遷りゆく頂点
「も~~~~~!!! 私と私の狼さんの感動的な再会を邪魔するなんて~~~!!!」
ウィルとジョイフルという二つの巨星を欠き、少し物悲しくなった魔王城の会議室で、魔王”朧月”のルナの叱責の声が響く。
二人の四天王を失ったことより、想い人との逢瀬を邪魔されたことのほうを問題視している自分勝手なルナ。
定められた席に座ることなく、床に片膝をつき黙って、ただ黙って、その言葉を一身に受ける四天王”泥土”のマンダラ。
「感動の再会は、ともかくのう。マンダラよ。オヌシは最近、勝手な行動が多いぞ。王都の襲撃の時も何か、やっておったようじゃし。今回も、報告もせずに勇者達と接敵。管轄外の場所、勇者の故郷の襲撃」
自身も多少の暗躍、策謀を巡らすので基本的には寛容な四天王”水瓶”のドナテロでさえ、静かに怒っていた。
「オヌシが、そうなのだから。部下達も勝手に動くのじゃ。勇者との接敵の際に、ジョイフルの部下を十数名、巻き添えにしたな。自分の部下ばかりでなく、他人の部下まで無駄にするとはのう」
「叱責は、ごもっともです。ですが、私の行動の全てが、魔王様のため。ご理解できないでしょうが、それは分かって頂きたい」
膝をつき、頭を垂れたまま、弁解を始める。
「魔王様の御気に入り、オルフですが。残念ながら魔王様にとって、”天敵”です。~支配~も【朧月】も、オルフの前では無力です。我ら四天王最強のウィルですら退ける”無”は魔王様の命に、容易に届きうるモノ」
静かに、ただ静かに、こんこんと持論を披露する。
「オルフの人族への執着。魔王様の懐柔を受け入れさせるため、精神の支柱。故郷を襲撃するのに絶好の好機。迅速に対応するため、報告を怠ったのは謝りますが、間違いだったとは思いません」
「分かった、分かった。管轄外の襲撃は意図があ「私と狼さんの再会を邪魔したのは!!?」
そんなことは、どうでもいいとばかりに詰問する。
「あの場は、私の瘴気に満ちておりました。”無”を撃たれた場合、魔王様の鎧が解かれ、御身に危険がありました。それに……」
そこで言葉を切って、~策謀~の異名を頂く程の知略と、長年、仕えていた魔王の性格を熟慮した返答を返す。
「あの男、オルフは。決して、魔物には靡きません。魔王様が【魔王】である限り、魔王様を受け入れる事は無いでしょう」
「え!!?? それは嫌!!!」
仮に、オルフの故郷、精神の支柱を全て消滅させたとしても、恩返しに執着し、むしろ復讐という感情まで付加された状態で向かってくるだろう。
場合によっては、恩返しという最大の精神の柱さえも排し、懐柔を迫ったとしても無理であろう。
”転生”という要素以外は鏡写し、似たところの多いマンダラだからこそ確信する事実。
「オルフは、精神も肉体も完成されつつあります。アレを変えるには殺すしかないでしょう。魔王様が【魔王】である限り、敵対関係になるのは必定」
「あ、そう。なら、私は【魔王】を辞めます」
「姫様!!??」
老練なドナテロが、公の場で魔王を”姫様”と呼ぶほどの狼狽を見せる。
それ程の、とんでもないことを平然と、魔王・ルナは言ってのけたのだ。
ーーユニーク・スキル【魔の全て】ーー
受け継がれる魔物の頂点、玉座。
魔物が受ける加護、憧憬、畏怖、憎悪、その全てを一身に受ける魔の王座の象徴。
ーーーーーー
【魔王】を拒否したルナの身体から、漆黒の球体が抜け出る。
対象者を失ったスキルが、火、水、風、土、雷、氷、様々な加護が混ざり合い、魔物の全てが詰まった力の象徴が、次なる対象者を選定する。
この場に居る対象者、【魔王】の器として、その力の暴威に耐えられるのはドナテロとマンダラの二人。
呆気に取られたドナテロよりも早く、自身が導いた結果に素早く、迅速に対応するために動くマンダラ。
隠し持っていた、予定より少なくしか用意できなかった、虎の子の丸薬を飲み下す。
「マンダラ!? オヌシ!? 何を! 何をした!!?」
突然のマンダラの魔力の異常なまでの高まりを察知して、驚愕するドナテロ。
順当に行けば次代の魔王として、【魔王】に選ばれるはずだったのに、今ではルナですら凌駕するほどまでの急成長に驚愕する。
「薬も過ぎれば毒となる。私にとっては”毒”などないのですよ。私に作れぬ毒、耐えられぬ毒は存在しない。【毒を統べし者】が私。この身になって、授かった恩寵」
異世界からのハチローですら耐えられなかった毒を飲み下し、薬として消化吸収したマンダラの強大な魔力に惹きつけられるように【魔王】が、その穢れた身に収まる。
第四代【魔王】”泥土”のマンダラ~策謀~の誕生であった……。
「こうなったからには、お話ししましょう。姫様、ドナテロ。私の知る全てを。そして、これから、どうするつもりなのかを……」
稚拙な文章を読んで頂いて、ありがとうございます。
六章完結まで、平日6時、土日祝日1時に投稿します。




