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魔狼の恩返し  作者: 花畑
番外~補完の章~
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6章・補完、モヤモヤ

「これくらいしか役に立ちそうも無いので、皆さんは休憩していてください」


 失礼ですが、なんで付いて来たのか分からなくなってしまった”黒獅子兵団”の方々が、張り切っていた。

 ”毒”によって行く手を阻まれた(わたくし)達は、”毒”の原因を探りに行ったオルフ達を待つ間、軽い休憩と軽食を取ることになり、その準備を一手に引き受けてくれていましたわ。



「はぁぁ。ロイさんの”オムライス”が恋しいですわ」


「”オムライス”って、誰が作っても大体、同じでは?」


 今まで一番の活躍をしていたベラちゃんが、オルフが心配で食欲が無いとのことで、栄えある”MVP()”を獲得して作って頂いた”オムライス”。

 ロイさんの作るものと比べると、格段に見劣りすることを愚痴っていたら、通常の三倍は有りそうな、()()()()のような”ケチャップライス”を手に、カリンさんが訊ねてくる。


「分かってませんわね。ロイさんのは、ある種の芸術ですわね」


「はむ。ほうほう。はむ。興味深(ひょうみぶか)い」


 どこか親しみというか、親近感のあるカリンさんと”オムライス”談義に華が咲いていましたわ。




 いわゆる女子トークというヤツですわね。




 ーーーーーー

 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー


 ーー


 ー






()()()ですか。確かに垂涎の逸品ですけど。私は遠慮します……」


「あら? どうしてでしょうか? 絶対に美味しいですわよ」


 なにせ私とオルフの卵なのですから、質の高いものが産まれるのは確定的に明らかですのに。


有精卵(愛の結晶)を、食欲の為に奪うのは罪深い気がして。美味しく食べられる気がしないんですもん」


「気にすることはありませんわ。だって___」




 ___産む私が許しているのに、という言葉が出なかった。




 魔物で、火竜であることを露呈するのを躊躇った訳では無かった。

 ()()()()という言葉に、モヤモヤとした感情が湧いてきたせい。


 私とオルフの愛の結晶を食べる?



「なんか、なんだか。モヤモヤしますわ」



 ーーーーーー



『フハハハハハ! のん気に食事とはな!』


「だ、誰だ!??」


 和気あいあいとした食事休憩に響き渡る声。



「ジョイフル親衛隊(カラーズ)、最強の隊員! この”虹彩(こうさい)”のレインボーが、それを最期の晩餐にしてくれようぞ!!!」


 悪趣味に思える虹色のマントを身に纏った珍妙な人影が語る。

 自身が語るように纏う”圧”が、今までの魔物とは別格であることを示していた。

 今までの隊員達が、()()()()()()ような異質な”圧”。



「舐めるなよ! ここまで何の役にも立っていないが、これでも俺達は国の精鋭だ! 貴様1人くらい、我らだけで事足りる!!!」


 敵の居城を前に、貴重な休憩時間を潰さぬように”黒獅子兵団”の益荒男(ますらお)達が気炎を上げる。

 イザベラやサラが別格すぎるだけで、彼らとて”二つ名持ち”を撃破できるだけの実力を有しているのだ。

 進軍を速度を緩めぬように手を出すことを躊躇していたが、足を止めた休憩中なら別だと、ようやくの出番に一糸乱れぬ隊列を組み、迎え撃つ!



「雑魚は下がっていろ! ”深緑(しんりょく)”! ”桃源(とうげん)”!」


 突如として草が生い茂り、”黒獅子兵団”の精鋭達の脚を縛りあげ、夢を見ているようにレインボーの姿が揺らめき、幾重(いくえ)にも幻覚のレインボーが増殖する。


「今まで倒された隊員達、全員を相手にしていると思ってもらおうか。貴様達では、私の足止めも出来ん!」


 雑魚には用は無し! と、勇者達にだけ目標を定めたレインボーが悠然と通り過ぎようとしていた。



「舐めるなと、言ったはずだぞ!!!」


 ある者は草を焼き切り、ある者は万力のような剛力で引きちぎり、ある者は一分の狂いなく切り裂いて、拘束を脱していた!

 ある者は自身に切り傷を付け、気付け薬や魔道具を用い、魔法によって幻覚を打ち破ってみせていた!!



 歴戦の猛者である彼らにとって、この程度の窮地は物の数にも入らないのだ!!!




「ほほう! これは失礼した。私の手に掛かって死ぬに値する男達のようだな」


「「「こちらの科白(セリフ)だ!!!」」」


 お互いを強敵だと認識し、緊迫した空気が張り詰め始めて___




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! モヤモヤしますわ!! ムカムカしますわ!!!」




 ___いたのだが、その一切合切を、自身から湧き出る正体不明の感情にイラ立つ、サラによって蹂躙される。

 まるで()()()()()を討つ母親のように、何度も何度も、モノを言わぬ肉塊なっても止まらなかった。




 残されたのは男達の死んだような無気力な瞳と、サラの剣を叩きつける轟音だけだった……。



 ーーーーーー

 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー


 ーー


 ー







 湧き出た感情が、自覚なき”恋心”が原因であることに気付くのは、もう少し先のことであった。







次回の番外編は8月末予定。


次作は、二章が連載中ですので、よろしければ

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