新たなる神
分かる人には分かるリスペクト回です
「残念です……。非常に残念です」
光さえ喰らう闇を突き抜け、大地の巨神兵に風穴を空けられた状態で語られる悲痛な独り言。
「残念です。この程度ですか。”無かった”ことにならないとは」
闇は越えられたが、【魔王】を越えられなかったことの証とばかりに、”無かった”ことに出来なかった巨神兵の風穴が塞がっていく。
全世界の希望、信仰を一身に受け、増大した俺の魔力だが、それは”氷”。
火の邪神の加護を受けて尚、”火”の魔力が真の”無”になるまで圧倒的に足りなかったのだ。
「負け惜しみか、マンダラ。塞いだとはいえ、何度でも貫いてやるぞ!!!」
負け惜しみを言っているのは俺の方だ。
いまだに不完全な”無”しか放てず、このままではジリ貧なのだが、事情の知らない観衆、全世界の希望を失う訳にはいかない。
見た目だけなら、俺は優勢なのだから……。
「……オルフ」
「いけません! 危険です!! それに……御手が汚れます」
いつの間にか、そばに来ていたベラ嬢の手が、穢れた俺の手に重ねられる。
「ここまで来たら、貴方に託すしかありません。ですが、私にだって出来ることが有ります。有るはずです」
ベラ嬢から暖かい何かが流れてくる。
「神々の恩寵を作ることは出来ないでしょう。でも、元々あるモノを与えることは、神の化身になった私には出来るはず」
俺を、まっすぐに見据えてくる。
「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、貴方を信じます」
大魔法の詠唱、それを行うように紡がれる言葉に呼応するように、ベラ嬢の魔力が高まる。
「勝って、オルフ。そして帰ってきて。誰がために祈る」
優しく、唇が、触れる……。
ーー【絆】ーー
人と魔、主と臣下、男と女、火と氷を越え、結ばれる絆。
結ばれた両者に隔たりは無く、互いに全てを相手に委ねる。
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俺の全てがベラ嬢に、ベラ嬢の全てが俺に流れ込む。
全世界の信仰、俺の魔力とスキル、ベラ嬢の魔力とスキルが統一される。
「見事! 見事です!! これなら、これならば!!!」
神の化身同士の力の統合。
誕生するのは、化身ではなく、神そのもの!!
ここに新たなる一対の神が誕生する。
”無”ですら断ち切れぬ、厚き、堅き、強固な”絆”の神!!!
「見せてください!! 姫様の! 魔物の! 理不尽な世界の理を打ち破るところを!!!」
自身から【魔王】を露出させ、そこに渾身の、全身全霊の、命を賭してまで魔力が込められる。
「世界を覆いつくす闇!!!!!」
ベラ嬢の魔法の対極、漆黒の太陽と化した闇が迫る。
「ベラ。良いのですか? 俺は穢れています。貴女に愛される資格なんか無い。それでも、俺を選んでくれるのですか? 信じてくれるのですか? 託してくれるのですか?」
「貴方こそ。恩返しの為とはいえ、そこまでボロボロになって良いのですか? せめて、貴方の助けにならせてください」
迫る脅威を意に返さず、静かに俺を見つめて微笑んでくれる。
「なら、俺の全ては貴女のために」
「私の全ては貴方のために」
相反する、対極の、人と魔、主と臣下、男と女、火と氷。
それを全て束ねて、【絆】とすることでする生まれる真の”無”が放たれる!!!
「「■■■■■!!!!!」」
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詠唱の言葉ですら、【 】ですら、巨神兵ですら、空の雲ですら、通過したものを軒並み”無かった”ことにする。
そこに残ったのは、残したのは”泥土”のマンダラ、在りし日の”堅固”のアントラだけだった。
「感謝しますよ。理を消し去っただけでなく、私に最期の言葉を言う時間をくれるとは」
「アントラ!!!」
死と生を繰り返していたマンダラが【 】を失い、役目を終えたように砂塵と化すところに駆けよるルナ。
「姫様。後は好きに生きてください。オルフとの仲を修正するも良し。他の者との恋を楽しむのも良し。自由なのです。もう縛る理は存在しないのだから」
「うん。うん! 分かったわ! アントラおじさん! ありがとう!!」
「私が言えた義理、資格は無いのですが。オルフ。姫様を頼み……
最期に、そう言い残して完全に砂塵となって風になる。
その風が、完全に白くなった俺の髪を吹き抜ける……。
当然、この光景は全世界に流れています。
そうです。『石破ラブラブ天驚拳』です。
完結まで更新は平日午前6時、土日祝日午前1時に行います。




