?を纏った僕は‘桜花‘を一閃する。
スパっと入った刀身はジェネラルオークの首を斬り抜く。
斬られた事を感知出来なかったのか、オークジェネラルが振り返ろうとするが、その瞬間に頭と胴体がズレ、そのままオークジェネラルの巨体は崩れる様に倒れた。
いつもであれば、これで終了だ。
しかし、今回は違う。ここに居る全てのオークを殲滅する事。
そのままの勢いを使って近くにいるオークに斬りかかり、斬り倒す。
近くにいるオークから順に斬り殺していく。
僕だけでなく、プレストンさんも同様に動いていた。
アリアさんも先ほどと同じ様にドライアドを使役する。
オークは指揮官を失い統率を失った。
逃げようとするモノも出たが、全てを斬り殺した。
虐殺。そうとも言える殲滅をした。
全てを倒した事を確認してから息を吐く。
「ふぅ。」
一気に体の力が抜けた。
『ご苦労様なのじゃ。』
『お疲れ様。』
「協力ありがとう。」
感謝の言葉を口にする。
『良いのじゃ。』
『当たり前の事。』
照れている様子が分かるだけに、自然と笑顔になる。
魔物が相手とは言え、殲滅する行為はやはり、心に精神にくるものがある。
「煉君。大丈夫?」
「はい。大丈夫です。」
「やっぱり、お前は恐ろしい奴だな。ジェネラルでさえ一刀かよ?」
「あははは。」
「本当に成長したよね。」
アリアさんが言う通り成長したなと思う。
弱い魔物?でさえ初めは倒せなかった。
そう考えたら、自分を褒めてもいいかもしれない。
「そうですね。初めはゴブリンすら倒せませんでしたから。」
「くっくっく。そりゃあ、皆そうさ。初めから倒せたら怖ぇよ。」
「それもそうですね。あははは。」
三人で笑いあった。
目の前には死体が一杯だ。目を逸らしていると言えるかもしれない。
「さぁ。増援が来る前に回収して後を無くしましょう。」
「はい。」
「さぁ、やるか~。」
そこから黙々と、死体を魔法鞄に投げ入れた。
その後は魔法の力を使って、周辺をある程度均した。
消臭魔法もりようして匂いも消した。
「撤収しましょう。」
「はい。」
僕等はその場を離れた。
来た道とは違う道を使って、周辺の状況も確認したが、特にオークらしきモノは確認できなかった。
ただ、進軍していたのであろうオークとの遭遇・戦闘の後だ。
安心は無い。ただ猶予があると思えただけだ。
村に着いた後、直ぐに村長に連絡し、現状を伝えた。
≪危険はすぐそこまで迫っている。≫と。




