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7帰ってきた場所

杏奈との話が終わり、また北の塔へ戻ってくる。

明日から言葉の勉強が始まると話していたけれど、どうやって誤魔化していこうかしら?

いきなり上達すれば怪しまれるでしょうけど、ここに居られるのもひと月が限界。

聖女ではない異世界の人間を城においておけば、それに苦言を申し立てる貴族が必ずでてくる。

処分するべきだとかなんとかね……。

だけど王子からすれば、処分するわけにはいかないわよね。


予想するに最終の着地点は、平民として街へ送り込み国外へは出ないように見張りがつく、そんなところかしらね。

髪をかきあげ眼鏡をはずと、そのままベッドへと横になる。

見張りは面倒ね……ずっとこの眼鏡と前髪にするのは苦痛だわ。

まぁなってから考えることにしましょう。

そんな事を考えながら、深い眠りについたのだった。


翌朝から忙しい日々が始まった。

リチャードは私の担当になったのか、毎朝朝食をもってやってくる。

エリザベスを知っている彼に素顔を見られるわけにはいかない。

彼がやってくるよりも早くに起床して、髪を整え顔を隠し眼鏡をかける。

もちろん聖女ではない私にメイドや執事はつかない。

着替えも湯あみも自分で出来るから、リックにさえ顔を見られなければバレる心配はないわ。


私がエリザベスだと気づかれることなく穏やかに時が流れていく。

暫くして語学を教える講師がやってくると、幼稚園児に教えるような授業が始まった。

正直眠くて眠くてしょうがない。

だけど気を抜いて、ぼろを出せば全てが水の泡。

出来ないふりってなかなか大変なのねぇ……。

ずっと気を張って取り繕うのは思った以上に体力を消耗するし、さっさとここから離れたいわね。


私を早く上達させろと言われているのだろう、一日何時間も講師の詰め込み授業で頭が痛くなってくる。

本当に私がこちらの言葉を知らないとすれば、こんな講義でわかる人なんていないでしょう。

確か彼は城勤めの文官だったと思うけれど、人に教える事にはむいていないようね。

だけど彼も生活がかかっているのでしょうし、上手く上達した振りをしてあげないと……。


マンツーマンの授業が終わると、リックがまた私のもとへやってくる。

私の扱いに困る彼の様子に、私は簡単な言葉で外へ出たいと片言で伝えると、外出することに成功した。

もちろんリックは常に私の傍に居る。

信頼のできる騎士といえばリックが一番適任だと私にだってわかる。

だけどこうしていると、エリザベスだったころを思い出す。


昔はこうやって城の外へ出て3人で走り回っていた。

挑発してくるクリスに食って掛かって追いかけて、それをリックが呆れた様子でついてくる。

クリスが居ないときでも、私がどこへ行こうとすると、何をしでかすかわからないと言いながら、ついてきてくれたのよね。

お転婆だった私の面倒をみられたのは、お人好しで真面目で世話好きな彼以外いなかったのだろうと、今となってようやくわかる。


おもむろに後ろを振り返ると、ブロンドの髪が風で揺れ、美しいサファイアの瞳が太陽の光で反射する。

あの頃と変わらない彼の姿。

そういえばここがいつの時代なのか、まだ確認していないわね。

私は立ち止まりリックを見つめると、近くに落ちていた枝を拾い上げた。


「どうなさったのですか?」


リック私の行動に首を傾げると、その姿にニコッ笑って見せる。

木の枝を土に差すと、私は簡単な文字を書いていった。


(あなた 歳 いくつ?)


文法無視で単語を並べてみると、リックは納得した様子で頷いた。

私の真似をして落ちてある枝を拾うと、隣に文字と数字を書いていく。


(私 は 21 歳 です)


単語と単語の間に行間を入れ、わかりやすくしてくれる。

そういう小さな気遣いに、さすがリックと言わざるをえない。

あの講師よりもこういったことはリックの方が向いていそうね。

それよりも21歳ということは……私がいなくなって3年後の世界。

それなら変わっていなくて当然だわ。

私は枝で(ありがとう)と文字を書くと、散歩を再開したのだった。


私は向こうの世界に生まれ変わって18年もたったのに、こっちではたったの3年。

何とも不思議で不可思議だけど、異世界から人間がやってくること自体摩訶不思議なことよね。

3年前に居たエリザベスの存在。

それはこの世界でも存在するのかしら……?


もし存在していないのであれば、顔を隠す必要もなくなるわ。

だけど確かめるすべはない。

城に入って書物を見ることも出来ないし、顔を知っている人見せてもしエリザベスだと知られれば全てが台無しになってしまうもの―――――――――――。

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