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魔狼の恩返し  作者: 花畑
1・一度目の転生
9/89

尻拭いと償いと……

予約投稿です。

 兵士になって、一年が過ぎようとしていた。

 待望のアレクセイの子供が産まれて、三か月。

 それから毎日のように、子供の所に会いに行くアレクセイに付いていく。


「おおー! イザベラー! お前は、なんて可愛いんだ!! 絶対に将来は、()()()()()()()()


「アレク!!? 滅多に、そんなこと言わないで!!!」


 ヴォルフ家六代目当主アレクセイ・ヴォルフの奥方が、夫の配慮が無い発言に声を荒げる。

 争いを好まない優しい奥方が()()の単語に、過剰に反応するのは、腹を痛めて産んだ娘(イザベラ嬢)を戦場に送りたくないという想いからだ。

 厄介なことに、産まれたイザベラ嬢は将来は勇者か英雄(ユニーク・スキル)を持っており、夫のアレクセイにもユニーク・スキルが有る。



 ーーユニーク・スキル【言霊】ーー


 言葉に実現力を持たせる常時発動のスキル。

 詠唱して放つ魔法の威力の向上、偶発的な事象の確立操作、果ては人の内面や世界の理の改竄が出来る。

 但し、()の底から思っていないと効果が薄い。


 ーーーーーー



 つまり、アレクセイが()()()()だと思っているなら、()()()()()()()()()()()のも、思いのままに出来るかもしれないスキルなのだ。

 ましてや、イザベラ嬢にはユニーク・スキルが有るので、()()()()と思える要素が揃っている。

 だから、奥方は過剰に反応したのだ。


「アレクセイ様。奥様の心中を推し量れないなら、イザベラ様は没収します」


「あぁ~。すまない、ヒルダ。グレタ、許してくれ!」


 イザベラ嬢の担当メイドのヒルダに、抱いてるところを奪われてしまい、奥方に許しを請うアレクセイ。

 産後に体調を崩されて、ベットで横になっている奥方が、ヒルダからイザベラ嬢を受け取りつつ答える。


「私が、()()()()()()()()ということは、アレク自身も()()()()()()()()()と思っているのでしょう。しばらく、ベラには近づかないでください」


「そ!? そんな~~~!!?」


 項垂(うなだ)れながらも、引き下がるアレクセイにも自覚が有るのだろう。


「………………」


 ……何故か、イザベラ嬢は俺が居ると、俺の方ばかり見てくる。

 珍しい灰色の髪か、日中の月のような水色の瞳が、興味を惹かれるのか、顔を凝視してくる。

 愛想笑いを浮かべながら、軽く手を振ると、何故かヒルダさんが睨んできた。


「行くぞ、シルバ。こうなったら、執務しながら機嫌が直るのを待とう」


 諦めたアレクセイが、ようやく執務に戻る気になったようだ。

 俺を見ながら、バイバイと手を振るイザベラ嬢に手を振り返しながら、アレクセイと執務室に向かう。



 イザベラ嬢が産まれたのと同じ頃に、俺はアレクセイの近衛兵に抜擢された。

 今までの下積みなどでの評価と、自由奔放、豪放磊落のアレクセイを物理的に抑えられる力量を買われてだ。


 飾り気の無い実用一辺倒の執務室にも、一つだけ目を引く物が飾られている。


(あの時にオスカーが持っていた長剣。家宝なのだろう。無事に、ヴォルフ家に戻っていたようで良かった)


 執務室に入る度に、そう思っていると


「シルバは何故、ウチで兵士を?」


 アレクセイが、執務をしながら雑談をするように問いただしてきた。


「給金の殆どを故郷に送っているようだが、仕送り目的なら冒険者でも良いだろ? むしろ、そっちの方が実入りが良い。ましてや、シルバはユニーク持ちなんだから」


 自由業(フリーランス)の冒険者は、最低ランクの仕事に薬草などの採取が有るので、成人(十五歳)前の十歳から加入が出来る。

 実力主義なので、俺のようなユニーク持ちはランクを上げ、兵士の給料の何倍だって容易に稼ぐことが出来る。

 強い魔物の情報や討伐の仕事が多いので、経験値稼ぎが容易で、強くなるにも最適なのだが……


「アレクセイ様には、大恩が有ります。5代目当主オスカー・ヴォルフ様が出兵中に亡くなられた時に、家の家計が火の車にも関わらず、村々への税を増やしませんでした。おかげで、ウチの村での餓死者は出ませんでしたし、私や幼馴染、ロンだって産まれました」


 アレクセイは伯父のオスカーに似て、質実剛健、誠実だった。

 通常、貴族が急遺すると家督争いや貴族間の階級争い、領地運営などの根回しで、非常に金が必要になる。

 本来なら、しばらく増税して急場を凌ぐのだが、アレクセイは一切の増税をしなかった。

【偽装】(偽)を使って、本当の理由に気づかれないようにしているが、これだけでも十分に俺が尽くす理由になるし、()()でもある。


「シルバは、本当に成人前と思えないくらい大人だね。大人ですら、そこまで恩に感じる人は少ないのに」


 執務の手を止め、後ろに飾られた家宝の長剣を眺めてから、こちらを向いて言う。


「シルバ。これからは、アレクと呼びなさい。親しき者、信頼出来る者にしか許さない愛称だ。君の忠義を信頼して、この愛称()で呼ぶのを許そう」


「分かりました、アレク様。これからも、その信頼と恩義のために尽くさせて頂きます」




 女神の尻拭いから始まった人間としての二度目の生。

 これは俺の尻拭いの、償いの、()()()の物語だ。

 例え、俺が死んだとしても、アレクを、兵士の同僚達を、村の皆を、レオナを守るために、侵略は防がなくては。




 侵略が始まる年になる……







稚拙な文章を読んで頂いて、ありがとうございます


章ごとに投稿を考えておりますので、誤字脱字の修正は遅れます。

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