圧倒!
「ここがジョイフル様の居城と知って、よくぞ来た!! 勇s「火の矢!!」
一時の休息を終え、ジョイフルの居城へ向かう俺達、勇者一行の馬車に立ちはだかった魔物の軍勢が消滅する。
初級の魔法とは思えぬ対砦兵器級の一撃を受けて、文字通り”塵”と化す。
「いやはや。長年、連れ添ったメイドが亡くなって、意気消沈していたと思っていましたが。お元気になって良かった。良かった」
「火の矢!!」
元気を無くしていたベラ嬢の奮起を、苦笑いしながらヒキ気味に褒めたたえるクロイツェル。
今回のジョイフル討伐の任務で功績をあげることで、爵位を俺以上にするためにベラ嬢は躍起になっているのだ。
「火の矢!!」
「折られてしまった魔剣・干魃。”熱”を加えると硬くなるという鍛冶屋泣かせの一品でしたが。素材は有りましたので、試行錯誤の末、改良しました。オルフ様の武具をヒントに、芯に魔力を溜めこめるようにして、より硬く鋭く出来る魔剣・干魃改」
逃走の際に切り落としたウィルの右半身を使うことで、改良に成功した魔剣をキラキラした瞳で見ながら説明を受けるサラ。
「火の矢!!」
「私とロンの技術の粋を集めて、素晴らしいものを創ったと自負できるけど。使う機会は有るのかしらね?」
「オルフ様の武具にも補強として使われています。冷気を纏うようなことをしなければ、前よりも頑丈です。……それでも全力に耐えられるかどうか。申し訳ございません!!」
ユニーク・スキル【氷の女神の化身】まで成長した俺の全力が、想定外すぎるだけで何も悪くない。
「ロン。よくやってくれた。白銀で”神”を抑えられるものではないのに、実用レベルにしてくれただけでも満足だ」
「火の矢!!」
「聖銀じゃないと御しきれないでしょうね。夫が強いのは妻として、鼻が高いけどね」
「同意」
装備の説明やレオナとスノウの惚気話に華が咲いている間にも、次々とベラ嬢によって消滅するジョイフルの軍勢。
その鬼気迫る迫力に怯え、泣き出しそうなカリン嬢。
こういう雑魚の露払いに付いてきたクロイツェルの部下、黒獅子兵団の精鋭達が、馬車の隅で泣いている……。
『所詮は!! 2つ名を頂けなかった雑魚! それを数百と倒したところで、調子に乗るなよ!!』
小高い丘の上から、今までの雑魚と違う実力者の気配と声が轟く!!!
『我らは!! ジョイフル様から2つ名を許された配下の中でも精鋭を選りすぐった部隊!!!』
二つ名持ちのジョイフルの精鋭達が……
「”赤腕”のレ「邪
「”蒼空”のブ 魔
「”黄金”のイ ん
「”深緑”のグ ご
「”桃源”のピ !!」
名乗りを上げ終わる前に消滅する……。
『5人そろって!! ジョイフル親衛隊!!!』
彼らの悲しき叫び声が聞こえるようだ……。
「ベラ! 私の分も残してくださらないかしら!!? 新調した武器も使いたいですし。名乗りも聞かずに倒してしまっては、その辺の雑魚と同じ功績ですわよー!!」
「!???? んごーーー!!!??」
ベラ嬢の叫び声も響き渡る……。
ーーーーーー
「勇者には、ちょっかい出すなって、言ってんだロ!!?」
次々と届く部下達の撃破の報告を聞き、四天王”遠雷”のジョイフル~将軍~は叱責する。
報告に来た部下、周りを固める二つ名持ちの数多くの配下達は、敵わないまでも疲弊させようと命令を無視したにも関わらず、それすらも達成できていないことも含めて意気消沈していた。
「だがナ。俺っちを想って、やってくれたことには感謝するゼ!! そんな愛すべきオマエらを失いたくないんだゼ!!!」
「そんな勿体ない御言葉!」「我らが悪いのです!」「まさか疲弊すら出来ぬとは!」
そんな部下、配下達の自責の念を消すように、宝斧・ルギスを弦楽器に見立てて、かき鳴らすように雷鳴を響かせる。
突然の轟音、ルギスによって四天王まで登り詰めた”雷”の凄みが格段に上昇していることに、驚愕し、静寂が訪れる。
「ルギスを手に入れた俺っちに、小細工は不要!! 勇者達が疲弊していようといまいと! 関係ないゼ!!!」
「「「うおおおおお!!!! 将軍! 将軍!! 将軍!!!」」」
主の絶対の自信、圧倒的な実力を垣間見て、軍の士気が上がる!
「今なら鬼火っちも倒せる!! 俺っちが四天王最強だ!!!」
「「「将軍! 将軍!! 将軍!!!」」」
部下、配下達の声援を受け、気分を良くしたジョイフルが再度、雷鳴を轟かせて宣言する!!
「なんなら! 今なら!! 今こそ!!! 俺っちが【魔王】になることだって出来るゼ!!!!!」
「「「将軍! 将……………………
『ご機嫌ね、ジョイフル。誰が何になるって?』
その場に居た全員の、全身の毛穴が開き、暑くもないのに汗が止まらない。
歓声を上げるの軍のド真ん中、”朧月”によって、いつから居たのかも分からない魔王の少女が居た。
”誤認”を主とするスキルを解き、ただ其処に居るだけで他者を圧倒する、屈服させる実力が秘められているのが分かる魔王が居た。
「あアぁ……。魔王様、違うゼ、違うんデす。これは、……そう! 部下を安心させるために、つい! つい、言い過ぎただけで……」
一時の興奮で発言したこととはいえ、心の片隅では魔王に匹敵できると思っていたジョイフルだが、数分前の自分を殴りたい心境だった。
(何が【魔王】だ!? 四天王最強までが限界……。俺っちは、この御方を越えられる訳が無い!!)
「あ! 勘違いしないでね? 怒ってる訳じゃないのよ。むしろ、逆。今は機嫌が、凄く良いの」
魅了が異名~支配~まで昇華した魔王の、何も発動していない紫の瞳に見つめられるだけでも、呼吸が出来ない。
「だって! ココで待ってれば、彼が来る。私のお気に入りの狼さんが。私のオルフが!」
魔王が何を言っているのか分からなかったが、せっかくの上機嫌に水を差さぬように押し黙るジョイフル。
「私から会いに行っても良いけど、追うより追われたほうが女の子は幸せになれるって言うじゃない?」
ただ、思うのは、魔王に執着された者への同情と、自分では無かったという安堵だけだった……。
稚拙な文章を読んで頂いて、ありがとうございます。
六章完結まで、平日6時、土日祝日1時に投稿します。




