表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/50

28閑話:彼女との出会い (リック視点)

王子と僕、そしてリサ。

三人で過ごす時間が増えていった。

クリスとリサはどちらも気が強く、はっきりとものを言うからよく喧嘩をする。

険悪になっていく二人の仲裁をするのも僕の役目。


僕が間に入ると、二人は素直に話を聞き、仲直りをするんだ。

そして3人で笑いあう。

最初の印象が嘘のように、これからもずっと3人で居たい、そんな大事な存在になっていった。


けれどもリサと過ごしていくうちに、僕の中にある感情が芽生え始めた。

彼女の笑みを見て嬉しいと感じ、傍に居ると何だか落ち着かない。

気が付けば彼女の姿を目で追って、だけど目があうと真っすぐに見られない、そんな不思議な感覚。

彼女の仕草や反応が気になって、一緒にいるとどうも落ち着かない。

この感情が何なのか、わからなかった。


だけどある日、リサと王子の婚約が発表された。

僕はもちろん知っていたが、二人は何も知らされておらず、ずいぶん怒っていた。

お互い不平不満の言い合いで、クリスは聖女と結婚したいと、そう話した。

リサも自由が奪われるだろう妃にはなりたくないと、そう言った。

けれど僕はそんな二人を見てお似合いだと思ったんだ。


王子は人の上に立つ素質は十分にあるが、何でも出来る彼を誉める事はあっても、怒ったり諭す存在はいない。

リサは稽古事から逃げ出すが……器量が良く頭もいい。

なんだかんだ不服そうにしながらも、人よりも数倍の速さで稽古事を身に着け、完璧にこなしてしまう。

王子に気後れすることなく間違っていることをはっきりと言葉に出来る女性。

二人が結ばれれば、きっと将来より良い国を創っていくだろうとは安易に想像できた。


不平不満を言い合う二人を宥めながら、婚約を祝おうとした。

だけど納得できない自分がいた。

モヤモヤと渦巻く黒い感情。

二人の姿を真っすぐに見られない、素直に祝福できない。

叫びたくなるこの感情。

悔しい悲しいと複雑な想いが込み上げた。


心地よい場所だったはずなのに、三人でいると苦しくなる。

いつもと違う僕に気が付き、心配し気にかけてくれる二人。

申し訳ない気持ちと嬉しさと、苛立ちが交ざって……。

昔感じた王子を取られたような嫉妬とはまた違う。

これは一体何なのだろうか。

胸が痛くて苦しくて苛立つ……。

考えても考えも答えは出ない、けれどこの感情がなくなることはなかった。


答えがわからぬまま成長し、抱く思いも強くなっていく。

そんなある日、婚約者として王子の隣を並ぶ彼女を見て気が付いたんだ。

リサの隣に並ぶ王子を羨ましいと思ってしまった。

リサの笑顔を見て、その笑顔を僕が守りたい、クリスに渡したくないと。


(僕はリサが好きだ)


ストンと心の中に落ちたその言葉は、胸の痛みを和らげる。

けれど気が付いた時にはもう、手の届かない存在になっていた―――――――。


気づいた想いに戸惑っていると、婚約に不平不満を漏らしていたリサがある提案してきた。

この世界へ稀にやってくる聖女を召喚するのだと。

それは良い案だと賛同する王子を横目に、僕は嬉しいとの気持ちが込み上げた。

けれど正直無理だろうとわかっている。

今まで誰も聖女を召喚したことなどない。

いつもならここで止めにはいるのだが、僕は何も言わなかった。


聖女を召喚すると決めた彼女は、よく図書館へ行くようになった。

聖女に関する書物を読み漁り、うんうんと頭を悩ませる姿。

そんな本など存在しない、していれば今まで見つかっていないのはおかしい。

頭がいいのだからきっとわかっているのだろう。

けれどそんな中で必死に探す彼女。

見つからないとわかっていながらも、もし見つかれば……そんな希望が胸に奥にくすぶった。


図書館で悩む彼女の傍に近づいていく人影に、僕はスッと隠れるとコッソリ様子を窺った。

彼女の隣へ腰かけ、軽く頭を叩いたのはクリス。

クリスへ笑みを浮かべ、気を許した彼女の姿にチクリッと胸が痛んだ。

割り込めないそんな空気が二人の間に流れていたから。


結婚すればあんな姿を毎日目にすることになるだろう。

思い続けていても不毛なだけ。

早くこの気持ちを消さなければ……王子の騎士になれるはずなどない。

僕は胸にしまった箱をこじ開け無理矢理想いを詰め込むと、この気持ちを一生口にしないと誓ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とうとう好きだと自覚して嫉妬を覚える所 [気になる点] 三角関係にする為の王子視点です。 今回の話でリックが恋心を自覚するけど、待っていたら結婚確定予定だった棚からぼた餅状態王子が気持ちを…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ