姫様
この章では”異世界転生の駄目な例”が出てきますが、特定の作者様や作品を批難したり貶したりする意図は無いことを御理解ください。
「フハハハハハ!!! 先ずは療養し、失った右半身の代わりを用意し、あの魔法の対策を考えねば!! 挑戦者の立場になるのは、久しぶりだ!! フハハハハハ!!!」
普段は寡黙で口数の少ないウィルの楽し気な独り言が、配下も部下も居ない居城に響き渡る。
「オルフに肩入れしていたドナテロに頼むのも、癪に触るが。義手のようなものを作らせるか、いや……いっそ、無いものとして速度に対抗するために、軽量化を図るか……」
「普段の貴方から考えられないくらい、上機嫌ですね。何か良いこと有りましたか?」
自分以外、誰も居ないはずの居城に、許しも無く勝手に入ってきた客に、魔大剣・大干魃を携え、応対する。
「裏方に徹すると言いながら、味方ごと吹き飛ばす策を弄した貴様が! どの面を下げて、我の前に顔を出した!!? マンダラ!!!」
「何か証拠でも有るのですか? 貴方こそ、ジョイフルのように宝斧・ルギスが有る訳でもなく。何の成果も無いまま敗走した上に、笑っているとは」
武力では圧倒的に上でも、~策謀~の異名を持つ”泥土”のマンダラに、口論で勝てる道理は無かったのだ。
普段なら、証拠不十分として争いが起きることは無く、有耶無耶になるところだが、この時は違っていた。
「と、まあ。いつもなら楽しい、お喋りで終わっていたのですが。今日は、そうではないのは分かっているのでしょう?」
配下を連れずに単独で、手負いのウィルの下に単独で、殺気と共に自慢の聖銀鎧から漏れ出る瘴気を隠そうともしないマンダラ。
「手負いなら我を倒せると思ったか!! 良いだろう! その思い上がり!! 城に無断で入った不審者として、処断してやろうぞ!!!」
四天王同士の魔力の高まりと、ぶつかり合いに、二人以外が居ない城が恐怖するように鳴動し始める。
「圧し潰す土壁!!!」
基本的に下方向からの攻撃である土魔法を、何も無い空から、上から発生させる奇襲!!
サラを飲み込んだ奇襲の魔法が、マンダラに迫る!!
「教えた筈ですよ。それは初見の相手にだけ有効だと。初見でも、自身よりも土属性に長けていたら無駄だと」
無詠唱で現れた”泥”の巨大な腕が、空から降り注ぐ土石の軌道を逸らして、マンダラを守る。
「知った風な口を!!! ”鬼火”!!!」
右腕を失い、連射力が落ちたとはいえ、強固な城壁を破壊する”鬼火”がマンダラに向けて、次々と放たれる!
ソレも”泥”の巨腕が、当たった箇所が蒸発し、所々を”土”に、”岩”に変えながら、主人であるマンダラを守る!!
「穏健派も友好派も、中立派も!! 気に入らない!! 魔物にとっては強硬派の考えが正しい!!! 勇者が産まれてから対処するのではなく、産む人族を根絶やしにするのだ!!!!!!」
「ーーっ!!?? 貴様、まさか!?? その巨腕は!!!?」
”鬼火”により水分が蒸発することで、”泥”ではない真の姿を取り戻し始める、見覚えのある巨腕。
それに呼応するように、誰も見たことの無い鎧兜の下の素顔を曝け出す!!?
「まさか、貴様は!!?? 貴方は、貴方様は!!?? ぐわああああああああ!!!???」
「姫様を御守りするには、勇者など産ませてなるものか!!!」
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「ふんふん! それで? それで!? 彼は、どうしたの?」
「某が、プッファーの知識が無いせいで苦しんだにも関わらず、温泉に入って背中を流すことで許して頂きましたで、ございますです」
襲撃を終え、ドナテロ様の居城に戻った途端に、恐れ多くも魔王様からオルフ殿の話をしろと仰せつかってしまった。
あまりの緊張に、若輩で、矮小な某は、冷や汗を掻きっぱなしだ。
「も~。緊張しすぎ~。もっと楽にしてって。言ってるでしょ?」
魔王様の輝く、吸い込まれそうな紫色の瞳に射貫かれ、全身の自由が、精神の自由すら”支配”される感覚に陥る。
「姫様。出とる、出とる。キリバは、まだ幼いのだから虐めるのは勘弁して欲しいもんじゃの」
「あ!? ごめ~ん。ついね。ついつい出ちゃった。許してね。キリバ」
漏れ出ただけで、某が屈服するような魔王様の~支配~を正面から受けて、オルフ殿が平然としていたという話は、俄かには信じられなかった。
「全力では無かったけど、狼さんは平気だったのよね~。ジョイフルやウィルの襲撃に耐えて、生き延びたみたいだから。実力も申し分ないのよね~」
何故だか、凄く嫌な予感がする……。
ドナテロの翁様も、諦めた表情をしている……。
「決めた!!! 今度、全力の~支配~に抗えたら…………求婚します!!」
「へぁ?」
突然の発言に、変な声が出てしまった。
「このスキルのせいで、まともな恋愛出来ないと思ってたけど。狼さんだけは、本当の私を見てくれる。”朧月”も見破るしね!」
年頃の娘のように。色恋に頬を染める可愛らしい魔王様、御年六じ…………
オルフ殿を教師に女性の扱い方を、反面教師に女性には過度に好かれないようにしようと心に誓った日になった……。
稚拙な文章を読んでいただいて、ありがとうございます。
次回も明日の午前6時に投稿します。




