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魔狼の恩返し  作者: 花畑
6・遷りゆく頂点
70/89

暴力

シリアスに見せかけたギャグ回です。

「……次から次へと。面倒だナ!!!」


 嵐のように去っていった魔王を見送った後、進んだ先の四天王”遠雷”のジョイフルが苛立っていた。

 俺のところに来るまで、あの自由奔放で傍若無人、圧倒的な強者である魔王を相手に、神経を擦り減らしていた所への来訪を考えると納得しかない。


「他の奴らは、どうした? まさか、俺っちを相手に、()()で挑む気じゃないだろうナ?」


「その、まさかだったら、どうする? 大勢で来たら、怖がって逃げてしまうかもしれないからな」


 マンダラの毒を除去するまで、スノウが戻り、全員に風の鎧を纏わせて進軍するのを待ってもよかったのだが、マンダラや魔王の登場など、不確定要素が多すぎた。

 速さに自信が有る俺でも、雷の速さには敵わない。

 これ以上、敵の逃走を許さない為にも先んじて攻めたのだ。



「間違いだったことを教えてやろう。俺っちは逃げも隠れもしないってナ!!! 閃光(エレクトリカル)!!!」


 以前も見たことのある、雷と化して、直線的に攻めてくる戦法。

 前と違うのは宝斧・ルギスによって、段違いな魔力、熱量を持っていることだ。


「マンダラや魔王が来なくても、ジョイフル。お前には、()()()で挑むつもりだった。その為の準備、対策は、してきた」


 雷を通さぬ四天王”鬼火”のウィルの外皮で強化した武具を身に纏い、剣には雷を付与してある。

 俺を貫こうとしても、ウィルの外皮(絶縁体)に阻まれ、剣に引き寄せられて着弾点を誘導される。

 着弾した際の熱量は、熱によって強固になる外皮のおかげで、より武具を強固にし、壊れることは一切ない。


「捕まえたぞ。これで、雷になって動けないだろう」


 以前のように安全に、少し離れた所に着弾させるのではなく、俺の目の前で実体化させたジョイフルの腕を掴む。

 他者ごと雷となって移動できないのは、スノウとの実験で実証済みだ。


閃光(エレクトリカル)を封じただけで良い気になるナよ! 俺っちと、この距離で! 殴り合い(ガチンコ)の間合いで、殺し合えるってノかヨ!!!」


 ジョイフルが真の姿、二メートルを超す”鬼”の姿へと変貌を始める。


「俺を超える速さを失った。お前など敵では、ない!!! 解除(シルバ)! 黒炎・生前を越えて(オーバー・スペック)!!!」


 火の魔力で起動する俺の神々からの恩寵(ユニーク・スキル)【人狼の魂】を、増大した火の魔力で起動させる。



 ()()()()()()()()()から授かりし、火の加護を持ってして!!!



 ーーーーーー



「オルフ。オルフ!!」


 戻ってきたスノウさんに風の鎧を纏わせてもらって、まだ瘴気()が抜けきっていない洞窟を駆ける。

 逃走されるのを防ぐ意味で、単独でジョイフルを打倒するために先行したオルフを想う。

 スノウさんは、オルフが準備も対策も万全、単独でも大丈夫だと言っていたが、心配で胸が張り裂けそうだった。


「オルフ!!!!」


 鈍い轟音が鳴り響くジョイフルの居城、オルフが戦っているであろう場所の扉を勢いよく開け放つ!!



「止めろ!! 止めてくれ!!!」


 悲痛な叫びを上げながら、ジョイフルと思しき()()()()を殴りつけ続ける黒き獣人に追いすがるジョイフルの部下達。


「死んでる!! もう死んでるんだ!!! 止めてくれ!!!!」


 止めに入るが、圧倒的な力の差で止められないどころか、その暴風のような暴力の余波で部下達の死体が積みあがっている。


『があああああああああああああああ!!!!!』


 そんな光景、地獄のような光景の中で、黒き獣人が吠える、殴る、蹂躙する!!

 悪魔のような黒き獣人、その頭髪だけは見覚えのある、愛しき人の()()()()()頭髪!!!



「止めて!! もう止めて!!! オルフ!!!!」



 ーーーーーー



 火の邪神・ジャミラから授かりし【黒炎】の加護により、白い【人狼の魂】が黒く染まり、黒き人狼の姿へと変貌する。

 神のレベルに手が届いていた俺の氷と火が融合した黒き人狼は、”鬼”など意に介さぬ”神”の暴力をジョイフルに浴びせかける。


「■め■!! ■■て■れ!!!」


 ()()()()()であるジョイフルの部下の声など、神界の”神”と化した俺には、よく聞こえない。

 ()()()()()の言葉など気にせず、ジョイフルを痛めつける!!


「死■■る!! もう■■■る■だ!! ■■■■!!!!」


『があああああああああああああああ!!!!!』


 殴る、ベラ嬢のため、叩きつける、勇者などという過酷な運命を産む【魔王】の精鋭、抉る、憎き四天王、潰す、王都を襲撃し、殴る、ヒルダさんを殺した主犯の一人を……殺す!!!






『もう良いよ。もう良いの、オルフ』


「■めて!! もう止め■!!! オルフ!!!!」


 今は亡き懐かしい温もりが、ジョイフルを殴らんと振り上げられた拳に重ねられる。

 途端に、鮮明になる視界と周囲の音。

 視界の端で泣き崩れるベラ嬢を見つけ、我を忘れていたことを思い出す。



(ありがとうございます。ヒルダさん。貴女のおかげで、()()()これました)


 現世から離れかけていた俺は、現世から離れたヒルダさんの後押しで還って来れたようだ。

 死して尚、俺を、俺達を見守ってくれたヒルダさんには感謝しかない……。



 もう僅かも無い俺の黒い頭髪を見ながら、全力で戦える回数が少ないことを再確認するのだった。







Q、何故、もっと早く止めなかったのですか?


A、え? だって、私が死んだ襲撃の主犯の一人でしょ?



稚拙な文章を読んで頂いて、ありがとうございます。


六章完結まで、平日6時、土日祝日1時に投稿します。

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