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魔狼の恩返し  作者: 花畑
7・終章~新たなる神~
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魂に誓う”誓い”

 魔王”泥土(でいど)”のマンダラとベラ嬢達の戦いの轟音が鳴り響く王都を前に、最後の関門()として立ち塞がる復讐の鬼。

 俺が全力を出さねばならない程の強者が、俺とベラ嬢との間に立ち塞がっている。


「オルフ。ここは(わたくし)に任せて、先へ。ベラの下へ行ってくださいまし」


 魔剣・オムを手に、決死の覚悟でウィルの前へと立つサラ。

 サラに渡していた俺の火の魔力が、俺へと返還される。


「死ぬ気では有りません。私は私の美味しい御飯のために、死ぬわけにはいきません。皆で。また、貴方とベラ達と、ご飯を食べるまで死ぬ気では有りませんわ!!」


「フハハハハハ! 殊勝なことだが、簡単に通すと思うか!! その想いも決意も!! 叩いて、砕いて、()べて、我が”鬼火”の糧になるが良い!!!」


 通すまじ! と、俺達に突撃してくるウィル。



「ルナ様! オルフ殿! 御手を失礼!! 【潜行】!!!」


 ドナテロから全てを見届けるように言われて付いてきたキリバが、俺とルナの手を引いて自身の二つ名の由来の恩寵(ユニーク・スキル)を発動する。

 指定した距離、物質を移動中に通り抜けることの出来る【潜行】のおかげで、ウィルを通り抜け、閉ざされた城壁と城門を通り抜け、王都の中へと入りこむ。


「行かせるか!!!」


「追わせませんわ!!!」


 壁の向こうで、サラとウィルの剣戟の音が聞こえる。




 ーーーーーー



 サラの【貪欲】により火の魔法が使えず、以前に奇襲の土魔法を経験しているサラに効果は薄い。

 必然として、サラとウィルの戦いは近接戦、剣による戦いが中心となる。


「人化したままで足止めをするつもりか! ナメられたものだな。サラ。この先に居るのは【魔王】。キリバのように通すだけでも問題なのに、お前のは明らかな敵対!!! 魔物ですら無くなるぞ!!!」


「私は私! 魔物である前にサラ()!! 美味しい御飯のため!! 私は戦う! 皆と! 友人と! オルフとの食卓の為に!! これは私に課した”決して破らぬ誓い”!!!」


 その決意に呼応するようにサラの全身から赤黒い炎が、オルフが放ち始めた【黒炎】と同じものが立ち昇る。


「人目の有る場所で真の姿になったら、世間様の風当たりが強くなる。そんな中で食べる食事は美味しくありませんわ! それに……」


 不思議と沸き上がる力に、自信と、勝利への確信を持って斬りかかる!!!


「このままの姿でも! 足止めと言わずに!! 貴方を倒せますわ!!!」



ーーーーーー



『素晴らしいな。サラ。”破りがたき誓い”を昇華し、他者を、誰に強制されるでもなく、(おもんばか)り、自らに”誓い”を立てる。魔物同士の連携を図らせるために邪神が用意した”誓い”を昇華し、あろうことかオルフ達(人族)に誓うとは天晴れだ!!!』


 オルフに加護を与えた際に、サラにも加護を与えた邪神・ジャミラが、下界の様子を見て感嘆する。

 約束を、約定を、契約を強制する”誓い”には破った者に罰則(ペナルティー)を与えるだけではなく、”誓い”を守るかぎり恩恵(メリット)も有る。

 守るという意識すらしない程に、自身に課し、息をするように、日常の一部のように、ごく当たり前のように”誓い”を遵守する者に対して、”誓い”を守るための力が、能力が与えられるという恩恵(メリット)

 我が強く、他者を出し抜くという意識が強い魔物の中で、誰一人として、その境地まで達した者が居なかった故に分からなかった恩恵(メリット)


『幼き故か、オルフ達(人族)と過ごした時間が長い故か。サラ。喜べ! お前が、初の恩恵を受ける者!! オルフと交わした”誓い”以外にも、より厳しく課した自身への”誓い”すらも平然と成し遂げる!! その恩恵は大きいぞ!!!』


 火の邪神とは思えぬほどの冷めた、冷静で、感情の起伏に乏しいジャミラが、サラの偉業に、歴史的な貢献に興奮を隠せないでいた。



 人化した状態、オルフの為に渡されていた火の魔力を返還、そのような弱体化した状態で、単独でウィルと交戦しようものなら、秒で敗れるであろうサラが奮戦する。


「信じられぬ!? 何が、お前を突き動かす!?? (われ)のように忠義でも忠誠でも無い!! 何故だ!!? どんな大義が、お前に!! そのような力を!!!??」


 すぐにサラを片付けて、オルフを追おうと思っていたウィルが焦りを隠せないでいた。

 人化した状態の、可憐で虚弱なサラが、出し惜しみをしていない自身に喰らいつき、あまつさえ凌駕するほどの力量を見せているのだ。



「私は美味しい御飯の他に、強くなること、()()()が好き。強い人に挑み、強くなるのが好き。スノウさんは強い人。オルフの為に自分が、どうなっても構わないという意思の強さは尊敬しますわ」


 近接戦による勝敗は、お互いの身体能力、装備によって決まることが多い。


「レオナさんも強い人。不安で、たまらないでしょうに。オルフの為に出来ることを全て、やりきり、待つ。帰りを信じて待つ。意思の強い人」


 ”誓い”による恩恵で、四天王最強の巨漢ウィルと互角に斬り合える程に強化され、身体能力は互角!


「ベラちゃんも強い人。戦えば戦う程、遠くなるオルフの為に、自分が死ぬかもしれないのに。魔王と戦う覚悟をした強い人」


 つまり、勝敗を決めるのは装備。


「さようなら。私の初めての好きな人(強い人)強い人(オルフ)を追わせる訳には、いきませんわ!!!!」




 ドナテロが、ウィル自身の外皮で作った魔大剣・大干魃を持つウィルだが、その剣に”思念体”は宿っていない。


『悪・即・斬!!! 悪は滅びる定めだ!!!』


 魔物(ドナテロ)人族(ロン)の合作と言うべきサラの持つ魔剣・オムライスには”思念体”が、伝説へと至った証が宿っている。


「見事だ……。その剣も、そうだが……。お前もな、サラ。やはり見所が有った。……さらばだ。我より強く、美しい者よ……」


 魔大剣ごと、一刀両断され、崩れ落ちながら、最期の言葉を告げる。

 ”鬼火”を抑えるために作られた外皮、それが崩れ落ち、生命活動を終えたことで”鬼火”の噴出が収まる。

 燃えカスのようになることで、ようやく、初めて確認できたウィルの表情は、最期の表情は穏やかだった……。




「これ以上、動けそうにありませんわ。私が、ここまでしたのですから、ベラちゃんを。きっと、ベラちゃんを助けて、下さいましね」


 ”誓い”の反動か、自身の限界を超えた戦いに疲弊し、その場に座り込む。

 王都の轟音は、未だに収まっていない。







完結まで更新は平日午前6時、土日祝日午前1時に行います。

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