母より語られし”私”の騎士
オルフのことをルナさんから聞いた時、驚かなかったと言えば、嘘になる。
「獅子王の一撃!!!」
私が産まれる前、伯父であるオスカー・ヴォルフを殺した魔狼であったこと。
「大津波!!!」
産まれ変わって、私の父、アレクセイ・ヴォルフに仕えたシルバという少年だったこと。
父と領地を守るために戦い、父を守り切れずに死んだこと。
「空を切り裂く稲光!!!」
精神を邪悪に支配されそうになっても、戦っていたこと。
それを克服しても、肉体が現世に留まれない程に浸食されそうになっていること。
「闇を許さぬ輝き!!!」
勇者、聖女総出で戦っている魔王と戦う運命にあること。
その全てが、ボロボロになって戦うオルフの全てが、私の為であること。
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勇者、聖女総出の最強魔法を前に、魔王”泥土”のマンダラが不敵に笑う。
「温い!! 【魔王】とは、何と強靱か!!! これでは用意したのが無駄になってしまう!!!」
【魔王】により、全魔物の加護を一身に受けるマンダラの前に、どす黒い闇が浮かぶ。
オルフの使う”無”に似たソレは、加護の全色を混ぜると出来上がる漆黒。
全てを飲み込んで出来る、全てを飲み込む黒き”闇”。
「光さえ喰らう闇!!!」
マンダラから放たれた”闇”の魔法は、簡単にイザベラ以外の魔法の魔力を飲み込み、消し去る。
闇を許さぬ輝きですら、わずかな抵抗を見せるだけで飲み込まれてしまう。
「絶望するのは早いですよ。これからです。大地の巨神兵」
以前のように泥ではなく、生前に使っていた土の最強の巨神兵。
【魔王】で強化され、より強靭に、強固に、堅牢に、堅固になった十八番。
「【堅固】!!!」
アントラだった頃の恩寵【堅固】、自身を核とし、融合することで、対象を強化するスキル。
「獅子王の一撃!!!」
同じ土の魔法など意に返さず、無傷。
「大津波!!!」
敵を全て飲み込む水の魔法ですら、さざ波程度。
「空を切り裂く稲光!!!」
その巨体を包む程の落雷ですら、核であるマンダラまで届かない。
動かずに、攻撃を受けるがままにしているマンダラには思惑が有った。
自身を傷つけ、倒す可能性が有るのはイザベラ、イザベラの【火の女神の化身】スキルのみ。
火の女神・サテラの信仰、イザベラ自身への信仰を力に変えることで、神の化身へと至るスキルのみ。
以前、王都の襲撃後に行われた演説の際に使われた拡声の魔道具。
それを逆用し、この戦いの音を、映像を主要な都市全てに、意図的に流し続けさせている。
絶望が、人族の希望の象徴、勇者達が為すすべもないという絶望が、それを見た民衆に広がっていく。
人々の信仰という希望を塗りつぶし、深い闇となって染め上げる。
再度、闇を許さぬ輝きを放てぬ程に弱体化し、弱体化が止まらない。
「終わりです。私には、貴方達の攻撃は通用しない。唯一、通用するはずの貴女ですら、その有り様。念には念を入れて、貴女から片付けるとしましょう」
悠然と、子揺るぎもせず、攻撃を受け続け、遂には勇者達の魔力が、体力が尽きる。
そんな圧倒的な魔王を目にした民衆から希望が消え、絶望が支配する。
その状況でも微塵も油断せず、この場のイザベラを排除するために見据える。
高く、高く掲げられた巨神兵の拳が、蟻のごとく小さなイザベラに向かって振り下ろされる!!!
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『困ったことがあったら、ベラよりも若い騎士が助けに来てくれるわ』
脳裏に浮かぶのは、幼き頃に語って聞かせられた母の言葉。
私を潰すはずだった拳が、黒き獣人によって止められていた。
「本当に俺は、肝心な所で予定外なことが多い」
振り向くと、あの時を同じように、出会った時と同じように貴方が立っていた。
「サラに腹が減ったと騒がれても、全力で来て正解だった」
物心もつかない頃から見ていた、見覚えのある水色の瞳、見慣れた黒と白の髪。
「オスカー、アレクセイ両名に大恩が有る。イザベラ嬢。嫌だと言っても、恩を返させてもらう」
言うや否や、今まで私達が傷つけられなかった巨神兵が、私を潰そうとしていた拳が切り刻まれる。
悲しそうな、切なそうな、泣き出しそうな表情で語る。
「全てを聞いたのでしょう。俺は貴女の叔父を殺し、アレクを守り切れなかった穢れた男」
拳の残骸が地面に落ちる轟音も、何もかもが聞こえない。
彼の、オルフの言葉だけしか聞こえない。
「俺の、償い、恩返しのために。さいごに、もう1度だけ戦わせてほしい」
「これは俺の我儘。さいごの恩返し!!!」
これ以上、私のために傷だらけにならぬように置き去りにしてきた愛しいオルフの戦いが始まる。
完結まで更新は平日午前6時、土日祝日午前1時に行います。




