エピローグ
イザベラが軽い感じなのは、ヒルダの死を考えないように、わざと陽気にしているからです。
『勇者会合を前に、卑劣なる魔王軍によって』
襲撃の夜が明け、数日を経て、ようやく平穏を取り戻し始めた王都に響き渡る王様の演説。
一刻も早く、国民を安心させたいとの思いから、台本無し、打ち合わせ無しの特急で開催された。
城の中庭に王都の国民を入れ、テラスから王を含めた私達が聴衆の注目を集める形で始まった。
「緊張なされるのは分かりますがね。可憐な美少女は笑っているだけで、何とかなるもんです。小難しいことは王と私のような老人に、お任せなさいな」
クロイツェルさんが、ガッチガチの私とカリンさんの緊張を和らげようと、小声で軽口を言ってくる。
「……は、はい。…………うへへ」
ごめんなさい……カリンさん、控えめに言っても、ちょっと怖いです……。
『この国難に対し、我が国民は! 愛すべき国民は! 実に勇敢に』
王様の持つ拡声の魔道具は王都全体だけでなく、主要な都市の皆さんにも”声”を届ける機能が有るので、滅多なことが出来ないと、静かに苦笑いを浮かべるしかない私とカリンさん。
長年、精鋭部隊”黒獅子”の隊長として、土の勇者として、国を代表してきたクロイツェルさんと、王様の幼馴染として爵位にそぐわぬ会合などにも呼ばれるエルネスト伯だけが慣れた様子だ。
そして何故か、この場に居ないオルフとスノウさんが気にかかる……。
『我が愚息、ハチローも! ”雷”の勇者として、心を入れ替え! 国に尽くそうとした矢先に、その命を』
「……物は言いよう、だな」
小声とはいえ、止めてくださいクロイツェルさん、エルネスト伯が凄い殺気を飛ばしてますよ。
痛い、痛いですよカリンさん、怖いからって腕を強く掴まないで下さい。
『では、この国難に対して最も解決に尽力。貢献してくれた勇者達からも、一言貰おうと思う。まずは”土”の勇者・クロイツェル!』
『国の盾として、少しでも被害を抑えようと尽力しましたが、力が及ばず』
痛い、痛いですってカリンさん、何か言わないといけない流れになったからって、痛いですって!!?
『幼少の頃から魔術協会にて、その才能を遺憾なく発揮し、この度も実戦経験が少ないにも関わらず奮闘してくれた”水”の聖女・カリン!』
『え、うえ!? ……うへへ。若輩者ですが、精一杯、頑張り』
『両親、先代を早くに亡くしながらも、一人で懸命に家督を守ってきた健気な若き当主! 卑劣なる魔王軍の策略により暴走しかかった愚息を止めてくれた、民を救った聖女!!!』
私だけ美化と演説の熱が凄くありません??
『その神の如き、日輪のような魔法を目にした者も多いだろう! ”火”の聖女・イザベラ・ヴォルフ男爵!!』
『家督を守れたのは、私だけの力では有りません。今回の国難だって、私には頼れる』
『”雷”の勇者が空席になったのを狙いすました魔王軍によって奪われた宝斧・ルギス!! その所在を単身で突き止めた! 新たなる”雷”の聖女・スノウ!!』
演出の為か、聴衆の中から優雅に飛び立ち、テラスへ降りてくるスノウさん。
『本当なら所在だけでなく、奪い返せたら良かったのですが。力及ばず』
凄い、あのスノウさんが真面目なことを、長く流暢に喋ってる……。
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『最後に! この降って湧いた国難に、神が遣わして下さった新たなる! 5人目の勇者を紹介しよう!!』
テラスの入り口に立つ影。
『勇者達を指揮し、最大の国難! 四天王の撃退の功労者!! 国王の名において、”聖銀”の称号と』
王様の演説に合わせるように、一歩、一歩、歩を進める。
『爵位が与えられるのが決定した! 氷と火が使える異端の”氷”の勇者・オルフ・銀細工子爵!!』
オルフの演説も、周りの聴衆の喧騒も、その後の王様の締めくくりの演説も、何もかも聞こえない、聞きたくない!!!
ヒルダが居なくなっても、貴方と、オルフと一緒なら頑張れると思った!
オルフの爵位が私より上になるということは、私と離れるということ?
貴方まで、私の下から去っていくの!!?? オルフ!!!
稚拙な文章を読んでいただいて、ありがとうございます。
六章は遅くても、四月末までには再開しようと思っております。
では、




