第一話 反乱地域へ行く。
「カーリアン帝国が撃退された?」
「うん。」
「嘘でしょ?」
「本当の事よ。」
僕達はザバルティさんと離れた後、アギトの街に向かった。
しかし、カーリアン防衛軍がアギドの街への道を封鎖しておりアギトの街へと真っすぐに行く事が出来なかった。仕方がなく手前にあるビルドの街に居た。
そんな中で起こった事。
それはカーリアン帝国の西方侵攻軍が襲撃されたという事件。
壊滅的打撃を被ったという情報だった。
「でも、アリアさん。カーリアン帝国軍は、とっても強いんじゃなかったんですか?」
「そうなのよ。カーリアン帝国軍って世界でも有数の軍隊なの。それがそう簡単に西方諸国に簡単に負けるとは思えないの。でも偽りの情報では無いみたい。何人もの将軍が戦死したそうなの。」
「パークリー間違いないのか?」
「ああ。俺も裏取りしたから間違いない。」
プレストンさんがパークリーさんに聞くが、やはりパークリーさんの情報も同じだった様だ。
「だからか?この街に来ていたという軍が撤退したのは?」
「そうかもしれん。残念ながらその話はまだ裏が取れてねぇ。」
アギトの街には防衛軍が攻めていた。
アギドの街にて反乱が起こったからだ。反乱軍は【オーブ】と名乗っていた。
「どうする?今ならアギトの街に入る事が出来る様になっているじゃない?」
アリアさんは希望を見つけたという感じで僕達に顔を向ける。
「しかし、逆に危ない状況じゃないか?」
「確かにな。ピリピリしているだろうからな。」
戦争をしていて目の前の敵が急に居なくなり、よそ者が来る。
警戒されても仕方がない事かもしれない。
「そんな事はどんな状況であっても同じじゃない。今なら帝国に邪魔されず、中に入れるチャンスだから、飛び込んでみましょうよ?ね?レン君。」
確かにチャンスはある。
これを逃すと、次はいつか分からない。何だかんだで、ここに長く滞在してしまった。
パークリーさんもプレストンさんも僕を見る。
僕は決断を求められている。
そう、僕はこのパーティーのリーダーになったのだった。
「うん。わかった。行こう。」
『ほぉ。行くのか?』
『ふふふ。行くのね?』
二人の精霊に僕は無言で頷く。
「とにかく、行動しよう。そして無理だと思えば戻ろう。」
「レンがそう言うなら良いぜ。」
「ああ。逃げる事になったら、俺に任せろ。」
「レン君。ありがとう。」
「さぁ、僕達の【奇跡馬車】に乗ってアギトの街へ行こう。」
僕等は、ザバルティさんから貰った馬車をそう命名した。奇跡の馬車って意味だ。
ミラクルキャリッジを略してミラキャ。この言葉は僕等の緊急時の合言葉にもなったりしている。元々強力な魔力が張ってあり、所有登録されてない人が馬車に入っても亜空間部屋へと繋がる扉は見えないし、入る事すら出来ない。不思議仕様だ。
僕達はすぐさま行動に移した。
直ぐにビルドの街を出て、街道を通りアギトの街へと進む。
つい最近までカーリアン防衛軍が居たからなのか、魔物の襲撃は無かった。
しかし、戦争の傷跡はあちこちに見受けられた。
「痛々しいわね。」
「うん。」
アリアさんの言う通り痛々しい風景が続く。
激しい戦いを繰り広げたのだろう。
反乱軍【オーブ】に潤沢な資源があったとは思えない。
竹槍や、矢も鉄じゃなく石を先につけた矢が、あちらこちらに落ちていた。
流石に死体は無かったが、壊れた武器や防具もみすぼらしい皮製のモノばかりだ。
鉄などは重要な資源になるから回収したのだろう。
今は僕とアリアさんの二人が馬車を走らせている。
本当は休憩を挟みながら進む方が良いのは分かっているけど、時間があるとは限らない。
だから、パークリーさんとプレストンさんの二人は亜空間の部屋で今は休んでいる。
二頭立ての馬車だけど、馬は四頭居る。残り二頭は馬車の中の亜空間にいる。
交代時に馬の交代もする事になっている。荷台ではなく別の場所にも亜空間部屋に繋がる場所が荷台の後ろにある。そこから馬は出入りさせている。馬だけでは出る事が出来ない。
登録された人と一緒にじゃないと出る事は出来ないのだ。
随分と都合の良い仕組みだ。それだけザバルティさんが破格の力を持っているという事だろう。うん。そう納得した。
少しずつ空が明るくなってきた。
急いでいるからか、時間の経過が早い気がする。
「レン。そろそろ交代だ。馬車を一度止めてくれ。」
プレストンさんの言う通り、馬車を止める。
馬の交代や情報共有を兼ねた食事をおこなう。
「順調だったようだな。」
「はい。でも痛々しい戦場後を見ました。」
「そうか。激戦が繰り広げられたという話だったからな。よし。お前らは休め。馬の餌を食べ終わらせたら、出発しておく。」
「お願いします。」
僕とアリアさんはそれぞれの亜空間部屋へと入る。
この馬車は最大20名が暮らせてしまう部屋がある。
「じゃあお休み。」
「はい。おやすみなさい。」
僕は部屋に一度戻りシャワールームへ向かう。
シャワーを浴びて部屋に戻る。何も考えずにベットへと入る。
ぷに。
あれ?
「きちゃった。」
そこには、アリアさんが居た。
「えっ?」
「偶には一緒に寝て良いよね?」
「あの。その。」
「私達は付き合っているんだから。それともダメ?」
ウルウルした目で見つめられて僕が断れるハズは無い。
『ズルいのじゃ!』
『悪女が居る。』
そんな外野の言葉を無視した。
「駄目じゃないです。」
「よかった。じゃあ寝よ?」
「はい。」
『ズルいのじゃ!!』
『二人きりにはさせません!』
結果。二つの精霊が僕の周りに霊体で寄り添う事になる。
・・・が、アリアさんの温もりを感じて寝る事が出来た。
まぁ、ヘタレな僕は寝るしか出来なかったんだけども。