【魔王】
ちょっとしたパロディあります。
「も~~! 戦う気は無いって、言ってるでしょ!! 話が有るの。オルフに。私の狼さんに」
「その言葉を鵜呑みにして、はい、そうですか。と、いかないのが宮仕えの辛いところなんでね」
ルナに、その気は無くても立場的に戦わなくてはいけない、国の精鋭部隊”黒獅子”の隊長、”土”の勇者クロイツェル。
「獅子王の一撃!!!」
「も~。獅子王の一撃」
俺の氷女神の鉄槌と違い、光線のように放出するのではなく、その身に纏い、|金色に輝き、拳を叩きつける神級魔法。
ぶつかり合う金色の”土”の神級魔法だが、同じ魔法であっても、同じ威力ではない。
「ぐわああああああああああああ!!!!」
宝盾・ワルターによって底上げされているにも関わらず、俺によって加護が増大し、ワルターの姿が見えるにまで至ったにも関わらず、ルナの魔法に押し負け、吹き飛ぶ。
「クロイツェルさん!!? 大津波!!!」
「大津波」
元から宝杖・ディーヴァの姿が見えていたカリン嬢の魔法ですら、俺によって増大しているのに、ルナの魔法と互角、攻めあぐねている。
「へえ。凄いじゃない。私と互角なんて。自慢して良いわよ」
「闇を許さぬ輝き!!!」
クロイツェルとカリン嬢によって作られた時間で、火の究極、全てを消滅させる”太陽”の魔法を撃ちこむベラ嬢。
流石に、魔王、元魔王のルナとはいえ、同じ魔法は繰り出せないと見えた。
「流石に、それは無理ね。それに下手な火の魔法は、貴女に吸収される」
なすすべなく、その日輪の業火に飲み込まれるように見えたルナ。
「でもね……」
ルナの言葉の途中で見事に着弾し、跡には何も、何も無くなっていた……。
だが……
「いつから、私が其処に居ると、錯覚していたの?」
クロイツェルに攻撃された直後から、俺の隣に立っていたルナが、笑いながら俺に体重を預けてくる。
ユニーク・スキル【朧月】の効果によって、俺以外の仲間たちは、何も無い場所に攻撃を加えていたのだ。
『……離れて。オルフから離れて』
『ふわぁあ! ふわぁあ!』
「きゃ~~! 可愛い! なぁに? この子たち!?」
俺に触れるルナに抗議、嫌悪の込めて、叩こうと、振り解こうするユキとツララだが、思念体なので何の効果も無い。
むしろ、その必死な行動を可愛いと、逆に愛でられてしまっている。
ーーーーーー
「戦う気が無いのは、本当のようですし。話だけでも聞いてみましょう」
オルフ以外の誰もが敵わないと悟り、当のオルフに戦う気は無い。
やって来た元・魔王ルナは、オルフの隣で、隣で呑気に紅茶を、オルフの淹れてくれた紅茶を、いつも私に淹れてくれる紅茶を飲んでいる。
「ほほう。やるの~。人の身でありながら、大した腕じゃ。ロンといったか? ワシの創った魔剣を改良とはいえ、ここまで昇華するとはのう。あっぱれ」
「だろ~。へへ。ウチのロンは凄ぇんだぞ」
「そうですわ! ロンは凄いんですのよ。ドナ爺」
ロンのことを褒められて嬉しいレミとサラさんが、四天王ドナテロと和気あいあいとしている。
「で、何の御用件ですかな? 麗しき”元”魔王の可憐な姫君は」
仲間の中で唯一、吹き飛び、怪我をしたクロイツェルさんが怪訝な顔で尋ねる。
「【魔王】は、マンダラに譲ってきました。そうしないと私は、私の狼さん。オルフと、こうして紅茶も嗜むことも出来ないと言われちゃったからね」
「よりにもよって、強硬派にか……」
それを聞いて、オルフが頭を抱え、ドナテロさんが同意とばかりに頷く。
当のルナさんは、あっけらかんと笑っている。
「私としてはね。人族なんか、どうでも良いの。和平を結んで友好を図っても良いし、決裂して戦争になってもね。【魔王】である限り、個人として人族と仲良くは出来ないの。魔物の象徴。加護も畏怖も憎悪も全て、その身に受ける立場だとね」
「【魔王】を得て、強靭になったマンダラ。その力を持って、人族を殲滅する気じゃ。今まで姫様、ワシ、ウィル、ジョイフルと肩身の狭かったマンダラ。【魔王】を得るために、虎視眈々と機会をうかがっていたようじゃ」
魔王軍の内情を幹部から直接、語られる。
「私は、魔王と勇者。私の狼さんの戦いに手は出さないわ。それはドナテロも同じ。勝ち残ったほうに従うし、狼さんが勝ったら、次の【魔王】はドナテロにでも譲って、隠居します。後は、和平するも良し。戦争するも良し。私は私の恋愛のために生きます」
「そこまで、俺を買ってくれていると喜ぶべきか……トップとして身勝手、我儘だと怒るべきか……」
本当に、どうでもいいとばかりに笑うルナさんと、頭を抱えて唸るオルフ。
上に立つ者としての責務を全て投げ出し、自分の感情に素直に行動する姿を、単純に羨ましいと思う。
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「私の狼さん。オルフを好きな者同士。話が有るわ。ちょっと良いかしら? イザベラちゃん」
その夜、ルナさんから呼び出しをもらった……。
イザベラ達に勝ち目が無く、正史で魔王を倒せそうに無いように見えますが、勝てます。
正史では生きているはずの父・アレクセイから「勇者の攻撃は、正義の一撃は、魔王を打ち払う」と言われるので、強制的にイザベラの攻撃は魔王に当たるからです。
完結まで更新は平日午前6時、土日祝日午前1時に行います。




